
今回は『易経』を読むための本を、「マンガ・入門」「現代語訳」「原文」「人生に活かす実践」の4タイプに分けて7冊紹介していくよ! 迷ったら、まずはマンガ・入門タイプの1冊から入るのがいちばん挫折しにくい。易経は用語がとにかく独特だから、先に全体の地図を持っておくと、そのあとに読む現代語訳や原文の言葉がすんなり入ってくるんだ。授業で名前だけ覚えた人にも、人生の指針として読んでみたい人にも、ちゃんと合う1冊があるよ!
『易経』と聞いて、まっさきに占いを思い浮かべる人は多いはずです。細い竹の棒を手にした易者が、道ばたで運勢を告げている——そんな光景の「易」です。
ところが実は、易経は儒教がもっとも重んじた経典のひとつであり、中国の知識人が何度も読み込んできた思想書でもあります。
儒教の経典が国家の学問の中心に据えられたのは、漢の時代(前2世紀ごろ)のことでした。そこから数えるだけでも、易経は2000年以上にわたって読み継がれてきたことになります。
そこで語られているのは、占いが当たるか外れるかではありません。「ものごとはたえず移り変わる」という一点です。君子豹変という言葉も、もとは易経に出てくる表現だと言われているのです。
とはいえ、原文をいきなり開いても、見慣れない記号と短い言葉が並ぶばかりで、意味はなかなか入ってきません。この記事では、易経をどの本で読めばいいのかを目的別に整理して紹介します。
易経とは?
① 易経は、儒教が重んじた経典群五経の一つに数えられる書物です。もとは占いの結果を読み解くための言葉を集めたもので、『周易』とも呼ばれます。
② 中身は二階建てです。六十四通りの型と短い言葉からなる「経」と、その意味を説明する解説群「伝」に分かれます。この伝が十翼と呼ばれるものです。
③ 誰がいつ書いたのかは、はっきりしていません。伝統的に語られてきた著者の名はいずれも伝承であり、どの本で読むかによって受け取れるものが変わる書物でもあります。
易経のはじまりは、古代中国の占いにさかのぼるとされています。殷にかわって周が中国を治めた時代に、占いの結果を読み解くための言葉が整理され、原型ができあがった、と考えられているのです。
『周易』という別名も、この周の時代に由来するとされます。王朝の交代そのものについては、殷と周の記事でくわしく解説しています。
易経の中身は、大きく二つに分かれます。ひとつは、六十四卦と呼ばれる六十四通りの型と、それぞれに付けられた短い言葉です。
もうひとつは、その型が何を意味するのかを説明した解説群で、十翼と呼ばれます。「翼」には、本文を助け支えるものという意味が込められているとされています。
では、誰が書いたのでしょうか。伝統的には、神話上の帝王伏羲が八卦を作り、周の文王と周公旦が言葉を書き加え、孔子が十翼を書いた、と語り継がれてきました。
ただし、これらはいずれも伝承であり、史実として確かめられているわけではありません。近年の研究では、経の部分は周の後期に、十翼は春秋戦国時代から漢の時代にかけてまとめられたと考えられています。
孔子が生きたのは、数多くの思想家があらわれた時代でした。儒家もそのうちの一派で、この時期に花開いた思想の広がりは諸子百家と呼ばれます。
その儒家が経典として重んじたのが五経であり、孔子とその弟子たちの言葉を伝える論語とあわせて、東アジアの読書人が長く学び続けてきました。

五経って授業で名前だけ出てきたけど、易経が具体的にどんな本なのか、ぜんぜんイメージがわかないんだよね…。

ザックリ言うと、易経は「変化のパターン集」なんだ。ものごとの状態を六十四通りに整理して、それぞれに「いまはこういう時期だから、こう構えるといい」という短いコメントが付いている。今でいう、状況別のケーススタディ集に近いイメージだよ!

小説やドラマで『易経』っていう言葉を見かけるんだけど、あれは占いの本ってことでいいの? 運勢を占うために読むもの…?

占いの本でもあるし、思想の本でもある、というのが正直なところかな。もともとは占いのための書物だったけど、十翼が加わったことで「世の中はどう動くのか」を語る本になったんだ。だから儒教の経典にもなったし、いまも人生訓として読まれているんだよ。

易は、吉と凶を言い当てるためだけの書ではない。移りゆくものの道理を学び、おのれの身の処し方を正すためのものだ。
※孔子が十翼を著したという話そのものが伝承であり、上のセリフも史料に残る発言ではなく、その伝承をもとにした創作です。

易経がどんな本かわかったところで、いよいよ本選びだよ。ここからは「マンガ・入門」「現代語訳」「原文」「人生に活かす実践」の4タイプに分けて、7冊を紹介していくね!
マンガでやさしく入門する
易経を読もうとした人が最初につまずくのは、内容そのものよりも、見たことのない用語のほうです。
土台にあるのは、陰陽という考え方です。世の中のできごとを、対になる二つの性質の組み合わせとしてとらえます。
この二つを表す記号が爻です。三つ重ねれば八通りの型(八卦)になり、六つ重ねれば六十四通りの型になります。易経の本文は、この六十四通りに沿って進んでいきます。
文字だけで説明されるとややこしいこの仕組みも、マンガなら絵と物語で一気に整理できます。まず全体の地図を手に入れる、という使い方に向いたタイプです。
マンガでの入門書は、易経の本文をそのまま訳すのではなく、記号や図をまじえて仕組みそのものを見せてくれます。八卦がどう組み合わさって六十四通りになるのか、といった話も、絵で追えば一気に飲み込めます。
1冊読み終えるころには、「陰と陽」「爻」「卦」といった言葉への抵抗がかなり減っているはずです。ここまで来られれば、次に手に取る現代語訳の読みやすさがまるで違ってきます。
『まんが易経入門』は、古代の人びとが自然を観察して八卦を組み立てていく場面から説き起こし、そこから六十四卦へと広がる易経の成り立ちを、マンガと図解で順を追って解説する入門書です。「中国医学の源がわかる」という副題のとおり、終盤では易経の考え方が中国医学の養生論——漢方や鍼灸の背景にある発想——へつながっていく流れにもふれています。原文や現代語訳に進む前の最初の1冊として位置づけられる本です。
初めて易経に触れる人や、活字だけでは陰陽・八卦の仕組みがイメージしにくい人におすすめです。
占いの実践的な手順や、原文・書き下し文にあたりながら読むことを求める人には物足りない可能性があります。
現代語訳でわかりやすく読む
易経の本文は、六十四卦のそれぞれに付けられた短い言葉でできています。卦の全体につけられた言葉を卦辞、一本一本の爻につけられた言葉を爻辞と呼びます。
これらはとても象徴的で、ひと言でいえば謎かけのような文章です。原文のままでは何を言っているのか見当がつかない、ということも珍しくありません。
現代語訳は、その一句一句を今の日本語に置き換えたうえで、背景にある考え方まで補ってくれます。通読して全体の流れをつかみたい人に向いています。
選ぶときに見ておきたいのが、六十四の卦をすべて収めているかどうかです。有名な卦だけを抜き出した読み物タイプもあり、辞書のように引いて使いたい人には物足りなく感じられることがあります。

訳がついているなら、どれを選んでも同じじゃないの? 訳者によって、そんなに変わるものかしら。

けっこう変わるんだ。易経の言葉は短いぶん意味の幅が広いから、訳者が「どう読むか」で印象がガラッと変わる。人生訓として読ませる訳もあれば、古代の占いの記録として淡々と訳したものもあるよ。
『超訳 易経 陽-乾為天』は、六十四卦の筆頭に置かれる乾為天ひとつに絞り、龍が段階を追って成長していく物語として読み解いた超入門書です。易経研究者の竹村亞希子が、原文の象徴的な言葉を今の言葉に置き換えながら、背景にある考え方まであわせて解説しています。
乾為天という一つの卦をじっくり読み、易経の言葉を人生訓として受け取りたい人におすすめです。
六十四卦を網羅した辞書的な使い方をしたい人には、扱う卦が一つに絞られている点に注意が必要です。
対になる『超訳 易経 陰-坤為地ほか』は、陰(受容性)を代表する坤為地を中心に、17の卦を取り上げた続編です。陽の巻とあわせて読むことで、易経全体に流れる陰陽の対比をつかみやすくなります。
陽の巻とセットで読み、陰陽双方の考え方をバランスよく知りたい人におすすめです。
六十四卦をすべて読みたい人には、陽の巻とあわせても収録される卦が一部にとどまる点に注意が必要です。
原文で本格的に読む
現代語訳で全体像をつかんだら、次は原文です。易経は十翼まで含めるとそれなりの分量があり、注釈なしで読み通すのは簡単ではありません。
それでも原文にあたる価値があるのは、この本の上に後世の読み方が幾重にも積み重なっているからです。五経は官僚を選ぶ試験である科挙でも学ばれ、知識人にとって共通の教養であり続けました。
原文で読むなら、書き下し文・現代語訳・注釈がそろった版を選ぶのが無難です。言葉づかいを味わいながら意味も追えますし、文庫であれば持ち歩けます。通読せず、気になった卦だけを引くという読み方もできます。
易経には、こんな逸話も伝わっています。秦の始皇帝が思想書を焼かせた焚書坑儒のとき、占いに関する書物は焼却の対象から外されたと伝えられており、易経はそのおかげで難を逃れたとも言われています。ただし、これは後世に書かれた記録にもとづく話であり、どこまでが実際の経緯なのかは分かっていません。

最初から原文と注釈が入った本を買えば、1冊で済むんじゃない?

気持ちはわかる! でも易経の注釈って、「読者はもう卦の仕組みを知っている」前提で書かれていることが多いんだ。先に全体像を持っているからこそ、注釈が効いてくる。遠回りに見えて、こっちのほうが結局は早いよ。
『易経 上』(岩波文庫)は、高田眞治・後藤基巳による訳で、原文・書き下し文・現代語訳・注釈がそろった学術的な定番版です。上巻には六十四卦のうち前半の卦とその解説が収められています。
原文にあたりながら、注釈つきでじっくり読み進めたい人におすすめです。
現代語だけでさらっと読みたい人には、文語調の訳文がやや難しく感じられる可能性があります。
続く『易経 下』には、六十四卦の後半にあたる下経と、十翼のうち繋辞伝をはじめとする解説部分が収められています。上巻とあわせて、六十四卦全体を原文で読み通すことができます。
上巻を読み終えて、六十四卦を最後まで通読したい人におすすめです。
上巻を読まずに下巻だけを読むと、前半の卦との対応関係がつかみにくくなります。
人生に活かす・占いとして実践する
易経は、いまも実際に占うための本として読まれています。筮竹や硬貨を使って卦を立て、その卦に付けられた言葉を読む——この方法を占筮といいます。
実践書と呼ばれる本には、卦の立て方から読み解き方までを手順として説明するタイプがあります。もう一つ多いのが、易経の言葉を仕事や人生の指針として読み替えていくタイプで、ここで紹介する2冊はこちらにあたります。
たとえば冒頭で触れた「君子豹変」は、もともと「立派な人は誤りに気づけば鮮やかに改める」という意味だとされています。いまの日本語で使われる「態度をコロッと変える」という否定的なニュアンスとは、ずいぶん違うのです。
ただし、易経の言葉はどれも抽象的です。そのまま読んでも自分の状況には結びつけにくいため、実践書の多くは具体的な場面に引きつけて解説する形をとっています。そのぶん著者の解釈の色が濃く出るタイプでもあります。

占いの本って聞くと、ちょっと身構えちゃうんだけど…。易経の実践書は、そういうものとは違うのかしら?

「当たるかどうか」を売りにする本とは、ねらいが少し違うんだ。易経の占いは、いまの状況を六十四の型のどれかに当てはめて考え直すための道具に近い。答えをもらうというより、考えを整理するための問いをもらう感じだね。
『人生の迷いが消える 易経』は、小田全宏が説く「陽転易学」の考え方にもとづき、六十四卦を仕事や人生の場面に引きつけて解説する実践書です。占いの手順そのものよりも、易経の言葉を日々の判断の指針として読み替える視点に重きを置いています。
易経の言葉を、日々の判断や仕事の指針として具体的に読み替えたい人におすすめです。
占いの立て方(占筮)の手順そのものを詳しく知りたい人には、解説の重点が異なります。
『易経の秘密 占わずして人生を大きく好転させる!』は、易経が説く陰陽の変化の法則を9つの原理にまとめ、健康・人間関係・生き方の場面に引きつけて解説した実践書です。占筮の手順そのものではなく、法則を理解して日常の判断に活かすことに重きを置いた1冊です。
占いの形式にこだわらず、易経の考え方を日常に取り入れたい人におすすめです。
六十四卦それぞれの原文・訳文を体系的に読みたい人には、他の書籍のほうが向いています。
まとめ
ここまで、目的別に4つのタイプへ分けて易経の本を紹介してきました。最後に、7冊を1つの比較表にまとめておきます。
難易度と「こんな人向け」を見比べて、いまの自分に合う1冊を選んでみてください。なお今回の7冊は、2026年8月時点でAudibleの配信がなく、Kindle Unlimitedも読み放題の対象かどうかは時期によって変わります。電子版の有無も表であわせて確認できます。
横にスクロールできます
| 📚 タイトル | 難易度 | Kindle Unlimited | Audible | こんな人向け |
|---|---|---|---|---|
| ①まんが易経入門 Amazon楽天 |
●○○ 初心者 | ✕ | ✕ | マンガで陰陽・八卦の全体像をつかみたい人 |
| ②超訳 易経 陽 Amazon楽天 |
●●○ 中級者 | △ | ✕ | 乾為天の龍の物語から易経に入りたい人 |
| ③超訳 易経 陰 Amazon楽天 |
●●○ 中級者 | △ | ✕ | 陽の巻とあわせて陰陽の対比を知りたい人 |
| ④易経 上(岩波文庫) Amazon楽天 |
●●● 上級者 | ✕ | ✕ | 原文・書き下し文・注釈つきで本格的に読みたい人 |
| ⑤易経 下(岩波文庫) Amazon楽天 |
●●● 上級者 | ✕ | ✕ | 上巻から続けて六十四卦を読み切りたい人 |
| ⑥人生の迷いが消える易経 Amazon楽天 |
●●○ 中級者 | ✕ | ✕ | 易経を仕事や人生の指針として読み替えたい人 |
| ⑦易経の秘密 Amazon楽天 |
●●○ 中級者 | △ | ✕ | 占いに頼らず陰陽の法則を日常に活かしたい人 |
✕=電子版そのものがないため対象外、△=電子版はあるが読み放題の対象かどうかは時期により変動(最新は各商品ページでご確認ください/2026年8月時点)

以上、易経のおすすめ本7選でした。迷ったら、まずはマンガ・入門タイプの1冊から。全体の地図さえ手に入れば、そのあとは現代語訳でも原文でも、好きな方向へ進んでいけるよ。AudibleやKindle Unlimitedの無料体験なら、易経以外の中国古典や入門書も対象のものは0円で試せるから、あわせて使ってみるのもアリ! 下の記事では、ほかの中国古典の本も目的別に紹介しているよ。あわせて読んでみてね!
コトバンク「易経」「五経博士」「君子は豹変す」「伏羲」(デジタル大辞泉・日本大百科全書ほか/2026年8月確認)
Wikipedia日本語版「易経」「周易」「五経博士」「焚書坑儒」「君子は豹変す」(2026年8月確認)
山川出版社『詳説世界史』
岩波書店『易経』(上・下)書誌情報(2026年8月確認)
openBD書誌データベース(各書籍の書名・著者・出版社・刊行年/2026年8月確認)
新泉社・五月書房新社・医道の日本社ほか各出版社の書籍紹介ページ(2026年8月確認)
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