今回は、1842年に制定された天保の薪水給与令についてわかりやすく丁寧に解説していくね。
天保の薪水給与令とは
天保の薪水給与令とは、「これまでは不法にやってきた外国船はすべて打ち払ってたけど、漂流して日本にやってきた外国船に限っては水や薪を渡してあげて大人しく帰ってもらおう!」という目的で1842年に制定された法令です。
江戸幕府は1825年に、『不法入国する外国船はどんな船であっても打ち払う!』という異国船打払令を出していました。
・・・ところが1842年、江戸幕府は異国船打払令を廃止。その代わりに制定されたのが天保の薪水給与令でした。
つまり、天保の薪水給与令が出されたことで、日本の外国船への対応に変化が見られた・・・ということです。
天保の薪水給与令が出された時代背景
天保の薪水給与令が出された背景には、1840年に起きたイギリスVS清の戦争「アヘン戦争」の影響がありました。
当時、清というのは東アジア最強の国だと言われていました。
・・・ところが、その清がイギリスに完敗。
イギリスに手も足も出なかった清は、1842年、イギリスと南京条約を結んで降伏してしまいます。
清がイギリスに完敗したことは日本にも伝わり、幕府内では衝撃が走りました。
東アジア最強の清が、イギリスには手も足も出なかっただと・・・。
もし日本にやってきたイギリス船を異国船打払令に従って攻撃して、イギリスが反撃してきたら日本なんてあっという間に蹂躙されてしまうだろう。
こりゃ異国船打払令なんて出してる場合じゃねーぞ!
清がイギリスに降伏した1842年、江戸幕府は異国船打払令を廃止して、新たに天保の薪水給与令を出しました。
天保の薪水給与令の内容
天保の薪水給与令の内容は、
漂流してやってきた外国船に限っては、攻撃せずに薪や水の補給を与えて大人しく母国に帰ってもらおう!
っていう内容でした。
薪って何に使うの?
薪は、船を動かす燃料として使われていたんだ。車に入れるガソリンのようなものだね。
しかし、天保の薪水給与令はあくまで漂流した外国船に対するもの。
江戸幕府は『必要最低限の国としか交流を持たない!』という鎖国方針そのものを変えることはありませんでした。
※ただし、異国船打払令が廃止されたので『外国船を見つけたら問答無用で攻撃する!』という対応は見直されました。
天保の薪水給与令はあくまで鎖国の例外を設けただけで、日本の鎖国が終わったわけではありません。間違えやすいので注意!
日本が開国に踏み切るのは、後程また紹介するけど1853年にペリーが日本に来航してきたタイミングになるよ。
天保の薪水給与令が出された後の日本
日本は、天保の薪水給与令を出すことで鎖国政策を緩和しましたが、これでは根本的な問題は解決しません。
というのも、漂流船なら助けてOKというルールでは「じゃあ、日本との交易や外交を求めてやってきた外国船にはどう対応すんの?」っていう問題を解決できないからです。
日本にやってくる外国船は年を追うごとに増え続けており、アヘン戦争にイギリスが勝利したことで、今後さらに外国船の来航が増えることも予想されます。
オランダ「日本くん、悪いことは言わないから開国した方がいいよ」
日本が交易を認めていた数少ない国の1つであるオランダも、鎖国政策を続けていては日本が国際情勢に対応できないことを理解しており、1844年、日本に対して「これ以上鎖国を続けるのは不可能だから、開国した方がいいよ!」と勧告をしましたが、江戸幕府はオランダの勧告を無視して、鎖国を維持しました。
オランダは、東アジアの拠点である日本をイギリスに奪われてしまうことを強く恐れていました。
日本が鎖国を続ければ、イギリスと日本の間で武力衝突が起こるかもしれず、もし武力衝突が起これば、日本はあっという間にイギリスに支配され、オランダは日本という拠点を失うことになります。
こうした最悪の事態を避けるため、オランダは日本に『開国した方がいいよ!』と勧めたのです。
国際情勢について無知だった江戸幕府は、オランダの事情を理解することができず、旧来どおりの鎖国政策にこだわり続けました。
天保の薪水給与令は、限界が近づいている鎖国をなんとか維持しようする江戸幕府の苦肉の策だった・・・とも言えますが、その後すぐ、鎖国は限界を迎えることになります。
ビッドル&ペリー来航により日本は開国へ
1846年にアメリカのビッドルが日本に来航。さらに1853年には同じくアメリカからペリーが来航し、日本は鎖国を諦めて開国し、アメリカと日米和親条約を結ぶことになります。
天保の薪水給与令は、鎖国を維持しようとする江戸幕府の最後の試みだった・・・と言うことができます。そしてその試みが失敗に終わると、江戸幕府もついに鎖国をあきらめ、開国に踏み切ることになるのです。
確認問題
答 C:アヘン戦争
答 C:日本に漂流してやってきた外国船に限って薪・水を与えて平和的に帰国させようとした。
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