今回は、独占・寡占市場でよくみられるカルテル・トラスト・コンツェルンという3つの仕組みについて、わかりやすく丁寧に解説していくね!
カルテル・トラスト・コンツェルンとは?
カルテル・トラスト・コンツェルンとは、市場の独占・寡占が行われる際によくみられる3つの方法のことを言います。
独占・寡占は市場の失敗(市場の限界)を引き起こして消費者に不利益を及ぼしてしまうため、経済学では好ましくない現象とみなされています。
そのため、日本でも独占・寡占が起こらないよう独占禁止法という法律で規制が設けられています。
日本でも、カルテル・トラストは独占禁止法で禁止されているよ!
・・・というわけで、さっそくカルテル・トラスト・コンツェルンについて詳しく解説していきます。
カルテル(企業連合)
カルテル(企業連合)とは、同じ商品を売っているライバル同士が価格競争をやめて、企業同士の話し合いで価格を高値で統一することで、儲けを増やそうとすること。
俺たち、これまで価格競争のライバルだったけど、これから話し合いで商品の価格を統一しね?
どの会社の商品も同じ値段なら、たとえ高い値段でも消費者は買わざるを得ないし、高値で商品が売れれば俺もB社もガッポリ儲けられてWin-Winだぜ!!
そうだな・・・。なんか価格競争って疲れるしな・・・。
今より楽に儲かるならそっちの方がいいわ。
こうやって話し合いで価格を決められると、「需要と供給で価格は決まる」という市場の基本原理が歪められてしまい、消費者は本来より高値で商品を買わねばならず、不利益を被ることになるんだ。
参入企業が少ない寡占市場だと、わずか数社だけの話し合いで価格を決めることができるから、簡単にカルテルができてしまいます。
トラスト(企業合同)とは
トラスト(企業合同)とは、価格競争を避けるため、同じ商品を売っている会社たちが合併して1つの企業となり、商品を独占販売してしまうこと。
俺、思いついたんだけどさ。商品Xって俺とB社しか販売できなくて、B社は長年のライバルで価格競争で戦ってたけど、俺たち合併して1つの巨大企業になれば商品Xを独占して高値で売りほーだいなんじゃね!?
たしかに・・・!
もう争いに疲れたし、いっそライバル同士合体してしまおう!
トラストを利用してライバル企業が合併してしまうと、、企業たちは意図的に独占市場を作り出すことができます。
コンツェルン(企業連携)
コンツェルン(企業連携)とは、いろんな業界の会社がお金の関係で深く結びついて、1つのグループを形成することを言います。
とある会社が、銀行・不動産・自動車・ITなど多岐にわたる会社をお金の力で傘下に収めていれば、それがコンツェルンです。
コンツェルンが市場に存在していると、独占・寡占が起こりやすくなります。
なぜかというと、グループ内の企業たちが一緒に協力し合うことで、市場の価格を簡単にコントロールできてしまうからです。
たとえば、コンツェルン内に似た商品を売っているC社とD社があったとすると、このC社・D社は同じグループに所属する仲間なので、上で紹介したカルテルを簡単に行うことができます。
他にも、同じ商品Xを作っているC社とD社が話し合って、C社が商品の製造をストップすれば、D社が商品Xを独占することもできてしまいます。
おまけに、コンツェルンは基本的に巨大組織なので、傘下の企業1つ1つが世間に強い影響力を持つ大企業だったりします。
すると、コンツェルン内でカルテルや独占に向けた動きをするだけで、市場そのものを独占・寡占してしまうことが可能となります。
コンツェルンと財閥
戦前の日本には、いくつもの巨大コンツェルンが存在していました。
日本ではコンツェルンは『財閥』と呼ばれていて、特に三菱・三井・住友・安田の4つの財閥が4大財閥と呼ばれ、経済界に大きな影響力を持っていました。
財閥は、さまざまな業界で寡占・独占を行いました。
その結果、市場の価格競争が停滞し、財閥は暴利を貪り、その代償として消費者は困窮に苦しみました。
・・・が、政府は財閥に規制を設けることはありませんでした。
なぜかというと、政府と財閥は協力関係(悪くいえば癒着関係)にあったからです。
戦前の日本は、イギリス・アメリカなどの列強国に負けない国づくりを目指し、軍事力UPや植民地拡大に必死になっていました。
そして、軍事力UP・植民地拡大の際に、日本政府が頼りにしていたのが財閥の存在だったのです。
軍事力UPのためには、最新鋭の戦車・武器が必要なんだけど、どこかの企業で作ってくれないかな〜。
・・・あっそうだ!財閥に頼めばなんでもやっくれるはず!
植民地を手に入れたけど、植民地の経済を動かすためにどこかの企業に手伝って欲しいなー。
・・・あっそうだ!財閥に頼んで植民地に進出してもらおう!!
一方の財閥も、日本政府の要求に応じました。
政府からの仕事は儲かる仕事が多かったし、政府に貸しを作ることで、政府に対して財閥にとって有利な政策や法律を制定するよう圧力をかけることができるからです。
しかし1945年、太平洋戦争での敗北によって、財閥と政府の癒着関係に終止符が打たれました。
日本を占領下に置いたGHQは、『日本が戦争を起こした原因の1つに、財閥が政府とタッグを組んで軍需産業を支えたことが挙げられる』と考え、日本政府に対して財閥解体を命じたのです。
こうして戦後まもなく、財閥は解体され、日本から姿を消しました。
財閥が解体されても、財閥グループ内の企業1つ1つは残ったままのことが多かったため、今でも日本には、三菱・三井とかの名前がついた会社が多く残っているよ。(三菱電機・三井物産・安田生命・・・とかね!)
財閥解体については、別記事で詳しく解説しています。この記事の内容との関連も多いのでぜひあわせて読んでみてください。
独占禁止法
ここまで紹介してきたカルテル・トラスト・コンツェルンですが、日本ではこの3つのうちカルテル・トラストが独占禁止法という法律で禁止されています。
寡占・独占を起こしやすいコンツェルンは禁止されていないの?
実はコンツェルンも、昔は独占禁止法で禁止されていました。
・・・が、1997年、独占禁止法が改正されてコンツェルンの存在が認められるようになります。
コンツェルンそのものが100%ダメ!ってわけではなく、あくまでコンツェルンが形成されると寡占・独占が起こりやすいって話なので、コンツェルンが認められるようになったんだ。
逆にカルテル・トラストは、露骨な寡占・独占を引き起こすから規制緩和が行われても相変わらず禁止されました。
3つ全部禁止されてるわけじゃないので、注意しましょう!
コンツェルン解禁の後、昔の財閥のように持株会社によって構成された企業グループは、今では「ホールディングス」とか「フィナンシャル・グループ」と呼ばれています。
例えば、コンビニ最大手のセブンイレブンの持株会社は「セブン&アイホールディングス」だし、
飲料水で有名なキリンの持株会社は「キリンホールディングス」です。
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