参政権を簡単にわかりやすく解説するよ!【選挙の歴史と選挙・国民投票・国民審査について】

この記事は約9分で読めます。

今回は、高校の「政治・経済」の授業で学ぶ参政権さんせいけんについてわかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事を読んでわかること
  • 参政権ってどんな権利?
  • 参政権ができるまでの苦難の歴史とは?
  • 参政権は具体的にどうやって使われる?
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国民が政治に参加できる権利「参政権」

国民が政治に参加する権利、それが参政権です。具体的には日本国憲法第15条にその一部が書かれています。

日本国憲法第15条

第1項 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。

第2項 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。

第3項 公務員の選挙については、成年者による普通選挙を保障する。

第4項 すべて選挙における投票の秘密は、これを侵してはならない。選挙人は、その選択に関し公的にも私的にも責任を問はれない。

ここで言う「公務員」は、いわゆる国家公務員・地方公務員だけではなく国会議員・地方議員も含みます。

そして公務員を選ぶのは国民固有の権利であり、普通選挙を保証すると明言しています。

参政権と聞くと、「選挙権」や「被選挙権」だけと考えがちですが、この2つだけではありません。

実は参政権には

  • 政治家を選ぶ権利
  • 政治家として立候補する権利
  • 国民投票に参加する権利
  • 公務員になる権利
  • 公務員を罷免ひめんする権利

など多様な権利が含まれています。そして、これらの権利の中でもっとも重要だと考えられているのが「選挙権」なのです。

少し話が変わりますが、憲法では国民の基本的な人権は尊重されるべきだと書かれています。

日本国憲法第11条

国民は、すべての基本的人権の享有(きょうゆう)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

さらに、その基本的人権は国民に無条件に与えられるものではなくて、国民の不断の努力によってこれを保持しなければダメだと憲法は言っています。

日本国憲法第12条

この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

なぜ、唐突に基本的人権の話をしたのかというと、ここで書かれている「国民の不断の努力」の1つの手段として用意されているのが、私たちが参政権を使うことだからです。

そして、私たちが最も身近に参政権を使える方法が選挙に投票できる権利(選挙権)です。

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普通選挙への歴史

ここからは、参政権のうち選挙権をピックアップして見ていきます。

今の日本では、18歳以上の全ての国民が選挙権を持っています。そこには家柄・資産・性別などの差別は一切ありません。平等です。

「当たり前だろ?」と思う人もいるかもしれませんが、平等選挙(普通選挙)が当たり前になったのは戦争が終わった1945年からです。それ以前の選挙は、決して平等なものではありませんでした。

というわけで、選挙権のことをもっと理解するため、選挙権がたどった歴史を解説します。

1890年:初めての選挙がスタート

日本で初めて選挙がおこなわれたのは1890年、明治時代でした。

当時、選挙に投票できるのは以下の要件を満たす者のみ。平等or不平等で言えば、不平等でした。

選挙に投票できる条件(1890年)
  • 満25歳以上
  • 男性
  • 直接国税を15円以上収めている

当時の15円の価値は、大雑把な試算をしてみると30万円とも60万円とも言われています。

今の日本でサラリーマンが30万〜60万の税金を収めるには、年収で500万〜1,000万円を稼いでいることが必要です。

つまり、15円=今の60万円に換算すると、年収1000万円の男性しか投票できないのです。もちろん、そんな金持ちは日本に少ししかいないので、選挙権を持っていたのは全人口のわずか1%程度だったと言われれています。

なぜこのような厳しい条件が課されたかというと、当時の日本政府が「広く民衆の意見を政治に反映してしまうと、トンデモナイ政策も認められるようになり、国が乱れてしまうのではないか?」と強い警戒心を持っていたためです。

1925年:選挙権の拡大

一応、1890年の選挙開始で日本にも、民衆の意見を政治に反映させる「民主主義」が導入されました。しかし、全人口の1%しか選挙に投票できない状況では、誰がどう見ても形だけの民主主義です。

そこで、1910年代から民主主義の発展を求める大正デモクラシーと呼ばれる運動が広がります。

人々は、

  • 言論・結社・集会などの自由
  • 平等教育の請求
  • 普通選挙の実現

などを政府に訴えました。

大正デモクラシーのきっかけは日露戦争でロシアに勝ったことです。日露戦争の勝利で、日本が列強国と同じレベルの国であることが認められると、国民たちは「日本も列強国のような開けた民主主義を目指すべき!」と考えるようになったのです。

大正デモクラシーの声の大きさに政府もこれを無視できなくなり、1925年、政府は選挙権の拡大を行います。普通選挙法を定めて、選挙に投票できる条件を

選挙に投票できる条件(1890年)
  • 満25歳以上
  • 男性

という条件に引き下げました。

納税条件(金持ち優遇)がなくなったことで、全人口の約20%が有権者となります。

しかし、この時点ではまだ男女差別が残っていました。女性には自分の意思を政治に反映させる機会を与えられませんでした。

1945年:普通選挙の実現

1945年8月、2つの原爆が広島と長崎、それぞれにアメリカ軍によって落とされました。原爆投下後、戦争中だった日本は降伏。敗戦国なります。

そして、GHQと言う組織が置かれ、旧来の日本の仕組みは解体へ。GHQの主導で日本は、民主主義国家へと変貌することになります。

その民主主義に向けた政策の一環として、行われたのが選挙権の拡大です。

選挙に投票できる条件(1945年)
  • 満20歳以上
  • 男性・女性

1945年にようやく今のような普通選挙が実現しました。

皮肉なことに、国民は敗戦を通じてようやく平等な選挙権を手に入れることになったのです。普通選挙の実現により、全人口の約48%が有権者となりました。

「満20歳以上の男女って人口の48%しかいないの?」と思うかもしれませんが、当時は寿命も短く、さらに戦争で多くの人たちが亡くなった直後のため、このようなパーセントになっています。

時代が進むと、有権者の割合はドンドン増えていくことになります。

2016年:年齢制限を「18歳以上」に引き下げ

2016年、選挙権はさらに拡大します。それが「18歳選挙権」です。

法改正により、

選挙に投票できる条件(1945年)
  • 満18歳以上
  • 男性・女性

の条件を満たすすべての日本国民に選挙権が与えられました。

ちなみに、上で書いたように憲法では「成年者による普通選挙を保障」を明記しています。つまり、「18歳の人に選挙権がある」=「18歳は成年者」ってことになります。

2016年より前は「20歳=成人!」だったのが、2016年以降は「18歳=成人!」と法律上の扱いが変わって、選挙権だけでなく、様々な制度や仕組みが変わりました。

サラッとですが、これが日本の選挙権の歴史です。今では当たり前のようにある選挙権はこのようなたくさんの苦労や弾圧を経て、ようやく日本国民が手にした権利なのです。

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参政権のいろいろ

最後に、選挙権以外の参政権をいくつか紹介します。

参政権は、国民が政治に参加する権利のことでした。実は、国民が政治へ参加する方法は大きく2つに分類することができます。

それが直接民主制間接民主制です。

日本の場合、メインとして間接民主制が採用されています。参政権の中でも特に大事な選挙も間接民主制です。

直接民主制

国民全員が直接に政治に参加する仕組みを「直接民主制」といいます。

しかし、国民全員の意見を聞くのは非常に手間がかかるため、直接民主制をメインとしている国は少ないです。

とはいえ、日本に直接民主制が採用されていないわけではありません。日本はメインを間接民主制としながら、重要な決断の際にサブ的に感じで直接民主制を採用しています。

間接民主制

自分たちの代表者(議員)が政治に参加するという仕組みが「間接民主制」です。

日本を含め、多くの国が主流としている制度です。国民は直接政治に参加せず、政治に参加する代表者を選挙などで選ぶことで参政権を行使します。

直接民主制より民意は反映されにくいですが、国政について1つ1つ国民全員の意見を聞く必要がなくスムーズに国政を運営することができます。

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日本の直接民主制

日本で直接民主制が採用されている代表的なものは以下の3つ。

直接民主制の代表例
  • 1 特定の自治体にのみ適用される法律に関する住民投票
  • 2 憲法改正に関する国民投票
  • 3 最高裁判所裁判官の国民審査

1と2は重要な決断ということで、手間がかかっても民意をしっかり確認できる直接民主制が採用されています。

住民や国民に賛成・反対を問い、多数決で賛否を決定します。

しかし、1番の憲法に基づく住民投票は制度は存在しますが事例はほとんどなく、1952年以降は行われていません。2番の憲法改正も、国会では話題になりますが、国民投票まで至ったことはありません。

3番の「最高裁判所裁判官の国民審査」は、私たちにとって最も身近な直接民主制です。3番は少しだけ特殊なので補足説明しておきます。

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国民審査が直接民主制である理由

「最高裁判所裁判官の国民審査」が直接民主制である理由は、三権分立を守るためです。1番・2番とは少し系統が違います。

三権分立とは、「国会(立法)」「内閣(行政)」、「裁判所(司法)」という3つの独立をした機関が互いに抑制し、バランスをとることで権力の乱用を防ぐという仕組みです。

ようするに、三権分立とはジャンケンのグー・チョキ・パーのような関係で、国の権力を1カ所に止めないようにしているわけです。

「国会」と「内閣」は議員内閣制という強い結びつきがある一方、「裁判所」は公正性が重要なため、「国会」・「内閣」から一定の距離を置く司法権の独立が必要になります。

司法権の独立

裁判所は「憲法の番人」という異名を持ち、

  • 国民が成立させた法律が憲法に違反していないか(違憲立法捜査)
  • 内閣の行為が憲法に違反していないか(命令、規則、処分の適法性の審査)

をチェックしています。裁判所が何者かに操られると、裁判所は法律や内閣の行為に圧力をかけることが可能となり、民主主義が崩壊する危険があります。

そのため、裁判所は、内閣・国会に比べて特に独立性が求められているのです。

裁判所の最高機関である最高裁判所の裁判官に関しては、その危険をチェックするため、国民審査という直接民主制が採用されています。

国民審査は、最高裁判所の裁判官に賛成か反対かを投票し、反対が過半数を越えると裁判官はクビになります。

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むすび

私たちの基本的人権は不断の努力でこれを保持しないといけません。そして、不断の努力の手段として与えられているのが、参政権です。

そして、参政権の中でもっとも私たちにとって身近なのが選挙です。自ら政治家に立候補するのは難しくても、選挙に行くことはできます。

おまけに私たちは、先人たちが望んでも手に入れることのできなかった普通選挙の権利まで持っています。

その大事な権利を安易に捨てるってことは、参政権に詳しい人から見ると「あいつは、こんな大切なものを無駄にするなんて、基本的人権とか選挙の権利いらねーんだな。」って思われているかもしれません。

この「参政権に詳しい人」がもし政治家なら、最悪の場合、国会で「国民は選挙権を使わないみたいだから、普通選挙なんてやめよーぜ!」って話もでるかもしれませんよね。

実際に投票率は低迷していますし、心の中で「国民がそんなに政治に参加したくないなら、国民の意見なんか聞く必要ないよなww」って思ってる政治家も既にいるかもしれません。

というわけで、みなさん、選挙にはちゃんと行きましょうね!

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この記事を書いた人
もぐたろう

教育系歴史ブロガー。
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