最近、平安文学にハマっています。蜻蛉日記に続き、紫式部日記を読んでみたので、紫式部日記のあらすじや感想、オススメの本などを紹介してみようと思います。
ちなみに蜻蛉日記はこちら。
紫式部は平安文学を代表する超大作「源氏物語」の著者。知っている人も多いかと思いますが、一応、紫式部について簡単に紹介しておきます。
紫式部と源氏物語
紫式部には藤原宣孝(ふじわらののぶかた)という夫がいましたが、1001年に他界。そして、夫の死がきっかけとなり紫式部は源氏物語を書き始めたと言われています。夫の死という悲しみを乗り越えて作り上げられた作品が、息を吸うように不倫をしまくる光源氏の不倫物語ということにはあえて触れないでおく。
そんな源氏物語の噂が広まったのか、時の権力者である藤原道長や一条天皇にも源氏物語は知られるところとなり、道長はこの作品を高く評価したと言われています。そして、藤原道長は娘の藤原彰子を一条天皇に入内させる際に、彰子のために精鋭ぞろいの女房を集めますが、紫式部はその精鋭の1人に選ばれます。1006年頃の話です。
紫式部は源氏物語の著者という以外にも、漢文に堪能な才女という評価もあり、その優れた紫式部の能力が認められたのでしょう。紫式部は彰子付きの家庭教師役にもなっています。(紫式部が藤原道長の愛人で忖度があったという説もある)
妃のお近くで働くことになった紫式部。紫式部は、彰子に仕える中で見たことや感じたことなどを日記として書き綴ることにしました。それが紫式部日記です。
紫式部日記の内容は?
紫式部日記は、1008年の藤原彰子の出産の話から始まります。彰子の出産は、その父である藤原道長の栄華を決定付けた超重要なイベント。このサイトでも以下の記事で彰子の出産の話について紹介しています。
- 産前産後で辛いにも関わらず皆を心配させまいと微塵もそんな様子を見せない彰子
- 男子が生まれないかとドキドキしたりはしゃいだりする藤原道長の姿
- 彰子を出世の道具としてしか見ていない道長と彰子の微妙な心情描写
- 紫式部と共に働く女房の日常
- 宮中を取り巻く複雑な人間関係
- 宮中行事で垣間見える一幕の人間ドラマ
などなど当時の様子が紫式部の鋭い視点で描かれています。内容はかなりリアルで生々しく、まるでノンフィション小説を読んでいるよう。当時の朝廷文化を知る史料としても重宝されています。
ところが、紫式部日記を読んでいると日記調だった文体が突如として手紙調のとてもフランクな文体に変わり、話の内容も彰子の出産の話から、女房の悪口や「女房はどうあるべきか?」などの紫式部の持論が熱く語れるシーンへと急変してしまいます。
「彰子様の女房たちは、恥ずかしがり屋で何もできないのよ。素晴らしい人たちなのに勿体無いわ」(超訳)とか
「彰子様も控え目すぎますわ。それも彰子様の性格なので仕方のないことですが、周囲からは『定子様の頃の方が後宮は華やかだったなぁ』なんて言われています。まぁ、昔のことなんて私は知らないですけどね!!!!!」(超訳)とか
「和泉式部は和歌は達者ですけど、ちょっと尻軽女すぎですわw」(超訳)とか
「枕草子を書いた清少納言は、自分の博識をひけらかす傲慢女。人と違うことをすることで、自分を特別なように見立ててますけど、そんなの上っ面だけを取り繕った姿なんて嘘っぱちですわ!(おそらく枕草子のことを批判している)」(超訳)とか
とにかく、辛口でバシバシと自分の意見を述べてゆきます。宮中の様子を様々に描いた最初のシーンとはエライ違いです。そして、清少納言を痛烈に批判する紫式部の様子から、紫式部が枕草子を強く意識していたことがわかります。それも、嫉妬というよりもライバルに近い感情だったことが文面から伝わってきます。
紫式部の痛烈な意見は清々しくもあり、紫式部日記の一番面白く、かつ有名なシーンでもあります。前半部分は、当時の時代背景を知っていないとわかりにくい部分もありますが、後半の持論を熱く語る部分は予備知識がなくてもスラスラ読めて、現代に通ずる部分も数多くあるので読んでいてとても面白いです。
垣間見える紫式部の闇
紫式部日記には、随所随所に「人生辛い」とか「気分が沈んでる」とかネガティブワードが多く登場します。
源氏物語のイメージばかりで宮廷の華やかなイメージがあるかもしれませんが、紫式部は実は結構な苦労人なんです。
まず、彰子の女房になった時に周りの人から敬遠されてしまいます。「紫式部ってあの源氏物語を書いた人よね?どーせ、お高くとまって私たちのこと馬鹿にしてるんでしょ?近づかないで!」って感じで。紫式部はこれに相当悩んだようです。しかし、紫式部と他の女房たちは少しずつですがお互いに心を開き始めます。そんな、紫式部の成長する姿が見れるのも紫式部日記の面白いところ。
漢文に堪能だったこともコンプレックスでした。当時は女性が漢文に詳しいことは「女性らしくない」というイメージが強かったからです。
これら表面的な話の他にも、紫式部はおそらく何らかの心の闇を抱えていたのだろうと思います。心の闇、どんな人にもあるものですが紫式部の闇とは一体何なのか?今となっては誰もわかりませんが、紫式部日記の中にヒントが隠されているかもしれません。そんな謎解きのような面白さも紫式部日記は持ち合わせています。
紫式部日記をより楽しく読むには
紫式部日記は面白いんですが、やはり当時の時代背景を知らないと紫式部日記を堪能することはできないと思います。
・・・が、安心してください!このサイトの以下に掲げる記事を読んでいただければ、当時の時代がどんな時代だったか、概要は掴めるはず。(はい、宣伝です)
「紫式部日記を読んで見たいけど、難しいそう・・・」って方はぜひ読んでみてください。
紫式部日記を読むならこの現代語訳!!
紫式部日記を読むなら次の3冊の本をオススメします。オススメの理由も含めて簡単に紹介します。
紫式部日記、角川ビギナーズ・クラシックシリーズ
蜻蛉日記に引き続き、安定の角川ソフィア文庫のビギナーズ・クラシックシリーズです。全文は載っていないものの、要点を抑え、大事な部分だけをピックアップして紹介しています。この本の良いところは、考察が面白いのと時代背景がトンデモなくわかりやすいこと。
迷ったらまずはこの本で読んでみることをオススメします。そして、さらに内容が気になったら全文を読んでみると良いと思います。
人生はあはれなり… 紫式部日記
紫式部日記を漫画で紹介した本。自分の知っている限り、この本が一番わかりやすい。ただ、原文が載っていなかったり、独自解釈があったりなので、その点は注意。歴史の厳密な解釈にこだわらず、普通に漫画を読む感覚で手に取るのならかなりの良本。それにしてもこの本は面白いですw
人生はあはれなり… 紫式部日記
全文を読みたい人向け。やっぱり角川ソフィア文庫の現代語訳が一番読みやすいです。ちなみに、全文の現代語訳は他にもいろんな本が出版されているので、気になる本を手に取ってみると良いでしょう。おそらく、金額と内容を両天秤にかけてみるとコスパ的に角川ソフィア文庫の紫式部日記に辿り着く人が多いはず。
まとめ
紫式部日記、平安文学に興味のある方なら読んでおいて損はないし、むしろ面白いので超オススメです。この記事でどれぐらい良さを伝えれたかは微妙ですが、非常に興味深い本なので興味のある方はぜひ読んでみてください!
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