今回は、資本主義・社会主義・共産主義を高校生向けにわかりやすく丁寧に解説するよ。
これらの言葉は、政治・経済や歴史(近代・現代)を知る上で、欠かせない言葉なので、言葉の意味をしっかりと確認しておきましょう!
資本主義・社会主義・共産主義を、歴史の流れを追う形で紹介していきます。
最初に登場したのは資本主義
資本主義・社会主義・共産主義のうち、最初に登場したのは資本主義です。18世紀にヨーロッパで登場しました。
資本主義が生まれた要因は大きく2つあります。
今では当たり前の「所有権」
中世のヨーロッパでは長い間、王権神授説という思想がありました。簡単にいうと「王の権利は神から与えられたものだから、民は王の命令に従わなければならない」という思想です。
王権神授説に基づけば、王が民を支配するのは当たり前のこと。そして、支配されている民の所有物は、当然王のものとなります。つまり、「これは私の家!」とか「これは私の車!」という明確な概念がなかったのです。ずーっと住んでいた家も、王の一声で住めなくなることだってあります。
この王による支配(絶対王政)に不満を持った人々によって起こったのがヨーロッパ各地で起こった市民革命です。一番有名なのはフランス革命でしょう。
フランス革命によって、フランスの絶対王政が崩壊すると、「全ては王の物」という王権神授説の思想も失われ、「所有権というのは個人に与えられるべきものだ!」という思想がヨーロッパの主流となりました。
こうして、人々は土地・建物など多様な物を所有できるようになります。
今では当たり前のことも、当時は当たり前ではなかったんだね・・・。
産業革命+所有権=資本主義
フランス革命があったのと同じ18世紀半ば、イギリスでは産業革命が起こり、織物や紡績を中心にものづくりの機械化が進みました。
織物と紡績の違いを参考までに。
織物:糸を編んで布地を作ること
紡績:絹や麻などから織物に必要な糸を作ること
そして、機械化が進むと、機械を「所有」している者(資本家)が低コストで大量の製品を作れるようになり、大儲けするようになりました。逆に、昔のように手作業で製品を作っている人たちは、機械で作られた商品に価格競争で勝つことができず職を失います。
しかし、機械があるだけで大儲けできるわけではありません。機械を動かすには人が必要です。そこで、資本家の人々は機械を動かすため、労働者を雇うようになりました。
こうして、世の中には工場や機械などの資本を持つ「資本家」と、資本家の下で働く「労働者」の2つの階級が生まれ、経済は資本家を中心に回るようになります。
ここまでをまとめると、
市民革命で、個人の所有権が生まれる
+
産業革命によって、機械を使えば低コストで大量の製品を作れるようになる
=工場・機械を所有している者(資本家)が富を築ける!
ということです。
このような資本家を中心とした世の中の仕組みのことを資本主義と言います。(今の日本も資本主義です。)
資本主義は、国家(イギリス)にも受け入れられ、さらにイギリス以外の国にも広がっていきます。
なぜ国が資本主義を受け入れたかというと、「資本主義によって資本家が富を築くことは、国家の繁栄にも繋がるんだよ!」という理論があったからです。
この理論を考え出したのはイギリスのアダム=スミスという人物。「国富論」という本を書いて、自らの理論を説きました。
人々が、自分のために利益を求めて活動することは、本人が意図せずとも国全体の経済発展に貢献することになるんだよ。
なぜかって?それは自然の法則(見えざる手)が、そのように導くからさ!
資本主義の問題点を解決する社会主義
国が富むなら資本主義って、良い仕組みなんだね!
と思うかもしれませんが、資本主義を採用していくうちに、いくつかの問題もわかってきます。
19世紀に入ると、資本主義の問題に関する独自の理論を発表した人物がいます。それがドイツのカール=マルクスという男です。
マルクスは、自分の理論を「資本論」という著書に記しました。
資本主義は、貧富の差の拡大を前提にしているのが問題なのだ。
貧富の差が拡大し続ければ、いずれ不満を持つ労働者階級(プロレタリアート)が革命を起こすことは必須で、そうなると資本家階級(ブルジョワシー)の人たちが滅ぶことになる。つまり、資本主義は革命が起こることが前提の不安定な制度なんだ。
貧富の差とは、言い換えると資本の保有量の差である。なので、貧富の差の拡大を止めるには、そもそも個人の所有権など無くせばいい。
昔のような絶対王政に戻れと言っているのではない。資本を社会全体で共有・管理できるような、資本主義に代わる新しい仕組みが必要なのだ。そうすれば、資本の量による格差は生まれないし、格差がなければ革命も起きず、理想の社会システムが出来上がるはず・・・!!
今の日本は資本主義です。その問題点を説いた資本論には、世の中を生きる重要なエッセンス(特に労働について)が含まれています。上で紹介しているような漫画でも良いので、知識を身につけておくことを強くお勧めします。
このマルクスの思想に基づき、国家が個人に代わって資本を共有・管理して公平・公正、そして計画的に運用しようとする仕組みのことを社会主義と言います。
社会主義の進化系「共産主義」
社会主義には1つ難しい矛盾が存在します。
マルクスの思想だと、個人の所有権を否定しているのに、国家が全部の資本を管理しているわ。国家が全ての所有権を持っているみたいで何かおかしくない?
資本をみんなで共有・管理するなら、一括管理する『国家』そのものがいらないはず。資本を誰の手にも集中させず、みんなで共有・管理できる別の方法を採用すべきよ。
このような思想のことを共産主義と言います。
一般的に、共産主義はマルクスの思想の最終形だと言われています。さらに、上で紹介した社会主義は、共産主義に移行するための事前準備に過ぎない・・・と考えます。
いきなり「国家はいらない!」というのはあまりに過激なので、まずは社会主義に慣れてから共産主義へ移行しようというわけですね。
社会主義の進化版が共産主義というわけです。
社会主義と共産主義の違いは曖昧
実際に「社会主義」「共産主義」という言葉が使われる場合、この2つ言葉の違いはかなり曖昧です。
文脈によって、社会主義が共産主義と同じ意味で使われることが多々あります。さらに、社会主義・共産主義は、その中でさらに細かな思想に分かれており、言葉を使う人の思想によっても言葉の意味が大きく変わってしまいます。
なので、とりあえず、以下の2点を抑えておけばOKです。
資本主義・社会主義・共産主義まとめ
- STEP1フランス革命・産業革命(18世紀後半)
フランス革命により個人の所有権(私的所有権)が登場し、産業革命により機械設備を使った商品の大量生産体制が整う。
- STEP2資本主義が始まる(18世紀後半)
機械設備などの資本を所有する者(資本家)が、商品の大量生産で富を得るようになる。
一方、資本を持たない者は資本家に雇われて労働者として工場などで働き、生計を立てるようになる。
こうして資本家と労働者から成る資本主義が誕生する。
- STEP3資本主義の問題点が浮上する
資本主義には、資本を持つ者がますます富んで、資本を持たない者はどんどん貧しくなる、という貧富の差を拡大させる性質があることが判明。
また、アダム=スミスの「自分の利益を追い求めていれば、国も豊かになる」という理論も完全ではなく、周期的に不況がやってくることがわかった。
- STEP4マルクスが社会・共産主義を発案(19世紀後半)
カール=マルクスが、資本論という著書で資本主義の問題点を解決する方法を提案する。
マルクスは、貧富の差の拡大を前提とした資本主義はいずれ革命によって崩壊すると考え、「個人の資本所有をやめて、社会全体で資本を共有・管理すれば、貧富の差や不況が起こらず安定した社会になるよね」と考えました。
このような考え方のことを共産主義と言います。
さらに、資本主義から共産主義への移行はあまりに急すぎるので、「国家が資本を管理する社会主義を経てから、共産主義に移行するのが安定してて良いよね」という考え方も生まれました。
- STEP5社会主義国家が「ソビエト社会主義共和国連邦」が登場(1922年)
1917年にロシア革命(10月革命)によってロシア帝国が崩壊。1922年、マルクスの思想に基づく社会主義の国が生まれました。
通称「ソ連」。共産主義へ移行することができず、1991年に崩壊してしまいました。
資本主義 | 資本階級(ブルジョワシー)と労働階級(プロレタリアート)から成る社会システム。 国を効率的に豊かにしてくれる反面、貧富の差が拡大しやすく、周期的に不景気に襲われる。 |
社会主義 | 国家が資本を管理する社会システム。 資本主義から共産主義へ安定的に移行する際に必要とされた社会システムで、実際に社会主義を採用する国もある。 |
共産主義 | 社会全体で資本を共有・管理する社会システム。 貧富の差がないマルクス思想の最終到達地点。 実現した国は今のところない。(そもそも、国による資本の保有も認めないので国家という概念がいらない。) |
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