人身の自由を簡単にわかりやすく解説するよ【罪刑法定主義・令状主義をバッチリ理解する】

この記事は約7分で読めます。

今回は、高校の「政治・経済」の授業で学ぶ人身の自由についてわかりやすく丁寧に解説していきます。

人身の自由とは

人身(身体)の自由は、国家権力によって不当に身体の自由を奪われない権利のこと。

明治憲法(大日本帝国憲法)のもとで、国家権力によって不当な逮捕や投獄、拷問などの人権侵害がしばしば行われたこともあり、日本国憲法では他の国の憲法と比べて人身の自由について細かく規定している。

この記事を読んでわかること
  • 明治憲法(大日本帝国憲法)と何が違うの?
  • 人身の自由って具体的にどんなことが書かれているの?
  • 罪刑法定主義って何?
  • 令状主義って何?
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国から理不尽に体の自由を奪われない権利「人身の自由」

自由権のひとつである「人身の自由」は、個人が肉体的・精神的に自由を理不尽に踏みにじられないことを定めています。

「そんなの当たり前でしょ!」って思う人もいるかもしれませんが、日本を含め、世界では理不尽に拘束や拷問をおこなって身体だけでなく尊厳までをも踏みにじってきた歴史があります。

そうした過去を踏まえて、体の自由を守るルールとして憲法に置いたのがこの権利です。とくに日本は、世界でも類を見ないほど人身の自由に対する規定が多い国です。

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旧憲法と現憲法とはどう違うの?

最初に、昔の憲法(大日本帝国憲法)と今の憲法(日本国憲法)で、人身の自由の仕組みはどうなっているのか確認していきます。

大日本帝国憲法に定める人身の自由

実は、大日本帝国憲法にも人身の自由のことがちゃんと書かれていました。それにも関わらず、人々の人身の自由は蹂躙されることになります。大日本帝国憲法で定められた人身の自由には大きな欠陥があったからです。

大日本帝国憲法では、基本的に国民の自由というのは「法律の範囲内」という条件付で認められていました。

「法律の範囲内」というのは、つまり、「国民の自由よりも法律を優先するよ!」ってことです。

なので、国民の自由は法律で上書きすることが可能でした。例えば、日本政府が「政府に歯向かう思想を少しでも持っていると政府が感じたら、お前ら速攻で監獄行きだから^^」って法律を制定すれば、国民の自由は簡単に踏みにじられてしまうのです。

実際に、日本では治安維持法ちあんいじほうと呼ばれる法律が制定されて、政府に目をつけられた人々に対して、拷問や理不尽な監禁・刑罰、恣意的な逮捕などが多くおこなわれていました。

日本国憲法に定める人身の自由

一方、現在の憲法では、拷問や残虐な刑罰は絶対に禁止であるとはっきり明言しています。どんな法律があっても絶対に禁止です。

日本国憲法第36条(今の憲法)

公務員による拷問及び残虐な刑罰は、絶対にこれを禁ずる。

憲法で「絶対」という言葉が使われるのはこの条文だけです。過去の理不尽な拷問・刑罰を2度を起こさせないという強い意志が反映されています。

今の憲法と昔の憲法で決定的に違うのは、今の憲法では「法律の範囲内」という条件が撤廃されている点です。

今の憲法(日本国憲法)では、基本的に私たち国民の人権は生まれながらのものであり、国が勝手にコントロールすることはできません。

拷問及び残虐な刑罰は絶対に禁止としておきながら、実は日本には最強に残虐な刑罰が残っています。

・・・それが死刑です。

国際的に死刑は残虐な刑罰とみなされており、1989年には国連総会で死刑廃止条約が採択されています。そんな中、いまだに日本に死刑制度が残っていることは大きな問題としてたびたび議論が行われています。

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罪刑法定主義とは?

今の憲法(日本国憲法)のおかげで、私たちは拷問や残虐な刑罰から守られていることがわかりました。

しかし、憲法が守ってくれる人身の自由はこれだけではありません。さらに国民が、理不尽な理由で逮捕されたり、刑罰を受けることがないよう、逮捕・刑罰について様々なルールが決められています。

この記事では、そのルールの中でも特に重要な罪刑法定主義ざいけいほうていしゅぎ令状主義れいじょうしゅぎという2つのルールについて詳しく紹介していくことにします。

いきなりですが、こんなことを想像してみてください。

ある日の朝、目が覚めると家の中に突然警察がやってきました。

そして、身に覚えのない罪を言われそのまま逮捕されてしまいます。弁明の余地もなく拷問され、そのまま刑務所に何十年入れられてしまいました。

こうして、わずか1日で人生は狂ってしまったとさ。

・・・おしまい。

こんな理不尽なことが起こらぬよう、憲法では以下のようなルールを設けています。

日本国憲法第31条

何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。

第31条は、「国は、法律に定めた手続を守らないと誰にも刑罰を科すことはできませんよ」というルールです。国が勝手な都合で刑罰を科すことを防ぐための仕組みです。

このルールのことを法定手続の保障と言います。

法定手続の保障のルールは、単なる手続だけではなく、科せられる刑罰についても事前に法律で定めることを求めます。

手続がいくら適正でも、国が「悪い。気が変わったからお前は死刑な。」と後で刑罰を変えれるようでは、国民の人身の自由は守られないからです。

この「手続だけでなく刑罰も事前に法律で定める」というルールのことを罪刑法定主義と言います。

罪刑法定主義は、近代国家にはなくてはならない刑法の基本原則と言われていて、日本以外の国でも多くの国で採用されています。

もしも、この罪刑法定主義の考え方がなかったらどうなるでしょう。

事後に犯罪の種類や刑罰を決められるなら、犯罪の定義はあいまいになります。そうなれば、私たちはどんな行為が犯罪に該当するのかビクビクしながら生活しなくてはなりません。また、国家権力が暴走して感情や思い込み、好き嫌いで刑罰を決められる社会になってしまうことも否定できません。

そこで、罪刑法定主義では、

  • 何をしたら犯罪になるのか
  • どの程度の罪が科されるのか

をあらかじめ法律で明確にしておくよう求めているわけですね。

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令状主義とは?

もう1つの大事なルールである令状主義は、人々が逮捕されたり、犯罪の嫌疑で捜査を受けた時に守らなければならないルールです。

日本国憲法の第33条と第35条に令状主義の仕組みが書いてあります。

それぞれ詳しく解説していきます。

日本国憲法第33条

何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、且つ理由となつてゐる犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。

33条は逮捕について述べた条文です。令状とは裁判官が警察官等からの資料をもとに、被疑者を逮捕すべきか判断した上で警察官や検察官に待たすものです。

捜査機関が理不尽な逮捕をしたり人権を侵害することを防止するため、裁判官がこれを監視することが目的です。

ただし、現行犯逮捕は例外として令状なしで逮捕することが認められています。

現行犯逮捕は「目の前の犯罪で行為をしていた者を逮捕すること」なので、間違って逮捕するが少ないため、例外として令状なしでの逮捕が認められているのです。

よくある現行犯逮捕といえば、万引きや痴漢がおこなわれていたのをたまたま目撃した人がその場で犯人を捕まえるようなケースでしょうか。

日本国憲法第35条

第1項 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。

第2項 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

第35条は、捜索、押収について述べた条文です。令状がないと住宅や所持品について国が自分勝手に侵入、捜索、押収したらダメだよ・・・と言っています。

第33条・第35条のように「令状がないと、逮捕とか捜査をしたらダメ!」ってルールのことを令状主義と言います。

令状主義は、警察官や検察官が職権濫用により国民の自由を奪うことを裁判所が監視する仕組みです。

しかし実際のところ、警察官や検察官が裁判所に令状の発行を求めると99%認められているという事実があります。

つまり、裁判所が監視しているといいながら、実際は警察官や検察官が思ったとおりに、逮捕や家宅捜査ができてしまっているんです。

これには、「令状主義が形骸化して、検察官らの横暴を許している」という意見から「いやいや、検察官らがしっかりしているから令状を拒否するケースが少ないだけ。令状主義は適切に機能している。」って意見まで、様々な意見があります。

真実はどうなっているのでしょうか。気になるところですが、闇が深そうなのでこれ以上は触れません・・・。

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この記事を書いた人
もぐたろう

教育系歴史ブロガー。
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