

今回は天皇の「国事行為」について、12の仕事内容や「内閣の助言と承認」の仕組みまで、わかりやすく丁寧に解説していくよ!
📚 この記事のレベル:高校公共 / 政治経済
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「天皇は〝国民の象徴〟=お飾りにすぎない」というイメージを持っている人は多いと思います。
でも実は、天皇には憲法で定められた大切な仕事があり、その公務は1年間で1,000件前後に上るとも言われています。国の礼儀を守りながら、毎日のように書類に署名し、式典に臨む——まさに激務です。
その中心にあるのが、今回のテーマである国事行為です。この記事を読めば、「天皇は結局どんな仕事をしているのか」がスッキリ分かるようになります。
国事行為とは?
- ①天皇が憲法に基づいて行う形式的・儀礼的な行為のこと
- ②すべて内閣の助言と承認が必要(天皇に政治的な判断権はない)
- ③日本国憲法の第6条+第7条に定められた計12種類
国事行為とは、天皇が日本国憲法の定めにしたがって行う、国に関する形式的・儀礼的な行為のことです。内閣総理大臣の任命や、法律の公布、外国大使を迎える儀式などがこれにあたります。
ここで大事なのが、日本国憲法第4条の「天皇は、この憲法の定める国事に関する行為のみを行ひ、国政に関する権能を有しない」という条文です。つまり天皇は、国の政治そのものを動かす権限(=主権)は一切持っていません。あくまで、決まったことを国の代表として「かたちにする」役割なのです。
これは戦前の大日本帝国憲法との大きな違いです。戦前は天皇が国を統治する主権者でしたが、戦後の日本国憲法では主権は国民に移り、天皇は「日本国の象徴」という立場になりました。この象徴という地位から生まれる仕事が、国事行為というわけです。

天皇ってただの象徴なんでしょ?権限がないなら、実際は何にもしてないんじゃないの?

それが違うんだよ!天皇は主権を持っていないのに、なぜか国政の重要な場面には必ず登場するんだ。不思議だよね。でも理由はシンプルで、天皇が「国民の象徴」だから。国が大きく動く瞬間には、その象徴が立ち会ってハンコを押す必要があるんだよ。

「形式的・儀礼的」っていうのは、中身を天皇が自分で決めるわけじゃなくて、決まったことを国の代表として整える役割ってこと。結婚式でいう「祝辞を読む来賓」みたいなイメージが近いかな。
天皇の12の国事行為一覧
国事行為は全部で12種類あります。内訳は、日本国憲法第6条に定められた「任命」が2件、第7条に定められた行為が10件です。ここからは①〜⑫まで、ひとつずつ見ていきましょう。
■ ① 内閣総理大臣の任命(第6条第1項)
国会が指名した内閣総理大臣を、天皇が正式に「任命」します。誰を総理にするかを決めるのは国会であって、天皇はその決定を任命というかたちで確定させる役目です。この仕組みは議院内閣制の土台にもなっています。
■ ② 最高裁判所長官の任命(第6条第2項)
内閣が指名した最高裁判所長官を、天皇が任命します。①の総理大臣は「国会の指名」、②の最高裁長官は「内閣の指名」に基づく点がポイントです。指名する側が違うので、テストでよく引っかけに使われます。
■ ③ 憲法改正・法律・政令・条約の公布(第7条第1号)
国会で成立した法律や、成立した憲法改正などを、国民に正式に知らせる「公布」を天皇が行います。公布とは、官報に載せて「この法律が成立しましたよ」と公式に告げること。法律をつくるのは国会ですが、それを世に送り出す最後の一押しが天皇の役目です。
■ ④ 国会の召集(第7条第2号)
召集とは、国会議員を国会に集めて会議を開くこと。臨時国会や特別国会などを「開きます」と宣言するのが天皇の国事行為です。もちろん、いつ召集するかを決めるのは内閣であって、天皇が自分の判断で国会を開いたり閉じたりすることはできません。
■ ⑤ 衆議院の解散(第7条第3号)
衆議院を解散するときの「解散の詔書」も国事行為です。ニュースでよく見る、議場で議員たちが万歳をしているあの場面がこれ。ただし「解散するぞ」と実質的に決めるのは内閣であって、天皇はその決定を詔書というかたちにするだけです。衆議院と参議院の役割の違いはこちらの記事で詳しく解説しています。
■ ⑥ 国会議員の総選挙の公示(第7条第4号)
衆議院の総選挙や、参議院の通常選挙を「行います」と国民に知らせる公示も天皇の国事行為です。選挙の日程を国全体に正式に告げることで、立候補や投票の準備がスタートします。
■ ⑦ 国務大臣等の認証(第7条第5号)
国務大臣(各省庁の大臣)の任免や、大使・公使の信任状などを天皇が認証します。認証とは、「この人事や書類は正式なものですよ」と天皇がお墨付きを与えること。任命したのは内閣ですが、そこに天皇の認証が加わることで公式なものになります。

「認証」って言葉が何回も出てくるけど、「任命」とどう違うの?ごちゃごちゃになってきた…。

いい質問!「任命」は天皇が直接その職に就かせること(総理大臣と最高裁長官の2つだけ)。「認証」は、すでに内閣が決めた人事や書類を「本物だよ」とお墨付きするイメージだよ。任命=就任させる、認証=本物と証明する、で覚えるとスッキリするよ!
■ ⑧ 大赦・特赦・減刑などの認証(第7条第6号)
大赦・特赦・減刑・刑の執行の免除・復権を、まとめて「恩赦」と呼びます。恩赦とは、国のお祝い事などの節目に、罪を許したり刑を軽くしたりする制度のこと。これを決めるのは内閣で、天皇はその認証を行います。
- 大赦…政令で「この罪」と罪の種類を指定し、その罪にあたる人をまとめて一括で許す
- 特赦…有罪が確定した特定の個人を指定して、その人の刑の効力を失わせる
- 覚え方は「大赦=罪の種類で一括/特赦=個人を狙い撃ち」
■ ⑨ 栄典の授与(第7条第7号)
栄典とは、勲章や褒章など、社会に功績のあった人をたたえる名誉のこと。春と秋の叙勲、文化勲章の親授式などがこれにあたります。学術や芸術で功績のあった人に贈られる紫綬褒章など、俳優や研究者が受章することもあり、ニュースで名前を見た人も多いはずです。

栄典の授与って、受章する人がすごく多そう…。天皇が一人ひとりに手渡していたら、大変な量になりそうね。

そのとおり!叙勲は春と秋にそれぞれ数千人規模で行われるし、栄典授与だけでもすごい件数なんだ。これに書類への署名や式典が加わって、国事行為の文書だけで年間1,000件前後に上ると言われているよ(宮内庁の記録では近年960〜1,049件)。「お飾り」どころか、ものすごい激務なんだよね。
■ ⑩ 批准書および外交文書の認証(第7条第8号)
批准書とは、国が条約を正式に「守ります」と確認する書類のこと。この批准書や、そのほかの外交文書を天皇が認証します。国と国との約束事に、国の代表としてお墨付きを与える役割です。
■ ⑪ 外国大使・公使の接受(第7条第9号)
接受とは、外国から着任した大使や公使を、国を代表して迎え入れること。皇居で行われる「信任状捧呈式」で、天皇が各国の大使から信任状を受け取ります。日本という国の顔として、外国の代表をもてなす国事行為です。
■ ⑫ 儀式を行うこと(第7条第10号)
即位の礼や、国会の開会式など、国家的な儀式を執り行うことも国事行為です。ここでいう「儀式」は、あくまで国の公的な行事のこと。新年の一般参賀や神道のお祭りなどは、天皇個人の立場で行う「私的行為」であって国事行為ではない、という区別が試験でよく問われます。

12個もあるのか…。テスト前に全部覚えられる自信がないよ。何かいい覚え方ってない?

コツは「まず2つのグループに分ける」こと!第6条は”任命”の2つ(総理大臣・最高裁長官)、残りの10個は全部第7条。第7条は「公布・召集・解散・公示」の国会まわりと、「認証×3・授与・接受・儀式」に分けると整理しやすいよ。バラバラに暗記しないのがポイント!
国事行為には「内閣の助言と承認」が必要な理由
12の国事行為には、ひとつの共通ルールがあります。それが「内閣の助言と承認」です。日本国憲法第3条には、次のように定められています。
📖 日本国憲法 第3条
天皇の国事に関するすべての行為には、内閣の助言と承認を必要とし、内閣が、その責任を負ふ。
ポイントは条文の後半、「内閣が、その責任を負ふ」という部分です。つまり、国事行為で何か問題が起きても、責任を取るのは天皇ではなく内閣。天皇は内閣が決めたことをそのまま実行するので、政治的な責任を問われない仕組みになっているのです。
手続きの流れをざっくり言うと、①内閣が閣議で決定 → ②内閣が天皇に「助言」して国事行為を求める → ③天皇が署名・押印して実行 → ④内閣が「承認」する、という順番です。天皇はこの流れの中で「ノー」と言うことはできません。

「助言」と「承認」って、実際にはどういう手続きなのかしら?閣議で決めてから天皇にお願いに行く、というイメージで合ってる?

その理解でバッチリ!閣議で決定して、内閣が天皇に申し上げ、天皇が署名・押印する。実際には「助言」と「承認」はセットで一体的に行われるものと考えられているんだ。だから天皇は、内閣が持ってきた案をそのまま実行することになるんだよ。

でもさ、なんで天皇が自分の判断で勝手にやっちゃダメなの?国のトップみたいな存在なのに。

それは日本の主権が「国民」にあるからなんだ。もし天皇が自分の意思で政治を動かせたら、戦前みたいに国民が選んでいない人が国を左右できてしまう。それを防ぐために、天皇の行為は必ず国民が選んだ内閣を通す仕組みにしているんだよ。天皇の権力を憲法でしばる、という立憲主義の考え方そのものなんだ。
ちなみに、国の権力を「立法・行政・司法」の3つに分ける三権分立の場面(総理大臣の任命・最高裁長官の任命・法律の公布など)に天皇がすべて登場するのも、天皇が国全体の象徴だからこそ。国が動く節目に象徴が立ち会う、というわけです。
国事行為の委任とは?
天皇が病気になったり、外国を訪問して日本にいなかったりする場合、国事行為はどうなるのでしょうか。国会の召集や法律の公布が止まってしまっては大変です。
そこで用意されているのが「国事行為の委任」の仕組みです。日本国憲法第4条第2項は「天皇は、法律の定めるところにより、その国事に関する行為を委任することができる」と定めており、天皇が一時的に国事行為を皇族などに任せられるようにしています。この委任には、大きく分けて2つのパターンがあります。
🔎 臨時代行と摂政の違い
・国事行為の臨時代行…病気や外国訪問など、天皇が一時的に行えないとき。天皇自身が皇族に委任する(軽めのケース)
・摂政…天皇が未成年のときや、重い病気などで長期にわたり国事行為ができないとき。皇室会議の議決で置かれ、天皇の名で国事行為を行う(重めのケース)

じゃあ天皇が数日入院したくらいなら、国会が止まっちゃうわけじゃないんだね。ちょっと安心した。

そうそう!短期間なら「臨時代行」に皇族が代わりを務めてくれるから、国の機能は止まらないんだ。天皇が回復すれば、また通常どおりに戻る。国の仕組みって、ちゃんとこういう非常時の備えまで用意されているんだよ。

臨時代行と摂政って、似ているようで違うのね。テストだとどこで見分ければいいのかしら?

見分けるカギは「期間の長さ」と「誰が決めるか」だよ。短期=臨時代行(天皇が委任)、長期=摂政(皇室会議が決定)。「一時的か、長期か」で切り分けると迷わないよ!
テストに出るポイント
ここからは定期テスト・共通テスト・大学受験で押さえておきたいポイントをまとめます。試験直前の見直しにも使ってください。
📌 ひっかけ注意:①「内閣総理大臣を指名するのは天皇」は誤り(指名は国会、天皇は任命)。②新年の一般参賀や神道の祭祀は「私的行為」で国事行為ではない。③国事行為・公的行為(外国訪問・国会開会式でのおことばなど)・私的行為の3つを混同しないこと。

いろいろあるけど、一番テストで出やすいのはどこ?そこだけは絶対に落としたくない!

一番の頻出は「内閣の助言と承認」と「国政に関する権能を有しない(第4条)」だよ。この2つは国事行為の核心だから、穴埋めでも記述でも狙われやすい。あとは「総理は国会が指名」の引っかけね。ここを押さえれば大崩れしないよ!
よくある質問
A. 天皇が日本国憲法の規定に基づいて行う、形式的・儀礼的な行為のことです。すべて内閣の助言と承認が必要で、天皇に政治的な判断権はありません。内閣総理大臣の任命や法律の公布など、全部で12種類あります。
A. 全部で12種類です。日本国憲法第6条(内閣総理大臣の任命・最高裁判所長官の任命の2件)と、第7条(公布・召集・解散・公示・認証・授与・接受・儀式など10件)に規定されています。
A. 天皇が国事行為を行う際に必要な内閣の関与のことです(憲法第3条)。内閣が国事行為を決定して天皇に求め、天皇がそれを実行します。責任を負うのは天皇ではなく内閣で、天皇に拒否権はありません。
A. 大赦は、政令で罪の種類を指定して、その罪にあたる人をまとめて一括で許す制度です。特赦は、有罪が確定した特定の個人を指定して、その人の刑の効力を失わせる制度です。「大赦=罪の種類で一括、特赦=個人を狙い撃ち」と覚えましょう。どちらも内閣が決定し、天皇が認証します。
A. 天皇が病気や外国訪問などで国事行為を行えないときに、皇族に代行を任せられる制度です(憲法第4条第2項)。一時的なときは天皇自身が委任する「国事行為の臨時代行」、長期にわたるときは皇室会議の議決で置かれる「摂政」の2種類があります。
A. 拒否できません。日本国憲法第4条で天皇は「国政に関する権能を有しない」と定められており、内閣の助言と承認に基づいて国事行為を行います。天皇の意思で政治を左右できないようにすることで、国民主権を守っているのです。
A. 国事行為は憲法に定められた12種類の行為です。これに対し、外国訪問や国会開会式でのおことば、被災地のお見舞いなどは「公的行為(象徴としての行為)」、新年の一般参賀や神道の祭祀などは天皇個人の「私的行為」とされ、いずれも憲法上の国事行為とは区別されます。
まとめ
- 1889年大日本帝国憲法発布天皇が統治権を握る主権者だった。「国事行為」という概念は存在せず、天皇が直接国を統治
- 1945年終戦・連合国軍占領下へ天皇制のあり方が大きく見直され、象徴天皇への転換が進む
- 1946年日本国憲法公布第1条「象徴天皇」・第3条「内閣の助言と承認」・第4条「国政に関する権能なし」・第6条・第7条で国事行為が規定される
- 1947年日本国憲法施行・皇室典範制定象徴天皇制がスタート。皇室典範で摂政の制度も整えられる
- 現在年間1,000件前後の国事行為が継続栄典授与・儀式・認証など、多種多様な公務が今日も行われている(宮内庁記録では近年960〜1,049件)

以上、国事行為のまとめでした。「象徴天皇ってどういうこと?」を本当に理解するには、この国事行為の仕組みを知るのが一番の近道なんだ。下の関連記事もあわせて読むと、日本の憲法の全体像がグッと見えてくるよ!
📅 最終確認:2026年7月 / 参照:日本国憲法・コトバンク・宮内庁公式サイト
Wikipedia日本語版「国事行為」(2026年7月確認)
コトバンク「国事行為」「大赦」「特赦」「摂政」(デジタル大辞泉・日本大百科全書)
日本国憲法(第3条・第4条・第6条・第7条)
宮内庁公式サイト(2026年7月確認)
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