今回は、世界恐慌後のアメリカで実施されたニューディール政策についてわかりやすく丁寧に解説していくよ!
ニューディール政策とは
ニューディール政策とは、1929年に起きた世界恐慌への対策するため、アメリカ政府が実施した経済政策のことです。1933年から始まりました。
政策を実施したのは、当時アメリカの大統領だったフランクリン=ローズヴェルト。
ニューディールは英語で書くと『New Deal』。
トランプゲームで親がトランプを配り直すときに使う言葉で、政府がお金をたくさん使ったり、規制や法律を創設することで、アメリカ政府(親)が国民たちに富を配り直す・・・という意味で名付けられました。
※日本語では『新規巻き直し政策』と言います。(覚える必要はありません)
ニューディール政策が実施された時代背景
ニューディール政策の話を理解するには、まず1929年に起きた世界恐慌について知っておく必要があります。
世界恐慌の詳細は、別の記事で解説しています。まずはこちらの記事を読んでみてください。
この記事では、概要だけをサラッと説明しておきます。
世界恐慌が起きた理由は、アメリカの経済が停滞し始めていたのに、多くの会社などが借金をしてまでアメリカ株を買い続けたからでした。
アメリカ経済は絶好調!
アメリカの株を買えば、株価が上がって絶対に儲かるんだから、借金してでも株を買うべき!
・・・しかし、1929年9月、アメリカ経済の先行きが怪しいことに多くの人が気付き始めると、アメリカ株価が突如として大暴落。
借金をして株を買った会社などは、借りたお金を返すことできずに倒産したり、人件費を削減するため大量リストラが行われ多くの失業者がアメリカに溢れました。
さらに、会社にお金を貸していた銀行が貸したお金を回収できなくなり、破綻する銀行まで現れます。
破綻する銀行が現れると、生き残った銀行は、会社が倒産するのを恐れて簡単にはお金を貸さなくなり、本当に資金が必要な会社にまでお金が行き届かなくなり、株価の大暴落に直接影響のない会社のにまで大ダメージを与えました。
そして、会社の倒産→銀行が金を貸さなくなる→さらに会社が倒産→銀行がさらに貸し渋る・・・という負のスパイラルが起こって、アメリカ経済に大打撃を与えたわけです。
おまけに、アメリカの会社が受けた大ダメージは、その会社と取引をしている世界中の企業にも悪影響を与え、その影響は世界に及びました。
アメリカ経済が大ダメージを受けたのはもちろんですが、アメリカと密接な経済関係を持っていた日本・イギリス・ドイツは特に大ダメージを受けました。
・・・実は、当時(1929年)のアメリカ大統領だったフーヴァーは、世界恐慌への根本的な対策を行いませんでした。
・・・というのも、当時は「経済っていうのはアダム=スミスがいう『神の見えざる手』で自動調整されるはずだから、政府は経済活動に余計な手出しをしなくてOK!」っていう考え方があったからです。
※この考え方のことを自由放任主義(レッセ=フェール)と言います。
実際に、世界恐慌より以前の不況は、時間が経てば自然と回復していました。
1932年、フーヴァー大統領は、アメリカ経済を立て直せなかったこともあり選挙で大敗。そして1933年に新たに大統領になったのが、ニューディール政策を実施したフランクリン=ローズヴェルトでした。
ニューディール政策の内容
ローズヴェルトは、フーヴァーとは正反対に『政府がもっと経済に介入して景気を立て直すべきだ!』と考えて、大統領に就任するとすぐに、多岐にわたる政策を断行しました。
※この多岐にわたる政策のことをまとめてニューディール政策と言います。
ではさっそく!ニューディール政策の内容1つ1つ順番に紹介していくね。
農作物の価格を調整【農業調整法】
大不況で農産物が売れずに価格が暴落して、農家の人たちが生計を立てられなくなってしまったため、政府は農産物の生産に規制を設けました。
そして、規制を設けるために制定された法律のことを農業調整法と言います。
・農業(Agricultural)のA
・調整(Adjustment) のA
・法律(Act)のA
の3つのAをとって、農業調整法はAAAとも呼ばれています。
政府は、農産物の生産量が増えすぎないよう統制することで、「売れないから安売り!」となるのを防いで農産物の価格が下がらないようにしました。
工業製品の価格を調整【全国産業復興法】
工業製品の価格が下がりすぎないようにするため、全国産業復興法という法律も制定されました。
AAAの工業版です。
・全国(National)のN
・産業(Industrial)のI
・復興(Recovery)のR
・法律(Act)のA
の4文字をとって、全国産業復興法はNIRAとも呼ばれています。
全国産業復興法は、企業同士がこんな話し合いをすることを認めました。
企業同士が競争すると、商品をたくさん売るために商品価格がどんどん下がる。すると会社は全然儲からない。
それならいっそ、競争なんてやめよーぜ。
同じ商品を売っている会社同士で話し合って、みんな同じような価格で売ったほうがみんな儲かるしWINーWINじゃね?
そうだな。
そうすれば高い値段でもみんな商品を買わざるを得なくなるし、がっぽり儲かるな。
このように、企業同士がグルになって値下げ競争をやめてしまうことをカルテルと言います。
カルテルは、企業が楽に儲けられる反面、企業の成長を阻害し、消費者にとっては商品を不当に高い値段で買わされてしまうことになるので、多くの国で禁止されています。(日本でも独占禁止法という法律で禁止されています。)
ローズヴェルトは、カルテルのデメリットを承知の上で、それよりも会社や会社で働く労働者を守ることを選んだんた。
労働者の立場を守る【ワグナー法】
大不況による
・労働者の不当解雇
・不当な低賃金
などを是正するため、労働者の立場を守るワグナー法という法律が制定されました。
労働者に団結権・団体交渉権を認めて、労働者が処遇改善などの要望を雇い主(資本家)にしっかりと伝えられる環境を整えました。
すると、全国各地で労働組合の結成されるようになり、1938年には全国規模の組織である産業別組織会議が結成されました。
※産業別組織会議は英語で「Congress of Industrial Organization」であり、略してCIOとも呼ばれています。
公共事業を増やす【テネシー川流域開発公社など】
大不況で仕事が減ってリストラが行われるようになるとアメリカ政府はこんなことを考えます。
仕事が減ったなら、政府が金を使いまくってみんなの仕事をつくってやんよ!!
そこでアメリカ政府は、公共事業を請け負う組織(公社)を設立して、その組織にジャブジャブお金を投じて公共事業を増やし、新たな仕事を産み出すことにしたのです。
政府が設立した組織の中で、教科書にも載っている有名なものがテネシー川流域開発公社です。
テネシー渓谷(Tennessee Valley)のTV
公社(Authority)のA
の3文字を採って、テネシー川流域開発公社はTVAとも呼ばれています。
テネシー川流域開発公社は、政府のお金を使ってテネシー川流域でたくさんの公共事業を実施して、リストラされた人たちの就職先の受け皿となりました。
政府のお金が公共事業を通じてアメリカ国内に流通することで、世の中のお金の流れ(マネー=ストック)を活性化させる狙いもあったよ!
金本位制からの離脱
アメリカ政府は、アメリカ経済を立て直すため、金本位制からの離脱を決めました。
金本位制からの離脱は、経済立て直しにどんな効果があるの?
金本位制からの離脱は、アメリカ経済に大きく2つのメリットがありました。
メリット1:お金をたくさん刷れる
金本位制はざっくり言えば『通貨を金(ゴールド)と交換できるようにして通貨の信頼性をUPさせるけど、金の保有量以上に通貨を発行することはできない!』って制度です。
※金本位制については、別記事でも解説しているので「金本位制ってなに?」って方は合わせて読んでみてください!
一方、ニューディール政策は物価を下げないようにしたり、公共事業のために政府がお金を使ったり、とにかくアメリカ通貨(ドル)がたくさん必要な政策ばかりでした。
通貨発行量が制限される金本位制は、お金をたくさん使うニューディール政策とは水と油のような関係だったんだ。
メリット2:アメリカから国外へ金が流出するのを防げる
実は1931年、アメリカより一足早く、大国のイギリスが金本位制からの離脱を決めていました。
つまり、イギリス通貨(ポンド)を手に入れても金と交換してくれないわけです。
そこで金(ゴールド)を求めた世界中の人たちは、金をたっぷり持っているもう1つの大国、アメリカに注目します。
大不況で世の中どうなるかわからない。もしかするといろんな国の通貨が価値を失うことだってある。
そんな時のために、今のうちに金と交換できる大国アメリカの通貨(ドル)買いまくるんだ!
すると、国外勢がドルを大量に買った結果、アメリカは金を国外のドルと交換せざるを得なくなり、金が流出する事態となりました。
そこでアメリカは自国の金(ゴールド)を守るためイギリスに続き金本位制からの離脱することにしたわけです。
ニューディール政策まとめ
以上、ローズヴェルトが実施したニューディール政策の主要な政策を紹介してみました。
まとめるとこんな感じになります↓↓
ニューディール政策の成果
ここまでたくさん説明してきたニューディール政策ですが・・・、実はニューディール政策の効果はイマイチでした。
アメリカ経済の立て直しに一定の効果はあったものの、ニューディール政策には大不況から抜け出せるほどの効力はなかったのです。
アメリカ経済が大不況を脱するのは、第二次世界大戦が始まって軍事産業が活発になってからになります。
なんとなく『ニューディール政策は大成果で大不況を脱した!』と考えがちだけど、実際のところは効果はあったけどイマイチだった・・・ってところは勘違いしやすいので気を付けましょう!
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