今回は、701年に制定された大宝律令についてわかりやすく丁寧に解説していきます。
最初に大宝律令の概要を載せておきます↓
701年、刑部親王や藤原不比等らによって大宝律令が完成して、律令制度による政治の仕組みが整った。
律は今日の刑法にあたり、令は行政組織・官吏の勤務規定や人民の租税・労役などの規定のことである。
大宝律令が制定された理由
なぜ大宝律令は制定されたのか？結論から言うと、「大国である唐の制度をパクったから」です。
少しだけ、飛鳥時代の歴史の話をします。
飛鳥時代、日本は激しい国際情勢の波に飲み込まれます。
そんな中、日本は不測の事態（戦争）に備えて、各地の有力者がバラバラに動くのではなく、天皇をリーダーとして統率のとれた国を目指しました。（専門用語で中央集権国家とも言います）
663年、実際に日本は朝鮮で起こったに巻き込まれ、白村江の戦いで大敗北を喫しています。
「中央集権国家を目指す」と言っても、国の仕組みを変えることは簡単ではありません。そこで日本は、中央集権国家で大国でもあった唐に注目します。
そうだ！唐の制度パクれば、日本を中央集権国家にできるぞ！
唐の制度をパクった結果、689年に飛鳥浄御原令という法律が出来上がります。
・・・が、飛鳥浄御原令の内容には足りない部分がいくつもありました。
この飛鳥浄御原令を完成形にまで高めたものが701年に制定された大宝律令となります。藤原不比等という人物が中心となる作られました。
大宝律令の内容
大宝律令は簡単に言うと「日本を中央集権国家にするための、様々なルールや決まり事が書かれているもの」です。
それぞれ、具体的にどんな内容が書かれているのか見ていきます。
朝廷組織の仕組み
朝廷の組織は大きく神祇官と太政官という２つの組織に別れています。（他にも細かい組織がありますがここでは省略します）
神祇官
神祇官は、神々に関する儀式・祭祀の仕事をする部署です。
天皇が日本国のトップに君臨する理由の１つに、「天皇は太陽神である天照大神の子孫だから」というのがあります。
なので、神々に関する儀式・祭祀は非常に重要なものと考えられていて、それ専用の部署が設けられました。
太政官
実際に、いろんな政策を実行する部署です。今の日本でいう国会議員と官僚を合体させたような仕事です。
太政官の中には、さらに細かな官職や部署があります。
太政官で一番権力を持っている官職は大臣です。
太政大臣は必要な場合にのみ置かれる少し特殊な官職で、実際は左大臣が最高権力者であることがほとんどでした。
大臣の次に偉いのが大納言。そして大納言の下には少納言・左弁官・右弁官という官職が続きます。
まとめるとこんな感じ↓
大宝律令が制定された後少し経って、中納言という官職も追加されます。
この７つの役職に就いている人のことを公卿と呼び、国の政策は公卿たちが話し合って考えられ、最終的に天皇が決定を下します。
左弁官と右弁官には、省と呼ばれる部署がぶら下がっています。
平安時代の２大女流作家に紫式部と清少納言がいますが、この２人の名前、実は本名ではありません。
紫式部は父が式部省の人だったので紫「式部」と呼ばれ、清少納言は父が少納言だったので、清「少納言」と呼ばれているだけなんです。
昔は本名を呼ぶ習慣がなかったので、この２人の本名は今もよくわかっていません。
地方組織の仕組み
地方の組織は、国司ー郡司ー里長という３段構成です。
国司は地方統治に絶大な権力を持っており、地方のボスとして君臨します。
ただし、特に重要な以下の３地域は、特殊な制度が採用されます。
平城京は平城京を左右に分けて、左京職と右京職が置かれ、
九州北部には、太宰府という組織が、
摂津国には摂津職という組織がそれぞれ置かれました。
官職や身分
官職は、四等官制という制度が導入されました。
上で紹介したように、大宝律令では、太政官や神祇官、国司や太宰府などいろんな組織のことが書かれています。
それぞれの官職の中にさらに４つの上下関係を作りましょう！っていうのが四等官制の仕組みです。これも唐の制度を参考に導入されました。
具体的には以下の表のようなイメージです。（覚える必要はありません）
| 官職 | 各省 | 太宰府 | 国司 |
| かみ（長官） | 卿 | 帥 | 守 |
| すけ（次官） | 輔 | 弐 | 介 |
| じょう（判官） | 丞 | 監 | 掾 |
| さかん（主典） | 録 | 典 | 目 |
太宰府のトップは「帥」、国司のトップは「守」のように、それぞれの部署には４つの序列が設けられました。
官職と四等官制を組み合わせることで、「あの人は刑部省の卿だ！」とか「そっちの人は、伊予国の介だ！」とか、「どの部署のどんな官職か？」を表現できるようになります。
そして、その官職を決めるときに目安とされたのが位階という身分です。
・・・六位・五位・四位・三位・二位・一位と数字が小さくなるほど身分が高く、平安時代によく登場する貴族というのは五位以上の身分の人たちのことを言います。
この位階が高い人ほど、より良い官職に就くことができます。このように位階と官職が連動する仕組みのことを官位相当制と言います。
五位以上の身分（貴族）は、自分の身分を子どもに引き継ぐことが可能だったので（蔭位の制）、貴族たちは世襲でより偉い官職に就くことができました。
税金のこと
租・庸・調・雑徭などがあります。詳しくは以下の記事で紹介しているのでここでは省略します。
刑罰のこと
ここまでの話は大宝律令の「令」の部分のお話でした。
次は「律」の部分、刑罰のお話です。
律には大きく５つの刑罰が定められていました。
大宝律令まとめ
以上、大宝律令についてまとめてみました。
法律というのはメンテナンスが必要です。時代が変われば、それに対応するため法律も変えないといけないのです。
なので、大宝律令も作ってはい終わり！ってことにはならず、718年には大宝律令を修正する内容の養老律令がまとめられ、757年に適用されています。
さらに平安時代には大宝律令を変化に対応させるために制定されたルール集である格式が制定されますが、平安時代中期にはそれも無くなります。
大宝律令は次第に形骸化し、平安時代末期に院政が始まり、鎌倉時代に武士の時代が到来すると、その影をすっかり潜めてしまうことになります。
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