
今回は『赤毛のアン』を「どの訳・どの本で読むか」という目線で、目的別に紹介していくよ! 定番の訳から全文訳・新訳、子ども向けの本や解説書まで並べたから、自分に合うところから選んでね。迷ったら、まずは定番の村岡花子訳(新潮文庫)から読んで、もっと原文に近いかたちで読みたくなったら全文訳へ進むのがおすすめだよ。
『赤毛のアン』といえば、「どの出版社の本を読んでも中身は同じお話」と考える人が多いかもしれません。書店の棚にはいくつもの文庫が並んでいますが、表紙や値段の違いくらいに思って、なんとなく手に取った1冊で読み始めることも多いはずです。
ですが実は、『赤毛のアン』は訳によって、読める文章の量そのものが違うことがある作品です。長く親しまれてきた村岡花子訳は、もとの版では原文の一部が省かれていたと指摘されています。一方で、原文を省かずに訳した「全文訳」「完訳」をうたう本も出ており、同じ場面でも言葉づかいや受け取れるニュアンスが変わってきます。
この記事では、アニメ・朝ドラの原作として読む・全文訳でじっくり読む・新しい訳で読む・やさしい言葉で読む・子どもと一緒に読む・作者を知る、という6つの目的に分けて、それぞれに向く本を紹介していきます。
『赤毛のアン』とは?
- 『赤毛のアン』は、カナダの作家モンゴメリが1908年に発表した長編小説
- カナダのプリンスエドワード島を舞台に、孤児の少女アンが引き取られた家で成長していく物語
- 日本では1952年刊行の村岡花子訳で広まり、今は全文訳や新訳もあるので、目的に合う1冊を選べば読み切りやすい
『赤毛のアン』(原題 Anne of Green Gables)は、1908年に刊行された長編小説です。作者のルーシー・モード・モンゴメリは、カナダ東部のプリンスエドワード島で生まれ育った作家で、物語の舞台もこの島の小さな村「アヴォンリー」に置かれています。
お話の骨組みはシンプルです。年配のきょうだい、マシューとマリラは、農場の仕事を手伝ってくれる男の子を孤児院から引き取るつもりでした。ところが手違いで、やせっぽちで赤い髪の、おしゃべりで空想好きな女の子アンがやって来ます。
はじめは「送り返そう」と考えたマリラも、アンと暮らすうちに少しずつ心を開いていきます。親友ダイアナとの友情、学校でのライバル・ギルバートとの張り合い、数えきれない失敗と成長をへて、アンは村の人びとにとって欠かせない存在になっていきます。
この物語は日本でもくり返し映像化されてきました。2014年にはNHK連続テレビ小説『花子とアン』で、翻訳者の村岡花子の生涯がドラマとして描かれています。2025年4月からはNHK Eテレでアニメ『アン・シャーリー』が放送され、この作品は村岡花子訳の「赤毛のアン」シリーズ(新潮文庫刊)を原作とすると案内されています。

読書感想文の本に『赤毛のアン』を選んだんだけど、本屋さんに行ったら何種類もあって…。どれを読めばいいのか全然わからないよ。

大丈夫、「どれが正解か」より「自分が何をしたいか」で選べばいいんだ。有名な訳でまず物語を知りたいなら村岡花子訳、作者が書いた文章を1文も省かずに読みたいなら全文訳、というふうにね。感想文なら、読み切れそうな本を選ぶのがいちばんだよ。
- 省略の有無:1952年刊の村岡花子訳は、もとの版で原文の一部が省かれていたと指摘されています(新潮文庫版は2008年の改訂で補われました)。文春文庫・角川文庫・講談社文庫で出ている訳は、原文を省かない全文訳・完訳です
- 解説の手厚さ:作中にちりばめられた聖書や詩などからの引用を、訳注でくわしく読み解いている訳もあります
- 文体と刊行時期:長く読み継がれてきた定番の訳から2025年刊の新訳まであり、やわらかく現代的な文体と評される訳もあるので、言葉づかいの手ざわりが変わります
- 対象読者:多くは大人も読む一般向けの文庫ですが、小中学生向けの文庫レーベルから出ている訳やマンガ版もあります
どの本がどの特徴にあたるかは、次の章から1冊ずつ紹介していきます。

訳ごとに「得意なこと」が違うから、選び方さえわかれば迷わなくなるよ。ここからは目的別に、1つずつ紹介していくね!
アニメ・朝ドラの原作で読むなら(村岡花子訳)
日本で長く親しまれてきた定番が、村岡花子による訳です。1952年に三笠書房から刊行され、のちに新潮文庫に入りました。「赤毛のアン」という日本語の題名そのものも、この訳から広まったものです。
訳者は当初、『窓辺に倚る少女』という題を考えていたものの、編集者の提案や娘の後押しで『赤毛のアン』に決まったと伝えられています。アニメ『アン・シャーリー』や朝ドラ『花子とアン』から興味を持った人なら、まずはこの訳で読むのが自然な入口です。
新潮文庫版は2008年に改訂され、花子の孫にあたる村岡美枝による補訳が加えられています。シリーズは全12冊(最後の『アンの想い出の日々』上下巻は村岡美枝による訳)で、1冊ずつ手に取りやすい文庫サイズと価格も特徴です。
アニメ『アン・シャーリー』や朝ドラ『花子とアン』を見て興味を持った人。まず日本でいちばん親しまれてきた定番の訳で物語を知りたい人。読書感想文などで、読み切れる分量から始めたい人。
作者が書いた文章を1文も省かずに読みたい人には、後述の松本侑子訳・河合祥一郎訳の方が向いている。
全文訳でじっくり読むなら(松本侑子訳)
もとの村岡花子訳には、原文の一部が省かれている箇所があると指摘されてきました。前章で触れた補訳版とは別に、「作者が書いたすべての文章を訳で読みたい」という人に選ばれているのが、松本侑子による訳です。

原文が省かれてるって、ちょっと意外。物語の筋が変わっちゃうくらい大きく抜けているのかしら?

物語の大きな筋が変わるわけではない、と言われているよ。ただ、細かな描写や会話の一部が省かれているとされていて、「アンのおしゃべりや風景の描写をまるごと味わいたい」人には気になるところなんだ。松本侑子訳は、そうした部分も含めて訳したうえで、作中に出てくる引用の出どころまで訳注で解説しているのが大きな特長だね。
松本侑子訳は1993年に集英社から刊行され、版元では「日本初の全文訳」と紹介されています。作中にちりばめられたシェイクスピアや聖書、英米の詩などからの引用を訳注で読み解いているのが特長です。現在は訳文を見直した版が文春文庫から「赤毛のアン」シリーズとして刊行されています。
文春文庫版は2019年刊行の訳注つき全文訳で、Audible版(オーディオブック)でも配信されています(2026年9月時点)。
作者が書いた文章を1文も省かずに読みたい人。作中に出てくる聖書やシェイクスピアなどの引用の意味まで訳注で知りたい人。Audibleで通勤中に聴きたい人。
まずは手短に物語の雰囲気だけをつかみたい人には、①の村岡花子訳や後述のまんが版の方が入りやすい。
新しい訳で読むなら(河合祥一郎訳)
2025年3月には、河合祥一郎による『新訳 赤毛のアン』が角川文庫から刊行されました。訳者はシェイクスピア作品の翻訳や研究で知られる英文学者で、今の読者に届く言葉で練り直された訳になっています。
定番の訳を読んだことがある人にとっては、同じ場面が新しい言葉でどう響くかを比べる楽しみもあります。「古い言い回しは少し苦手だけれど、原文を省かない訳で読みたい」という人の選択肢にもなる1冊です。
角川文庫版は2025年3月刊行の一般文庫版の完訳です。Kindle Unlimitedの対象にもなっています(2026年9月時点)。
古い言い回しが少し苦手で、今の言葉で書かれた完訳を読みたい人。Kindle Unlimitedで気軽に読み始めたい人。定番の訳を読んだことがあり、新しい訳と読み比べてみたい人。
昔ながらの訳文の雰囲気こそ『赤毛のアン』らしさだと感じる人には、①の村岡花子訳の方が向いている。
読みやすい現代語訳で読むなら(掛川恭子訳)
掛川恭子による訳は、講談社から刊行されてきた完訳です。漢字を多用しすぎない、やわらかく現代的な文体で読みやすいと評されることの多い訳です。
昔ながらの言い回しが続くと読み進めにくい、という人は、こうした文体の訳から入ると物語のテンポをつかみやすくなります。

文庫って分厚いし、むずかしい言い回しが続くと途中で止まっちゃいそう…。感想文の締め切りまでに読み切れるか不安だよ。

わかるよ。言い回しがむずかしいと、ページをめくる手が止まっちゃうんだよね。やわらかい文体の訳なら会話のテンポに乗りやすいから、「1日1章ずつ」と決めて読み進めるのもおすすめだよ!
講談社文庫「完訳クラシック赤毛のアン」シリーズの第1巻で、2005年刊行です。
漢字や古い言い回しが多いと感じて途中で挫折した経験がある人。やわらかい現代的な文体で最後まで読み切りたい人。
作中の引用や背景知識まで訳注で深く知りたい人には②の松本侑子訳の方が向いている。
子どもと一緒に読むなら
小学生が自分で読んだり、親子で読み聞かせをしたりするなら、子ども向けに作られた本から入るのがおすすめです。ここでは、茅野美ど里による偕成社文庫の訳と、2025年のアニメ『アン・シャーリー』を漫画化した本を紹介します。

朝ドラや新しいアニメを見て、子どもと一緒に読んでみたくなったの。小学生だと、いきなり文庫はむずかしいかしら?

文庫の翻訳は、大人向けの言葉づかいで書かれているものが多いからね。まず物語の流れを絵でつかみたいならマンガ版、文章で読む楽しさを味わってほしいなら子ども向けの訳がいいよ。マンガで登場人物に親しんでから文章の本に進む、という順番もおすすめだね。
偕成社文庫版は1987年刊行の上下巻で、小中学生向けの文庫レーベルから出ている訳です。電子書籍(Kindle)版はなく、紙の本のみでの刊行です。
小学生が自分の力で読み進めたい・読み聞かせに使いたい家庭。文庫より一回り読みやすい文字組みの本を探している人。
電子書籍(Kindle)で読みたい人には対応していないため、その場合は後述のまんが版や他の文庫の訳を選ぶとよい。
2025年4月放送開始のNHK Eテレアニメ『アン・シャーリー』(原作:モンゴメリ著・村岡花子訳「赤毛のアン」シリーズ)を漫画化した作品で、2025年8月にKADOKAWAから刊行されました。
まずは絵と会話でアンや登場人物に親しみたい人。2025年放送のアニメ『アン・シャーリー』を見て興味を持った人。
じっくり文章で物語を味わいたい人には、①〜④で紹介した文庫の訳の方が向いている。
作者・背景をもっと知る
物語を読み終えて、「作者はどんな人だったのか」「作中の引用や風景にはどんな意味があるのか」が気になったら、解説書に進むのがおすすめです。ここでは、全文訳を手がけた松本侑子による解説書を紹介します。
モンゴメリは1874年にプリンスエドワード島で生まれました。幼いころに母を亡くし、島の北岸にあるキャベンディッシュで祖父母に育てられたとされています。
教師などとして働きながら書き続け、『赤毛のアン』で広く知られる作家になりました。原稿ははじめ、いくつかの出版社に採用されなかったとも伝えられています。のちに牧師と結婚してからは、牧師の妻としての務めや子育てに追われながら、アンの続編をはじめ多くの作品を書き続けました。
孤児だったアンが居場所を見つけていく物語には、作者自身が島で過ごした子ども時代の記憶や風景が重ねられていると言われます。そうした背景を知ってから読み返すと、同じ場面がまた違って見えてくるはずです。
全文訳を手がけた松本侑子による評論・エッセイ集で、2024年11月に文春新書として刊行されました。作者モンゴメリの生涯や、作中の風景・引用の背景を8つの章で読み解いています。
物語を読み終えて、作者モンゴメリの生涯や作品の背景をもっと知りたい人。作中の引用や風景の意味を専門家の解説で深掘りしたい人。
まだ『赤毛のアン』本編を読んでいない人には、先に①〜⑥のいずれかで本編を読むことをすすめる。
まとめ
まず物語を知りたいなら定番の村岡花子訳、作者の文章を省かずに味わいたいなら松本侑子訳や河合祥一郎訳、やさしい文体がよければ掛川恭子訳、子どもと一緒なら児童向けの訳やマンガ版、というのが大まかな目安です。
最後に、ここまで紹介した本を比較表でまとめておきます。難易度と、どんな人に向くかを並べているので、自分の目的に近いところから選んでみてください。
横にスクロールできます
| 📚 タイトル | 難易度 | Kindle Unlimited | Audible | こんな人向け |
|---|---|---|---|---|
| ①村岡花子訳『赤毛のアン』(新潮文庫) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✕ | ✕ | まず定番の訳でアニメ・朝ドラの原作を読みたい |
| ②松本侑子訳『赤毛のアン』(文春文庫) Amazon楽天 |
●●○ 中級 | ✕ | ✓ | 原文を省かず訳注つきで読みたい |
| ③河合祥一郎訳『新訳 赤毛のアン』(角川文庫) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✓ | ✕ | 新しい言葉で完訳を読みたい |
| ④掛川恭子訳『赤毛のアン』(講談社文庫) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✕ | ✕ | やわらかい現代語で読み進めたい |
| ⑤茅野美ど里訳『赤毛のアン(上)』(偕成社文庫) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✕ | ✕ | 小学生が自分で読む・読み聞かせ |
| ⑥『アン・シャーリー(1)』(B’s-LOG COMICS) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✕ | ✕ | まず絵でアンに親しみたい |
| ⑦松本侑子『赤毛のアン論 八つの扉』(文春新書) Amazon楽天 |
●●● 上級 | ✕ | ✕ | 作者・作品の背景を深掘りしたい |
✓=対象、✕=対象外(最新は各商品ページでご確認ください/2026年9月時点)

以上、『赤毛のアン』のおすすめの訳と本でした。迷ったら、まずは村岡花子訳でアンに会ってみてほしいな。物語が好きになったら、全文訳や新しい訳で読み比べると、同じ場面でも新しい発見があるよ。Kindle UnlimitedやAudibleは対象の本が入れ替わるから、気になる版があれば一度のぞいてみてね。アンの物語は続編もたくさんあるから、1冊読み切ったらぜひ次の巻へ進んでみよう!
Wikipedia日本語版「赤毛のアン」「ルーシー・モード・モンゴメリ」「村岡花子」(2026年9月確認)
新潮社 公式サイト『赤毛のアン―赤毛のアン・シリーズ1―』書誌情報(2026年9月確認)
文藝春秋 公式サイト『赤毛のアン』(文春文庫)・『赤毛のアン論 八つの扉』(文春新書)書誌情報(2026年9月確認)
KADOKAWA 公式サイト『新訳 赤毛のアン』(角川文庫)・『アン・シャーリー 1』(B’s-LOG COMICS)書誌情報(2026年9月確認)
アニメ「アン・シャーリー」公式サイト(2026年9月確認)
openBD 書誌データ(講談社文庫『赤毛のアン』掛川恭子訳ほか)(2026年9月確認)
さいたま市立図書館 資料展示リスト「さまざまな訳者による『赤毛のアン』」(2026年9月確認)
記事の誤りを発見された場合はお問い合わせください。確認後、修正します。
📚 世界史の記事をもっと読む → 世界史の記事一覧を見る
Amazonのアソシエイトとして、まなれきドットコムは適格販売により収入を得ています。





