今回は、平安文学の1つである竹取物語についてわかりやすく丁寧に解説していきます。
竹取物語の作者は不明
実は竹取物語、いつ・誰が書いたのかわかっていません。
わかっていることは大きく2つだけ。
1000年頃に書かれた平安文学の代表作「源氏物語」に竹取物語が登場することを踏まえると、大雑把に800〜900年代に書かれた作品ということになります。
竹取物語のあらすじ
竹取物語の構成は、以下のように内容を4つに分けるとわかりやすいです。
それぞれ、簡単に紹介していきます。
【第一部】かぐや姫の登場
竹取物語は、以下の原文から始まります。とても有名な文なので、知っている人も多いかもしれません。
今は昔、竹取の翁という者ありけり。野山にまじりて竹をとりつつ、よろづのことにつかいけり。
【現代語訳】
その昔、竹取のおじいさんと呼ばれる者がいた。野や山に入っては竹を取り、いろんなことに使っていた。
そんな竹取おじいさんが、とある日に光る竹を見つけました。
なんと!光る竹じゃ!中はどうなっておるのだ。
そこには、小さな小さな手のひらサイズの可愛い女の子が入っていました。これがかぐや姫です。
しかも、かぐや姫が見つかった後、黄金が入った竹が頻繁に見つかるようになり、おじいさんはあっという間に大金持ちになりました。
可愛い娘ができて、大金持ちにもなって、人生勝ち組じゃww
かぐや姫に惚れた5人の男
手のひらサイズだったかぐや姫は、人間とは思えない超スピードで大きくなり、絶世の美女へと成長していきました。
「竹の中から生まれる」「人間では考えられない成長速度」といったところから、かぐや姫が普通の人間ではないことがわかります。
「かぐや姫は何者なのか?」この謎は、竹取物語を読み進めていくとわかってきます。
すると、「かぐや姫は超美人!」って噂を嗅ぎつけた5人の男たちが、かぐや姫に求婚してきました。
私は、普通の人間ではないから結婚はできないわ。
求婚してくる5人の男はしつこいから、無理難題をふっかけて、心をへし折ることにするわ。
そして、かぐや姫はおじいさん経由で5人の男たちにこう言います。
5人とも、私への愛に優劣はありません。
だから、5人のうち私の望むものを手に入れた方と結婚することにしますわ。
かぐや姫はこう言って無理難題を要求し、男たちの心を挫こうとしました。
うおぉぉぉ!
かぐやちゃんのためなら、どんな物でも手に入れてやるぞー!!
・・・、結果は全員失敗。誰一人として、かぐや姫の無理難題を達成できず、5人のうち2人は命まで落としてしまいます。
・・・やりすぎたかしら?
かぐや姫と帝の恋物語
さらに、この5人に加えて次は帝(天皇)がかぐや姫を口説きにかかります。
帝はあの手この手で、かぐや姫を宮中に仕えさせて、自分の身近に置こうと考えますが、かぐや姫はこれを頑なに拒否します。
宮中に使えるなんていやよ。
もしお爺さまが、勝手に私を宮中に仕えさせるようなことがあれば、私は死んでやるわ!
宮中に仕えてくれれば、将来が約束されたようなものなんじゃが・・・。
でも、かぐや姫がそこまで拒否するなら、無理に仕えさせることも無理かのう。
しかし、拒否されればされるほど燃えるのがモテる男の性というもの。帝は、竹取おじいさんと打ち合わせをして、「アポ無し訪問でかぐや姫と無理矢理ご対面計画」を実行します。
そしてついに、帝はかぐや姫との対面を果たします。
帝「なんて美しい女性だ・・・。絶対に宮廷に連れていくぞ!」
しつこいわね。それは無理なのよ。
私は地上界の人間ではないの。だから、いくら帝が偉くても私を連れていくことはできませんわ。
こう言うと、かぐや姫の姿が突如として光となり消えてしまいました。・・・要するに帝はふられてしまったのですね。
この辺から恋愛要素に加えて、かぐや姫の謎が少しずつ解き明かされていきます。
かぐや姫、月に帰る
しかし、2人の関係はこれで完全に終わったわけではなく、和歌のやりとりを手紙で繰り返して、少しずついい感じの関係に発展していきます。
さすがのかぐや姫も大人になりました。
昔のようにしつこい男に無理難題を要求して、その心を折るような性格の悪いことはもうしません。
かぐや姫は地上界の人間と関係を持ってはいけないと理解しつつも、異性への関心が芽生えており、それが帝との和歌のやりとりにつながっているのです。
ようするに、禁断の恋ってやつですね!
帝とかぐや姫が結ばれることはありませんでしたが、2人は定期的に和歌のやりとりをする関係を続け、3年ほどの月日が経過しました。
互いの立場をわきまえた実に大人な恋愛です。
姫よ、最近ずっと悲しげな顔をしているがどうしたのじゃ?
実は私、月の民なんです。
そして8月15日にお迎えがやってきて、私は月に帰らなければなりません。別れのことを思うと、悲しくなり物思いにふけっていたのです・・・。
この噂が帝の下にも届くと、帝は月の使者からかぐや姫を守るために軍隊の派遣を決定。
そして8月15日、かぐや姫の邸宅に厳重な警備が敷かれ、運命の夜が訪れます。
月の使者が舞い降りてくると、その不思議パワーによって警備の兵たちは闘う気力と体力を奪われ、警備は無力化。
月の使者の中には王と思われる人物がいました。その王は、悲しみにくれる竹取おじいさんに向かってこう言います。
月の王「かぐや姫を拾ってくれた善行に免じて、私があなたを大金持ちにしてやったのだ。何をそんなに悲しむことがある。かぐや姫は、月で犯した罪のためにこの汚い地上界に送り込まれたのだ。その期限が来たので、こうやって迎えにきているだけだ。早くかぐや姫をこちらに渡すのです。」
こう言うと、家の中に隠れていたかぐや姫が月の不思議パワーによって屋根の上に導かれ、あれよあれよと月に帰ってしまいます。
罰として地上に送られたとは言え、地上で育ったからには人の心が私にもあります。
私を育ててくれたおじいさま・おばあさま、そして帝のことを想うと、月に帰るのはとても辛いことです。
しかし、この運命に抗うことはできません。おじいさま・おばあさま、どうか最後まで私を見届けてくれませんか。
こんなに悲しく辛いのに、姫を見届けるなど無理じゃ!
・・・どうか、私も月へ連れてっておくれよ!!
私の形見として手紙をお爺さまに渡しますわ。
どうか、私のことを思い出すときはその手紙を読んでください。
かぐや姫は、頬に涙を流しながらおじいさんに最期の手紙を渡し、月に向けて出発します。
帝にも、手紙と月の使者が持ってきた不老不死の薬を私の形見として渡そうと思います。
頭中将さん、どうかこれを帝へ渡してください。
こうして、かぐや姫は月へと帰っていきました。
竹取物語の最期
我が子のように育てた娘を月の使者に奪われたお爺さん・お婆さんは嘆き悲しみ、生きる希望を失います。
かぐや姫がいない今、老いぼれた私がこれ以上生きて何になろうか。
一方の帝は、かぐや姫からの手紙と不老不死の薬をもらうと、姫への愛情と決別し、新しい一歩を踏み出そうとします。
帝は、この手紙を読んで感動すると同時に、この手紙と不老不死の薬を、天に最も近いとされる富士山で焼いてしまうことにします。
帝「手紙があっても、不老不死になっても、かぐや姫に会うことはできないのだから、このようなものにもはや価値などない」
こうして帝は、誰もが喉から手がでるほど欲するであろう不老不死の薬と、かぐや姫の愛のこもった手紙を、部下に命じて富士山で燃やしてしまいました。
姫への気持ちと決別して、新しい一歩を踏み出したのです。
読めば読むほど味が出る竹取物語
以上が、竹取物語の簡単なあらすじです。
竹取物語の面白いところは、「作者が読者に何を伝えようとしたいのか、よくわからない」と言う点です。
これは逆に考えれば、「読者の感じ方次第でいろんな読み方ができる・・・」ということです。
例えば竹取物語の最期のシーンも、捉え方がいろいろあります。
お爺さん・お婆さんの視点で見れば、娘を失ったバッドエンドでしょう。(ただし、大金持ちになれた)
かぐや姫について考えれば、罰として地上界に降りたのだから、別れのシーンで辛い想いをすることもまた、罰の1つだった・・・と考える人もいるかもしれません。そもそも、かぐや姫の罪とは何だったのか?という大きな謎も残ります。
最期の帝の様子は、決してバッドエンドではなくて、かぐや姫と決別して新しい一歩を踏み出すポジティブなシーンにも見えます。
十人十色の読み方ができるのが、竹取物語の面白さであり、文学作品としての奥深さです。
竹取物語を読んでみよう!
竹取物語に興味を持っている方はぜひ、本を手にとって実際に読んでみましょう。
以下の角川ソフィア文庫の「ビギナーズ・クラシックス日本の古典」シリーズなら、誰でも簡単に竹取物語を読むことができます。
これらが200ページ弱の小さな文庫本でコンパクトにまとまっています。値段もお手頃価格なので、気になる方は入門としてこのシリーズを読んでみることを強くオススメします。
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すごい