今回は1866年に調印された改税約書についてわかりやすく解説していきます。
教科書では改税約書についてこんな風に書かれています。
この記事では以下の点を中心に、改税約書について解説していきます。
改税約書調印までの流れ
最初に時代の流れを見ておきましょう。
- 1863年長州藩、下関を通る外国船を砲撃
- 1864年7月
四国(イギリス・アメリカ・フランス・オランダ)は幕府に対して巨額の賠償金を請求。
- 1865年9月イギリスなどが賠償金を払えない幕府に3つ要求を迫る。
賠償金の2/3の免除を条件に、幕府に以下の要求を突きつける
勅許:天皇が許可をすること
- 1865年10月天皇、条約締結を勅許する(条件2を受け入れ)
- 1866年5月改税約書調印(条件3を受け入れ)←この記事はココ!
- 1867年兵庫港、開港(条件1を受け入れ)
と言う感じで、巨額の賠償金に首の回らなくなった幕府が止むを得ず外国と結んだのが改税約書です。
条件2の「天皇勅許」が少しわかりにくいので補足説明しておきます。
日本と外国との貿易は1858年に日米修好通商条約を結んだことから始まります。この条約は天皇の意向を無視して幕府が独断で結んだものでした。
諸外国は最初の頃、「日本で一番権力を持っているのは江戸幕府」と考えていました。しかし、日本について調査してみるとどうも違う。天皇の影響力がメチャクチャ重要であることを知り、天皇に条約を認めさせるよう迫ります。日本のトップである天皇が条約締結を認めない限り、日本が条約を破棄するかもしれないからです。
こうして1865年10月、天皇は苦渋の決断で条約締結を認めることになりました。
改税約書の内容
改税約書の内容は大きく3つの内容から構成されています。
この中でわかりにくいのが2番の内容です。というわけで、もう少し掘り下げて解説していきます。
改税約書からわかる経済の話
改税約書が調印されるまでの輸出入の関税は、
ポテトチップス1袋100円 × 20% = 20円
と商品の金額に税率をかけて税金を計算していました。今現在の日本の多くの税金と同じです。金額を基づいて計算する税金のことを従価税と言います。
しかし税約書調印後は、過去数年のポテチの金額の平均を計算して量ごとに税金の額が決められることになりました。
うーん、ポテチの平均金額は一袋80円だったから、これに5%かけて4円が税金だな。そして、これからはポテチの金額がいくら変動しようとも『ポテチ一袋=4円の税金』な。
この仕組みを従量税と言います。
つまり、お店で売っているポテチが200円になっても500円になっても、税金は4円のまま。これで問題が起こるのは日本から外国に物を輸出する時です。
例えば、日本オリジナル商品の抹茶ポテチが外国にバカ売れしたため、これを輸出するとします。この時、抹茶ポテチは重量税で
抹茶ポテト1袋あたり税金5円
と決められていたとしましょう。
最初、この抹茶ポテチは1袋100円で売っていました。これなら従量税でも従価税でも税率5%なら税金は5円です。(100円×5%=5円)
ところが、
もっと値段あげても売れるから、値上げしたろ
とか、
物価が上がって何を買うにも高いから、商品の値段を上げて利益を増やさなきゃ生活が苦しいなぁ・・・。
のような感じで、抹茶ポテチ1袋を思い切って300円に値上げします。この時に発生する輸出税を従量税と従価税でそれぞれ計算すると以下のようになります。
となります。
輸出税は「外国が日本の商品を買うために発生する税金」なので、外国は従価税なら15円払うところを従量税なら5円で済んで、10円得したことになります。
逆に考えれば日本は10円損したことになります。抹茶ポテチの値段が上がれば上がるほど、日本は大きな損失を被ることになるわけです。
上の具体例はあくまで「日本の商品の物価が上がったら・・・」の話です。物価上昇(インフレーション)さえ起こらなければ日本に不利な問題は起こりません。
しかし、この頃の日本は諸外国との貿易の影響でメチャクチャ物価が高騰していました。つまりに、日本は大損する立場にあったのです。もちろん、諸外国はこれをわかった上で改税約書を日本に押し付けています・・・。
幕府は物価の急騰を抑えるため、万延貨幣改鋳や五品江戸廻令などの経済政策を打ち出しますが、効果なし。最悪な状況の中、改税約書は調印され、日本は貿易上ますます不利な立場に置かれることとなりました。
上の例は輸出の話でしたが、輸入でも似た現象が起こります。
輸入税は「外国が日本へ物を売るときに、外国が日本に支払う税金」なので、100円の物を売ろうとしたら+5円を日本に納めなければいけません。
しかし、外国がクッキーを高値で売りつけるようになると・・・
となり、従量税の方が外国が支払う税金が安くなります。
日本は物価上昇が進み、輸入品の値段を上げても買ってくれる人が多くいたので、「商品を値上げしたら、税金がお得になる」という仕組みを有効活用できました。
つまり、日本が物価上昇を続ける限り、従量税を採用するだけで、外国は輸入・輸出ともに税金の負担が減って、お得に商売することができるわけです。
従量税の2つのメリット
諸外国が従量税を採用したのは以下の2つのメリットがあったからです。
従価税だと、日本の関税を取り仕切る役人たちは権力を行使して、こんなことができました。
この商品本当は200円なんだけど、外国にあまり売りたくないから500円ってことにして、買いにくいようにしたろ。
(値段なんて日々変動するんだから、テキトーにやってもバレないだろww)
ところが、従量税だとこれができなくなります。なぜなら、商品の値段が200円でも500円でもどんな金額でも税額は定額だからです。従量税で同じことをするには量を誤魔化すしかありませんが、
この飴玉10個あるけど、100個ってことにして売ったろww
というのは無理があります。量を誤魔化すのは無理があります。
というわけで、従量税への移行は、外国から見れば「日本の役人が邪魔してこないわ、負担少なめで商売できるわで最高の制度!」ということになります。
この悪魔の税制度は、アロー戦争で清に勝利したイギリス・フランスが発案し、清に押し付けたのが始まりでした。欧米諸国はこれを日本にも押し付けようと改税約書の調印を求めたのです。
改税約書まとめ
最後に改税約書の3つの内容について簡単にまとめます。
日本への輸入税を減税する(各国の平均20% → 一律5%)
今まで1000円の商品を外国から日本へ売り込もうとしたら、その20%の200円が追加に必要だったのが50円追加で良くなります。
今までより日本にモノを売り込みやすくなったわけです。
輸出入ともに従価税から従量税へ
従量税導入によって諸外国は、
・少ない税金で日本で商売ができる
・日本の役人が不正をできない
の2つのメリットを享受。日本のものを安く購入できるようになりました。
自由貿易を妨害する日本の規定を撤廃
日本の貿易妨害が無効化され、外国人は、上の2つの条件も重なって日本で好き放題商売できるようになりました。
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