労働基本権とは?簡単にわかりやすく解説するよ【勤労権と労働三権をバッチリ理解しよう!】

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もぐたろう
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今回は、憲法で保証されている労働者の権利「労働基本権」について、わかりやすく丁寧に解説していくよ!

この記事を読んでわかること
  • 労働基本権ってそもそも何?
  • 勤労権・労働三権ってどんな内容?
  • 労働三権である団結権・団体交渉権・団体行動権ってなに?
  • 労働基本権を実現するために、日本にはどんな法律があるの?
もぐたろう
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今回の内容は、学生はもちろん、会社に雇われている社会人も絶対に知っておくべき内容なので、この記事を通して理解を深めてもらえれば幸いです!

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労働基本権ってなに?

労働基本権とは、日本国憲法で定める労働者の権利のこと。

労働基本権は、大きく勤労権・労働三権の2つに分けられ、

労働三権はさらに細かく団結権・団体交渉権・団体行動権の3つの権利に分けることができます。

そして、憲法で定めた労働基本権を守るため、日本にはたくさんの法律がありますが、その中で特に重要な3つの法律、労働基準法・労働組合法・労働関係調整法のことを労働三法と言います。

図解するとこんな感じです。

労働三権の図解

というわけで、まずは勤労権と労働三権についてお話していきます。

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働く人を守る「勤労権」

働く人々が極端な労働や低い立場を強制されないためのルールとして、憲法第27条に絶対に守るべき基本的な労働条件が書かれています。ここに書かれている内容が勤労権と呼ばれるものです。

日本国憲法第27条

第1項 すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負ふ。

第2項 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

第3項 児童は、これを酷使してはならない。

まず第1項で、国民には仕事をする「権利」がある・・・と憲法は言っています。

おっしゃー!たくさん仕事して稼ぐぞー!!

って働こうとする人を、国が「いやお前はダメだ。働くな。」と意味もなく規制してはいけません。国民の勤労権を侵害することになるからです。

働きたいけど、働く先が見つからないんだが・・・

って働こうと思っても働けない人に対しては、国はそれを支援します。国民の勤労権を守るためです。

憲法第27条では権利と同時に、国民には働く「義務」があるとも言っています。これは、「健康で働ける人は働かないとダメだよ」ってことを言っています。

ただし、だからと言ってニートだったり不労収入を得ているような「働けるのに働かない人」が処罰されることはありません。義務と言っても実際には、「働こうとする気持ちを忘れるな!」という精神論に近いのが勤労の義務です。

次に第2項の話。これはわかりやすいです。

私のお給料、いくらぐらいでしょうかね社長!?

社長
社長

ん?君のお給料はね、1ヶ月5万円だ。

安い?だって社畜なんだから当たり前だろwww

えっ、それじゃあ家賃すら払えないし生活できないですよ!

こんなに一生懸命働いてるのに・・・。

社長
社長

社畜のくせに文句を言うなよ。

労働条件はな、俺が自由に決めるんだから逆らうんじゃねーよww

こんなことがあったら働く側は最悪です。労働者が無茶苦茶な条件で働かされないようにしましょ!っていうのが、第2項で言っていることです。具体的なルールは法律で定めることになっています。

基本的に労働者は雇用主より弱い立場なので、労働者を守るルールが必要です。そこで、労働者を守るさらなるルールを定めたのが労働三権と呼ばれる3つのルールです。

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労働者の地位を守る「労働三権」

労働三権は、日本国憲法28条で次のように定められています。

日本国憲法第28条

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

28条はとても短い条文ですが、その中には3つの権利が書かれています。

  • 勤労者が団結する権利:団結権
  • 勤労者が団体交渉する権利:団体交渉権
  • 勤労者が団体行動する権利:団体行動権(争議権)

この3つの権利のことを労働三権って言います。

次に「団結権」「団体交渉権」「団体行動権(争議権)」の3つの権利がどんな権利なのか、具体的に見ていきます!

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団結権

労働者が雇用主へ意見するために、団結できる権利です。

社員
社員

社長!

最近、サービス残業ばっかりでもう耐えれません。せめて、残業代ぐらいちゃんと支払ってくださいよ!!

社長
社長

は?俺に歯向かうの?

いいよ。お前はクビな。お前の変わりはいくらでもいるからなww

社員
社員

そんな・・・(涙

労働者の立場は弱いです。一人で雇用主(社長とか)に交渉しようとしても、基本的には敵いません。

しかし、労働者が協力したらどうでしょう。

社員
社員

給料が安すぎる!

社長、もっと給料あげてくれないと、私たち全員会社を辞めますよ!

社長
社長

ちっ、ウルセェな・・・。

でも、全員一気に辞められたら会社の仕事が進まなくなるし、ここは妥協するか・・・。

社長
社長

うーん、わかった!

みんな頑張ってるしお給料UPだ!

社員
社員

おっしゃ!給料UPだー!

こんな風に、労働者が協力(団結)することで雇用主に意見を言いやすくなります。

憲法では、労働者が団結するための組織「労働組合ろうどうくみあい」を結成することを認めています。

ちなみに、団結権が憲法に書かれていないと、こんなことができてしまいます。

社長
社長

社畜どもが集まるとメンドクセーから、俺の会社は労働組合を結成することを禁止しよーっとww

上の社長は完全に憲法違反です。

実際のところ、労働組合を結成しようとする人を左遷させたり、パワハラで追い詰める・・・といったような、嫌がらせを通じて労働組合を結成しにくくせさている会社は存在するので働き先を見つける際に注意が必要です。

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団体交渉権

しかし、団結権だけでは労働者は守れません。

労働組合
労働組合

社長!

私たちは給料UPを要求します!

社長
社長

うーん、無理かなぁ・・・

(こいつら、クビになったら生活に困るだろうし、うやむやに終わらせれば諦めるだろww)

労働組合
労働組合

そんな・・・

私たち本当に辛いんです。もう少しちゃんと社長と話し合いできませんか?

社長
社長

うーん、申し訳ない!忙しいから無理かな・・・。まぁ、諦めてくれww

こんな風に、雇用主に話し合い(交渉)を拒否されてしまうと、労働組合は力を発揮できません。

これを防ぐのが団体交渉権です。労働組合には雇用主と交渉する権利があります。

雇用主が理由なしに労働組合の交渉を拒むことは、この団体交渉権を侵害することになるので、労働組合法という法律で禁止されています。

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団体行動権(争議権)

雇用主と交渉する権利を得たとしても、その交渉内容があまりにも理不尽なこともあります。

労働組合
労働組合

給料をUPしろー!

わかったわかった。団体交渉権もあるし、交渉に応じよう。

私はね、給料UPはしても良いと思っているんだ。だが、条件がある。給料UPの代わりにお前ら全員、ど田舎の支店に転勤してもらうからww

(こう言えば、簡単に給料UPなんて要求しなくなるだろww)

労働組合
労働組合

なんだそれ!理不尽だぞ!

真面目に交渉しろー!

こうなった時に、労働組合が実力行使で雇用主に訴える権利が団体行動権です。争議権とも言います。

団体行動権とは、具体的には労働者が雇用主に訴えるために仕事を集団ボイコットするストライキ(同盟罷業)の権利を言います。

労働組合
労働組合

わかりました・・・。

社長がそう言うのなら、私たち全員、社長がちゃんと交渉に応じてくれるまで、仕事をしません。

では。

おいおい!ちょっと待て!

今、大きい仕事が動いてるんだ。そんなことされたら会社が潰れちまう。

わかった!わかったから、交渉に応じよう!真面目に考えるから!

ストライキの効果は絶大です。

ストライキによって労働者の給料は減りますが、仕事が止まることによる雇用主へのダメージはそれを遥かに上回ります。

労働者を守る最終手段として、憲法では団体行動権を定めているのです。

社長
社長

ストライキに参加したやつ、全員クビな

といった雇用主がストライキに介入する行為は「不当労働行為ふとうろうどうこうい」と呼ばれ、団体行動権の侵害行為として禁止されています。

おまけに、ストライキに参加した人々が刑罰を受けることもない(刑事免責し、ストライキによって生じた仕事の損害を賠償請求されることもありません(民事免責

労働組合
労働組合

社長が、ストライキを邪魔する不当労働行為をしたら憲法違反!

そして、私たちはストライキをしても刑罰を免れる刑事免責と、仕事の損害賠償を免れる民事免責によって守られている。

憲法が私たちを不当な労働から守ってくれる・・・!!

ストライキは、労働者・雇用主がダメージを受けるだけでなく、その会社のサービスや商品を利用する人々、その会社との取引先など広範な人々に大きな影響を与えます。

なので、特に影響の大きい公務員だけは団体行動権の行使(ストライキをすること)を禁止されています。

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労働三権を支える「労働三法」

ここまで紹介した労働基本権を守るため、日本には数多くの法律が存在します。その中でも特に重要な3つの法律のことを労働三法と言います。

  • 労働基準法ろうどうきじゅんほう
  • 労働組合法ろうどうくみあいほう
  • 労働関係調整法ろうどうかんけいちょうせいほう

最後に、この労働三法についてサラッとですが紹介しておきます。

労働基準法

先ほど紹介した憲法第27条第2項の内容を覚えていますか?

日本国憲法第27条第2項

第2項 賃金、就業時間、休息その他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める。

です。ここに書いてある「法律」の中でも最も重要なのが、労働基準法です。

賃金・労働時間・休日など労働条件の最低基準を決めたもので、正社員にかかわらず、パートやアルバイト、派遣社員などすべての働く人に適用されます。 

労働基準法があることで、労働者は過酷な労働条件から守られているのです。ちなみに私もこの法律の恩恵を受けています。

労働組合法

労働三権を守るための法律です。特に労働組合の結成(団結権)や労働組合の交渉(団体交渉権)についてのルールが書かれています。

雇用主が労働組合の交渉を邪魔する行為(不当労働行為)を禁止しているのも、この労働組合法です。

労働関係調整法

ストライキの事前の予防や、雇用主と労働組合の対立が激化したときの解決手段を定めています。先ほども述べたように、ストライキは多くの人が被害を受けるため、頻繁に起きることは良いことではありません。

対立の解決手段として、行政機関である労働委員会と呼ばれる組織によるあっせんや調停、仲裁などの手続きを定めています。つまり、第三者に間に入ってもらって仲直りするための法律です。

この記事で紹介した労働基本権は、日本に住む人なら絶対知っておくべき権利です。

労働基本権の定められている日本国憲法は戦後の1947年に制定されました。それ以前の日本には、大日本帝国憲法と呼ばれる憲法がありましたが、大日本帝国憲法には労働者を守るための権利はありません。

権利がないどころか、昔の日本では労働組合の結成は禁止。ストライキは違法行為であり、警察が動員されて取り押さえられるほどでした。

仕事や生産をストップして国の発展を邪魔し、政府に抵抗する社会主義運動とも結びつく労働運動は国にとって悪に映ったからです。

何が言いたいかというと、今みたいに労働者の権利が守られている状況が当たり前ではないってことです。日本国憲法に労働基本権が定められているからこそ、労働者は安心して働くことができるのです。

当たり前すぎて実感するのが難しいですが、だからこそ、その労働基本権に一度目を向けてみることが大切です。

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この記事を書いた人
もぐたろう

教育系歴史ブロガー。
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