今回は、物価の変動を示す経済用語である
・インフレーション
・デフレーション
・スタグフレーション
の3つについて、わかりやすく丁寧に解説していくね!
※内容は高校レベルです!
インフレ・デフレとは
インフレーションとは、物価が持続的に上昇し続ける経済現象のことを言います。(通称:インフレ)
デフレーションとは逆に、物価が持続的に下落し続ける経済現象のことを言います。(通称:デフレ)
あれ、説明ってそれだけ?
インフレとかデフレとかの経済の話ってすごく難しいって聞いたんだけど・・・?
実は、インフレ・デフレそのものの説明はこれだけです。
インフレ・デフレの話が難しいは、インフレ・デフレが起こるとその影響が世の隅々にまで波及して、様々なものが同時並行(場合によっては時間差)で変化していくからなんだ。
この記事では、インフレ・デフレによって世の中の経済がどう変わっていくのかも紹介していきます。
あれ?スタグフレーションの説明はないの?
スタグフレーションは、特殊なインフレって感じだから、インフレの説明の際に合わせて説明をしていくよ!
インフレーション
物価が上がると、一般的には次のような経済現象が起こると言われています。
- STEP①なんらかのきっかけで物価が上がる
- STEP②物が高い値段で売れると会社の利益が増える
- STEP③会社の利益が増えると、その利益で新しいことをやろうとするので仕事が増える。
- STEP④仕事が増えると就職先が増えて失業者が減る
- STEP⑤失業者が減ると、待遇を良くしないと人が集まらないので給料が上がる。
- STEP⑥給料が増えると人々の消費意欲が増すので、多少高い価格設定でも物が売れるようになり、物価が上がる。
- STEP⑦STEP②に戻って以下ループ
このループによって持続的に物価が上がる現象がインフレーションです。
インフレが起こると、失業者が減ったりお給料が増えるなど、広範囲にその影響が波及していることがわかると思います。
ただし、現実の世界では、このループが綺麗に繰り返されることはまずありません。なぜなら、世の中の経済はもっと多様で複雑な要因が絡み合って動いているからです。
例えば、異常気象や天候不順で不作が続けば、上のループとは無関係に農作物の価格が高騰します。
新型コロナの影響下では、物価とは無関係に観光・宿泊業の需要がなくなってしまい、多くの仕事が奪われました。
最近では、ロシアとウクライナが戦争を始めたことで石油価格が高騰。また、両国が小麦の産地だったこともあり小麦の価格も高騰しています。
こうした事例以外にも、商品の値段というのは世界の様々な影響を受けて決まっているのです。
インフレは社会のさまざまな影響を受けて起こるため、その実態はとても複雑です・・・が、よくある有名なパターンが2つほど存在しています。
そのパターンというのが
ディマンド=プル=インフレ
コスト=プッシュ=インフレ
です。
それぞれ簡単に説明していきます!
ディマンド=プル=インフレ
ディマンド(demand)は「需要」。プル(pull)は「引っ張る・牽引する」という意味です。
つまり、ディマンド=プル=インフレっていうのは「需要に引っ張られて起こるインフレ」という意味です。
「需要に引っ張られる」っていうのは具体的にどーゆーこと?
「需要に引っ張られる」っていうのは、簡単に言ってしまうと上に載せたインフレのループが上手くいっている状況のことを言います。
上のループでいうSTEP③〜⑤のところがポイントです。
仕事が増えて失業者が減り、給料も上がれば物・サービスが売れるようになります。つまり、世の中の需要が増えます。
需要が増えれば強気の価格設定ができるので物価が上がります。
こんな感じで需要の拡大をきっかけに起こるのがディマンド=プル=インフレなんだ。
コスト=プッシュ=インフレ
コスト(cost)は「費用」。プッシュ(push)は「押す」という意味。
合わせるとコスト=プッシュ=インフレっていうのは、「費用に押されておこるインフレ」っていう意味になります。
「費用に押される」っていうのは簡単に言うと「ごめん!商品の製造・販売コストがUPしたからその分値上げするわ!」ってことです。
例えば、コンビニで売っている鮭おにぎりを考えています。
鮭おにぎりの価格が120円だったとして、そのおにぎりを製造するには次のようなコストがかかったとします。
- お米:15円
- 鮭:20円
- のり:5円
- 製造工場の機械代:(おにぎり一個あたり)10円
- 製造工業の人件費:(おにぎり一個あたり)20円
- コンビニ店舗の運営費用:(おにぎり一個あたり)30円
1〜6合わせると鮭おにぎりを売るために必要なコストは100円。
つまり、鮭おにぎり一個を売ると20円(売値120円ーコスト100円)の利益になるわけです。
・・・ところが!不作でお米が取れず米の価格が2倍になり(15円→30円)、輸入していた鮭の価格も戦争の影響で2倍(20円→40円)になったとしましょう。
すると、コストが100円から135円にU Pしてしまい、120円で売ったら15円の赤字になってしまいます。
そこでコンビニは、鮭おにぎりを120円→150円へと値上げして利益を出そうとします。こうして起こる物価上昇のことをコスト=プッシュ=インフレと言います。
コスト=プッシュ=インフレが起こると、上のインフレループがうまく起こらないことがよくあります。
鮭おにぎりの例だと、おにぎりの価格は120円→150円に上がっただけで、人件費(お給料)はUPしていないし、企業の利益が増えるわけでもありません。
つまり、インフレループのSTEP③〜⑤をすっ飛ばして価格だけが上昇してしまうこと可能性があるんです。
コスト=プッシュ=インフレは、新しい仕事やお給料が増えないまま商品価格だけが上がるため、私たちの生活に大きな影響を与えます。
ハイパー=インフレーション
インフレのループによって少しずつ物価が上がるのではなく、何らかの原因で物価が急激に高騰するインフレのことをハイパー=インフレーションと言います。
例えば、一個110円で買えたクリームパンが、1ヶ月後には5倍の550円じゃないと買えない状況になるのがハイパー=インフレーションです。
ハイパー=インフレーションは平時に起きることは滅多にありません。過去の世界の歴史を見てみると、ハイパー=インフレは戦争や政変など社会に大きな変化が起きたタイミングで起こることが多いです。
ハイパー=インフレの有名な事例の1つにドイツの事例があります。
ドイツでハイパー=インフレが起きたのは1923年。
第一次世界大戦に敗北して多額の賠償金を負ったドイツは、賠償金の支払いなどに充てるため紙幣を大量発行した結果、パン1個=1兆マルクというとんでもない物価上昇が起こって、紙幣が紙くず同然になってしまいました。
※マルク:ドイツの通貨単位のこと(日本でいう円のこと)
スタグフレーション
インフレが起こっている期間っていうのは、一般的に好景気になると言われています。
なぜなら、ループが繰り返されている間は、世の中に新しい仕事が増えるおかげで失業者が減り、お給料はUPするため、経済活動が活発になるからです。
ハイパー=インフレのような急激なインフレは人々の生活に与える影響が大きいため、インフレループが緩やかに続いて少しずつ物価が上昇していく状況が、好ましい経済状況だと言われています。
ただし、ごく稀にインフレになっても景気が良くならない(失業者が減らない&給料が増えない)ことがあります。
この景気が良くならないのに起こるインフレーションのことを、スタグフレーションと言います。
スタグフレーションはどんな時に起こるのかしら?
スタグフレーションは、コスト=プッシュ=インフレが発生したときによく起こると言われているよ。
コスト=プッシュ=インフレっていうのは、生産者側(供給)の都合で起こるので、買い手側(需要)のことを考慮してくれません。
つまり、こんな事態が起こりうるわけです。
給料が全然上がらないのに、物価だけが高くなって物を買えなくなってしまった。不必要な物を買うのは控えるようにして節約しよ・・・。
買い手のお財布事情を無視した値上げは、経済活動の活性化どころか、逆に経済活動を萎縮させる結果を招いてしまうってわけだね。
最初に紹介したインフレループがうまく機能せず、失業者が減らず・給料が増えないまま物価だけが上昇することでスタグフレーションは起こるわけです。
実は日本でもスタグフレーションが起きたことがあります。
1970年代、政府は大規模な公共事業を次々と実施することで、お金をばらまき、国内の貨幣量を増やそうとしていました。(列島改造ブーム)
こうした積極財政によってインフレーションが進む中、1973年に第四次中東戦争(イスラエルVSアラブ諸国)が勃発。
産油国が戦争を始めたことで原油価格が一気に上がり、コスト=プッシュ=インフレが起こったのです。(第一次オイルショック)
列島改造ブーム+第一次オイルショックによって日本の物価は急上昇しますが、コスト=プッシュ=インフレの色合いが濃かったため、企業は値上げしても利益を出せず、給料UPも物価上昇に追いつきませんでした。
こうして経済活動が縮小し、インフレが起きるのに不景気というスタグフレーションがおきたのです。
デフレーション
インフレは、物価上昇→好景気→物価上昇というループによって持続的な物価上昇が続く経済現象のことを言いました。
デフレーションはその逆で、物価下落→不景気→物価下落という持続的な物価下落が続く現象のことを言います。
デフレのループはインフレとは真逆で、次のような感じになります。
- STEP①なんらかのきっかけで物価が下がる
- STEP②商品の値段が下がると会社の利益が減る
- STEP③会社の利益が減ると、企業はコストカットのため、新しい事業を行わなくなり、リストラを行うようになる。
- STEP④新しい仕事が減り、リストラされた人が増えると失業者が増える。
- STEP⑤失業者が増えると、待遇の悪い求人でも人が集まるため、給料が上がらない
- STEP⑥給料が上がらないと人々の消費意欲が衰えてしまい、高い値段の商品は売れず、企業は商品を売ろうと値下げを行う。
- STEP⑦STEP②に戻って以下ループ
デフレは、経済を縮小を招くため、経済にとっては良くない現象だと考えられています。
特にデフレのループが綺麗に続いてしまった場合には、深刻な不景気に陥ることがあって、これをデフレ=スパイラルと呼んでいます。
多くの国ではデフレ=スパイラルに陥らないよう、景気が悪くなるといろんな経済・金融政策を行なっています。
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