
今回は、江戸時代の健康本『養生訓』を読むための本を、「マンガ」「現代語訳」「原文」「書いた人を知る」の4タイプに分けて紹介していくよ! 迷ったら、まずは『超訳 養生訓』から手に取るのがいちばん挫折しにくい。全体の内容を一度つかんでおけば、マンガでも原文でも、そのあと好きな方向へ進めるんだ。健康法として読みたい人にも、江戸時代の暮らしを知りたい人にも、ちゃんと合う1冊があるよ!
『養生訓』というタイトルを聞くと、お年寄りが若い人に言い聞かせる、堅苦しいお説教の本を想像するかもしれません。
ところが実は、養生訓に書かれているのは「食べすぎない」「からだを適度に動かす」「怒りや心配をためこまない」といった、いまの健康本とよく似た心得なのです。
成立は1713年とされていますから、2026年のいまから数えて300年以上も前の本ということになります。江戸時代の学者が80代になってから、自分の体験をもとにまとめた「健康本の元祖」ともいえる一冊です。
とはいえ、現代語訳・マンガ・原文と、出ている本の種類が多く、どれを選べばいいか迷いやすい古典でもあります。この記事では、読む目的ごとにおすすめの本を整理して紹介します。
養生訓とは?
① 養生訓は、江戸時代前期から中期にかけて活躍した学者貝原益軒が晩年に書いた、健康に長生きするための心得をまとめた本です。1713年(正徳3年)の成立とされています。
② 全8巻からなり、食事、病気の予防、医者や薬とのつきあい方、老後の過ごし方まで、からだと心の両面から具体的に説いています。
③ 漢文ではなく、ふつうの人にも読みやすい平易な文章で書かれ、江戸時代を通じて広く読まれました。いまも現代語訳・マンガ・原文など、さまざまな形の本で読めます。
養生訓の「養生」とは、日ごろの暮らし方に気を配って、病気を防ぎ、からだと心を健やかに保つことを指す言葉です。「訓」は教え、という意味になります。

書いたのは、1630年に筑前国(現在の福岡県北西部)の武士の家に生まれた益軒です。儒学を学んだ学者で、薬になる草木や動物の研究にも通じていました。
益軒は70歳ごろに藩の役目を退くと、執筆に打ち込むようになります。生涯に書き残した本は数多く、養生訓はその晩年を代表する一冊です。
益軒が学者として円熟期を迎えたのは、17世紀の終わりごろ、年号でいえば元禄のころです。上方を中心に元禄文化が花開いた時代で、学問の世界でも、書物の知識だけでなく実際に観察して確かめる実用的な学問が発展していきました。
このころの将軍は、5代徳川綱吉でした。綱吉の政治でよく知られるのが、犬をはじめとする生きものを憐れむよう命じ、殺生をきびしく禁じた生類憐れみの令です。
生きものの命をめぐる法令が世の中を騒がせた時代を生きた益軒が、晩年に書き残したのは、人が自分のからだと心をどう養っていくかという、身近な心得でした。
📝 成立年について:デジタル大辞泉や『山川 日本史小辞典』などは、養生訓の成立を1713年(正徳3年)としています。一方で、Wikipediaなど1712年(正徳2年)とする資料もあり、資料によって1年の違いがあります。この記事では、Historist(山川出版社)や多くの辞典がとる1713年の説に合わせています。
中身をのぞいてみると、心構えを説く総論から始まり、飲食、五官(目・耳・鼻・口・からだ)の使い方、病気の予防、医者の選び方、薬の使い方、老後の過ごし方へと進んでいきます。
全体を貫いているのは、からだの内側から生まれる欲をほどほどにおさえ、外からやってくる寒さや暑さ、湿気などからからだを守る、という考え方だとされています。

貝原益軒って、日本史の授業で名前だけは聞いたことがあるんだ。でも、養生訓が具体的にどんなことが書いてある本なのかは、ぜんぜん知らなくて…。

ザックリ言うと、養生訓は「毎日の暮らしで気をつけることリスト」なんだ。何をどれくらい食べるか、お酒やお茶とのつきあい方、よく眠ること、からだを動かすこと、そして気持ちを穏やかに保つこと。今でいう、お医者さんが書いた生活習慣の本に近いイメージだよ!
とはいえ、300年以上も前の本をいま読む意味があるのか、気になる人もいるはずです。

でも、300年以上前の健康法でしょう? 医学もずいぶん進歩したのに、いまの私たちの生活に本当に役立つのかしら?

もちろん、病気の原因の考え方や薬の知識には、いまの医学とは違うところもあるよ。だから治療法の本として読むのは向かないんだ。
でも「食べすぎない」「動く」「くよくよしすぎない」という毎日の心がけは、時代が変わってもそのまま通じる部分が多い。書いてあることを丸ごと信じるより、生活を見直すヒント集として読むのがおすすめだよ。
養生訓は、読む本によって印象ががらりと変わる古典でもあります。絵で気軽に読むのか、現代語でしっかり読むのか、原文の味わいまで楽しむのかで、選ぶべき本が違ってくるからです。

養生訓がどんな本かわかったところで、いよいよ本選びだよ。ここからは「マンガ」「現代語訳」「原文」「書いた人を知る」の4タイプに分けて、それぞれに合う本を紹介していくね!
マンガで読む
養生訓は、短い教えがたくさん並ぶ形式で書かれています。一つひとつは読みやすいのですが、文字だけで追っていると、どれも似たようなお説教に見えてしまいがちです。
そこで役立つのがマンガです。食事の場面、眠れない夜、つい怒ってしまったときなど、教えが生きる日常のシーンを絵で見せてくれるので、「こういうときの話なのか」とすぐに腑に落ちます。
たとえば、養生訓を代表する教えのひとつが、今でいう腹八分目です。おいしいものを前にしても、おなかいっぱいになる手前で箸を置きなさい、という心得になります。
こうした教えは、マンガのように場面とセットで覚えると、ふだんの食事のときにふっと思い出せるようになります。古典に苦手意識がある人の入り口として、まず試してほしいタイプです。

腹八分目って、実は「満腹になるまで食べるのを我慢しよう」というだけの話じゃないんだ。益軒は、食べたい・眠りたい・しゃべりたいといった欲を、ほどほどにおさえること全体を大事にしていたとされるよ。食事はその代表例、というわけだね。
独特の画風で知られる漫画家・ジョージ秋山が、養生訓に記された教えをマンガで解説した一冊です。文字だけの古典に抵抗がある人でも、絵とセリフで場面ごとの教えを追いかけられます。
2010年に海竜社から刊行された本で、2026年9月時点でKindle版は確認できず、紙の本のみです。版元の海竜社は2021年に事業を停止しているため、新品は手に入りにくく、中古での入手が中心になります。
文字だけの古典に苦手意識がある人。まず絵で全体の雰囲気をつかみたい人。
原文の言葉づかいや、章立てに沿った体系的な理解を求める人には物足りません。
現代語訳で読む
養生訓の内容をきちんと理解したいなら、中心になるのは現代語訳です。江戸時代の言い回しがいまの日本語に置きかわるだけで、教えの意図がぐっと読み取りやすくなります。
とくに押さえておきたいのが、養生訓の根っこにある気という考え方です。からだの中をめぐって命を支えるエネルギーのようなもので、益軒はこれをむだに減らさず、とどこおらせないことを重んじたとされています。
食べすぎや夜ふかし、怒りすぎが戒められるのも、この考え方から見ると筋が通ります。どれも大切な気を消耗させてしまう、というわけです。現代語訳では、こうした前提を補いながら読めるのが強みといえます。
病気のときの心得も、現代語で読むとおもしろい部分です。養生訓には、腕の確かな医者を慎重に選ぶよう勧める教えや、薬には効き目と害の両面がある、という指摘も含まれています。「医は仁術」という言葉が出てくる本としても知られているのです。
※医は仁術:医術は、人を思いやる「仁」の心をもとに人を救うための技術である、という意味。養生訓では巻6の、医者の心がまえを説く部分に出てくる言葉とされています。
現代語訳にも、全文を訳したもの、大切な教えを選んで訳したもの、医学の専門家の解説がついたものなど、いくつかの種類があります。

全文を訳した本と、大事なところだけ選んだ本があるのね。はじめて読むなら、どっちがいいのかしら?

はじめての1冊なら、大事な教えを選んで訳した本のほうが読み切りやすいよ。気になった教えが見つかったら、全文訳で前後の流れを確かめる、という順番がいちばんムダがないんだ。
逆に「古典として一冊まるごと読み通したい」という人は、最初から全文訳を選んでも大丈夫だよ。
内科医で医学博士の奥田昌子が、養生訓の教えを今の生活に合わせて編訳した一冊です。ディスカヴァークラシック文庫シリーズの1冊で、2026年9月時点でKindle Unlimitedの対象になっており、Audible版(ナレーション:よねざわたかし)でも配信されています。まず全体像を短時間でつかみたい人に向いています。
今日からの生活にすぐ役立てたい人。Kindle UnlimitedやAudibleで気軽に試したい人。
原文の言葉づかいや、章立てに沿った全訳での通読を求める人には向きません。
医学史研究者の立川昭二が、養生訓の中から今の私たちに響く言葉を選び出し、テーマごとに並べ直して解説した一冊です。全文訳ではありませんが、選んだ教えには総ルビ(すべての漢字にふりがな)つきの原文と、著者独自の現代語訳が添えられています。現代語訳とあわせて、原文の雰囲気にも触れてみたい人に向いています。
2005年に講談社から単行本で刊行され、2017年には講談社+α文庫にもなりました。Kindle版もありますが、2026年9月時点でKindle Unlimitedの対象にはなっていません(Kindle版は単品購入)。
現代語訳で意味をつかみながら、ふりがな付きの原文にも触れてみたい人。テーマごとに教えを読みたい人。
養生訓の全文を順番どおりに読み通したい人には、全文訳の④のほうが向いています。
漢方・鍼灸を専門とする松宮光伸が、養生訓の全文を口語に訳し、専門家の視点から注釈を加えた一冊です。
角川ソフィア文庫から2026年5月に刊行された比較的新しい版で、全464ページというボリュームで内容を細部まで読み込めます。Kindle版もありますが、2026年9月時点でKindle Unlimitedの対象にはなっていません。
専門家の注釈まで読み込んで、内容を深く理解したい人。医学的な背景も知りたい人。
464ページというボリュームがあるため、まず短時間で概要をつかみたい人には向きません。
原文に挑戦したい人へ
現代語訳で内容をつかんだら、次は原文に触れてみるのもおすすめです。養生訓は漢文ではなく、かなまじりの平易な文章で書かれているため、古文に少し慣れていれば意外と読み進められます。
原文で読む楽しみのひとつは、益軒の専門知識がにじむ細かな記述です。益軒は、薬になる草木や動物、鉱物を研究する本草学の学者でもありました。
1709年には、日本の動植物を幅広く取り上げた『大和本草』を刊行しています。食べ物の性質や薬の扱いについての記述には、こうした研究の積み重ねが生かされているとされます。
原文を収めた文庫には、注釈や解説がついているものが多く、言葉の意味を確かめながら読めます。同じ教えでも、原文のリズムで読むと、益軒の語り口がより身近に感じられるはずです。

それなら、最初から原文と注釈がついた本を1冊買えば、それで全部すむんじゃないの?

そう考えたくなるよね。でも、いきなり原文から入ると、言葉の意味を追うだけで手いっぱいになって、中身が頭に残りにくいんだ。
先に現代語訳で「何が書いてあるか」をつかんでおくと、原文では言い回しの味わいや注釈の情報を楽しむ余裕が生まれる。遠回りに見えて、実はこの順番のほうが挫折しにくいんだよ。
教育史研究者の石川謙が校訂した、養生訓の原文をそのまま収めた岩波文庫版です。同じ益軒の著作で、日本初の体系的な教育書ともいわれる『和俗童子訓』もあわせて収録されています。
2026年9月時点でKindle版は確認できず、紙の本のみでの販売です。現代語訳で内容をつかんだあと、原文の言葉づかいそのものに触れてみたい人向けの一冊です。
現代語訳で内容をつかんだあと、原文の言葉づかいそのものを味わいたい人。
古文に不慣れで、いきなり原文から入りたい人には難易度が高めです。
貝原益軒その人を知りたい人へ
養生訓をもっと深く味わいたいなら、書いた益軒自身の生涯を知っておくのもおすすめです。どんな人が、どんな人生の末にこの本を書いたのかがわかると、一つひとつの教えの重みが変わってきます。

益軒は、福岡藩に仕える家に生まれました。藩の命令で黒田家の歴史をまとめたり、筑前国の地理や産物を記録した『筑前国続風土記』の編さんを進めたりと、藩の学者として幅広く活躍しています。
子どものころはからだが弱かったと伝えられています。そんな益軒が、1630年に生まれて1714年に亡くなるまで、80代まで生きたのです。当時としてはかなりの長寿でした。
晩年には、妻の東軒とともに京都などへ旅をしたとも伝えられています。養生訓は、益軒がみずから長い人生を歩んだうえで書き残した本だといえるでしょう。

からだは、生まれつき丈夫かどうかだけで決まるものではない。毎日の食べ方、動き方、心の持ち方をていねいに整えていけば、弱いからだでも長く保つことができるのだ。
※上のセリフは、養生訓の趣旨をやさしく言い換えたもので、益軒が実際に残した言葉そのものではありません。

本の中身がわかれば十分な気もするけど、書いた人のことまで知る必要ってあるのかしら?

益軒の人生を知ると、養生訓が「机の上で考えた理想論」ではなく、「本人が実際に試して長生きした記録」だってことがわかるんだ。
体が弱かった人が、自分の体で確かめながら80代まで生きた。その背景を知ってから読むと、「食べすぎるな」の一言にも説得力がぐっと増すよ!
吉川弘文館の人物叢書シリーズの一冊として刊行されている、益軒の生涯をたどる本格的な評伝です。井上忠が、儒学者・本草学者としての足跡を史料にもとづいてまとめています。
単行本のみの販売で、2026年9月時点でKindle版は確認できません。養生訓の背景にある益軒その人をじっくり知りたい人向けの一冊です。
養生訓を書いた益軒その人の生涯を、史料に基づいてじっくり知りたい人。
軽く読める入門書を探している人には、専門的で読み応えが重すぎます。
まとめ
ここまで、目的別に4つのタイプへ分けて養生訓の本を紹介してきました。最後に、紹介した本を1つの比較表にまとめておきます。
難易度と「こんな人向け」を見比べて、いまの自分に合う1冊を選んでみてください。Kindle UnlimitedやAudibleの対象かどうかも、表であわせて確認できます。
今回紹介した6冊のうち、2026年9月時点でKindle Unlimitedの対象になっているのは②「超訳 養生訓」の1冊のみで、Audible配信があるのも②だけです。対象状況は時期によって変わるため、最新情報は各商品ページでご確認ください。
横にスクロールできます
| 📚 タイトル | 難易度 | Kindle Unlimited | Audible | こんな人向け |
|---|---|---|---|---|
| ①貝原益軒の養生訓(ジョージ秋山) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✕ | ✕ | 絵で気軽に読みたい人 |
| ②超訳 養生訓(奥田昌子) Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✓ | ✓ | 今すぐ健康法として実践したい人 |
| ③すらすら読める養生訓(立川昭二) Amazon楽天 |
●●○ 中級者 | ✕ | ✕ | ふりがな付き原文も味わいたい人 |
| ④口語訳 養生訓(松宮光伸) Amazon楽天 |
●●○ 中級者 | ✕ | ✕ | 専門家の注釈まで読み込みたい人 |
| ⑤養生訓・和俗童子訓(岩波文庫) Amazon楽天 |
●●● 上級者 | ✕ | ✕ | 原文の言葉づかいを味わいたい人 |
| ⑥貝原益軒(人物叢書) Amazon楽天 |
●●● 上級者 | ✕ | ✕ | 益軒の生涯を本格的に知りたい人 |
✓=対象、✕=対象外(電子版なし含む)、△=時期により変動(最新は各商品ページでご確認ください/2026年9月時点)

以上、養生訓のおすすめ本の紹介でした。迷ったら、まずは『超訳 養生訓』から。全体の内容さえつかめれば、そのあとはマンガでも原文でも、好きな方向へ進んでいけるよ。AudibleやKindle Unlimitedの無料体験なら、対象の本を0円で試せるから、あわせて使ってみるのもアリ! 下の記事では、ほかの古典の本も目的別に紹介しているよ。あわせて読んでみてね!
Historist(山川出版社)「養生訓」「貝原益軒」(2026年9月確認)
コトバンク「養生訓」「貝原益軒」(デジタル大辞泉・精選版 日本国語大辞典・日本大百科全書・改訂新版 世界大百科事典・山川 日本史小辞典 改訂新版ほか/2026年9月確認)
Wikipedia日本語版「養生訓」「貝原益軒」(2026年9月確認)
山川出版社『詳説日本史』
各紹介書籍のAmazon商品ページ(貝原益軒の養生訓〈ジョージ秋山・海竜社〉/超訳 養生訓〈奥田昌子・ディスカヴァー・トゥエンティワン〉/すらすら読める養生訓〈立川昭二・講談社〉/口語訳 養生訓〈松宮光伸・KADOKAWA〉/養生訓・和俗童子訓〈石川謙・岩波書店〉/貝原益軒〈井上忠・吉川弘文館〉/2026年9月確認)
KADOKAWA公式サイト「口語訳 養生訓」商品ページ(2026年9月確認)
講談社公式サイト「すらすら読める養生訓」商品ページ(2026年9月確認)
ディスカヴァー・トゥエンティワン公式サイト「超訳 養生訓」商品ページ(2026年9月確認)
Audible.co.jp「超訳 養生訓」商品ページ(2026年9月確認)
文化通信「海竜社 事後処理を弁護士に一任」(2021年9月9日付/2026年9月確認)
記事の誤りを発見された場合はお問い合わせください。確認後、修正します。
📚 江戸時代の記事をもっと読む → 江戸時代の記事一覧を見る
Amazonのアソシエイトとして、まなれきドットコムは適格販売により収入を得ています。





