前回の記事(天上天下唯我独尊の意味とは?ブッダ(釈迦)誕生の雑学)では、ブッダの誕生と天上天下唯我独尊の話をしました。
今回は、ブッダが出家を志すまでの話、特に四門出遊(しもんしゅつゆう)という有名なエピソードのお話をします。
以下、「ブッダ」と「ゴーダマシッダールタ」を使い分けることにします。「ゴーダマシッダールタ」は「シッダールタ」と表現します。使い分けって何?という方は天上天下唯我独尊の意味とは?ブッダ(釈迦)誕生の雑学という記事の「ブッダ」の言葉の意味の部分を確認してくださいね!
シッダールタは一族の王子だった
前回の記事で触れませんでしたが、シッダールタはサーキャ族という一族の王子でした。母は、シッダールタを生んで早くに亡くなったため、シッダールタは母の妹に育てられることになります。王子なのでシッダールタは裕福な家庭で育ったことになります。そんな裕福な家庭でシッダールタは過保護気味に育てられていきます。
ところで、シッダールタが過保護に育てられたのにはある理由がありました。
仙人の予言
シッダールタは、アシタ仙人という人物から次のような予言を受けていました。
「王子(シッダールタ)は偉人の三十二相を持っている。王になれば全世界を征服する王に、出家すればブッダになるでしょう。」と。
子の予言を聞いた王(シッダールタの父)は喜んだ反面、シッダールタが出家してしまうのではないか・・・と不安を感じるようになります。不安を感じた王は、シッダールタが出家してしまわないよう、宮殿からシッダールタを一歩も出さないようにしたと言われています。
三十二相とは? -仏像の原点-
仙人が言う三十二相とは、ブッダになる人が持つ32つの身体的特徴を言います。その特徴を全部wikipediaから抜粋してみます。長いのでパーッと見るだけでいいです。
1. 足下安平立相(そくげあんぴょうりゅうそう)
足の裏が平らで、地を歩くとき足裏と地と密着して、その間に髪の毛ほどの隙もない(扁平足)。
2. 足下二輪相(そくげにりんそう)足裏に輪形の相(千輻輪)が現れている。仏足石はこれを表したもの(魚の目)。
3. 長指相(ちょうしそう)10本の手指(もしくは手足指)が長くて繊細なこと。
4. 足跟広平相(そくげんこうびょうそう)足のかかとが広く平らかである。
5. 手足指縵網相(しゅそくしまんもうそう)手足の各指の間に、鳥の水かきのような金色の膜がある。
6. 手足柔軟相(しゅそくにゅうなんそう)
手足が柔らかで色が紅赤であること。
7. 足趺高満相(そくふこうまんそう)
足趺すなわち足の甲が亀の背のように厚く盛り上がっている。
8. 伊泥延腨相(いでいえんせんそう)
足のふくらはぎが鹿王のように円く微妙な形をしていること。伊泥延は鹿の一種。
9. 正立手摩膝相(しょうりゅうしゅましっそう)
正立(直立)したとき両手が膝に届き、手先が膝をなでるくらい長い。
10. 陰蔵相(おんぞうそう)
馬や象のように陰相が隠されている(男根が体内に密蔵される)。
11. 身広長等相(しんこうじょうとうそう)
身体の縦広左右上下の量が等しい(身長と両手を広げた長さが等しい)。
12. 毛上向相(もうじょうこうそう)
体の全ての毛の先端が全て上になびき、右に巻いて、しかも紺青色を呈し柔軟である。
13. 一一孔一毛相(いちいちくいちもうそう)
身体の毛穴にはすべて一毛を生じ、その毛孔から微妙の香気を出し、毛の色は青瑠璃色である。
14. 金色相(こんじきそう)
身体手足全て黄金色に輝いている。
15. 丈光相(じょうこうそう)
身体から四方各一丈の光明を放っている(いわゆる後光(ごこう))。光背はこれを表す。
16. 細薄皮相(さいはくひそう)
皮膚が軟滑で一切の塵垢不浄を留めない。
17. 七処隆満相(しちしょりゅうまんそう)
両掌と両足の裏、両肩、うなじの七所の肉が円満で浄らかである。
18. 両腋下隆満相(りょうやくげりゅうまんそう)
両腋の下にも肉が付いていて、凹みがない。
19. 上身如獅子相(じょうしんにょししそう)
上半身に威厳があり、瑞厳なること獅子王のようである。
20. 大直身相(だいじきしんそう)
身体が広大端正で比類がない。
21. 肩円満相(けんえんまんそう)
両肩の相が丸く豊かである。円満。
22. 四十歯相(しじゅうしそう)
40本の歯を有し、それらは雪のように白く清潔である(常人は32歯)。
23. 歯斉相(しさいそう)
歯はみな大きさが等しく、硬く密であり一本のように並びが美しい。
24. 牙白相(げびゃくそう)
40歯以外に四牙あり、とくに白く大きく鋭利堅固である。
25. 獅子頬相(ししきょうそう)
両頬が隆満して獅子王のようである。
26. 味中得上味相(みちゅうとくじょうみそう)
何を食べても食物のその最上の味を味わえる。
27. 大舌相(だいぜつそう)
舌が軟薄で広く長く、口から出すと髪の生え際にまで届く。しかも、口に入っても一杯にはならない。
28. 梵声相(ぼんじょうそう)
声は清浄で、聞く者をして得益無量ならしめ、しかも遠くまで聞える。
29. 真青眼相(しんしょうげんそう)
眼は青い蓮華のように紺青である。
30. 牛眼瀟睫相(ぎゅうごんしょうそう)
睫が長く整っていて乱れず牛王のようである。
31. 頂髻相(ちょうけいそう)
頭の頂の肉が隆起して髻(もとどり)の形を成している。肉髻(にくけい)。
32. 白毫相(びゃくごうそう)
眉間に右巻きの白毛があり、光明を放つ。伸びると一丈五尺ある。
(出典:wikipedia「三十二相八十種好」)
そしてこの三十二相をの特徴を持つ者が、シッダールタ死後に次第に作られるようになる仏像などのモチーフになっていきます。三十二相は、仏画や仏像の原点と言うこともできるかもしれません。
四門出遊(しもんしゅつゆう)のエピソード
仙人に褒めたたえられ、宮殿の中で英才教育を受けて育ったシッダールタは、苦しみというもをあまり知ることなく成長してしまいます。
そんな環境で育ったシッダールタですが、あるとき東西南北のそれぞれの城門から外出する機会がありました。
その外出時にシッダールタは4つの苦しみについて知ることになります。そして、その外出時のエピソードを四門出遊と言います。
人間4大苦しみは生・老・病・死
シッダールタは最初、城の東門から場所で外出します。するとそこに、歯抜けで腰の曲がった老人がいました。
それを見たシッダールタは御者(馬車の運転手)に何者なのか尋ねました。すると御者は「あれは老人です。人として生きる者は老いると皆あのようになるのですよ」と言いました。
また別の日、次は南門から外へ出ます。次は、瘦せ衰えた病人を目にしました。同じように御者に尋ねると御者は「あれは病人です。人として生きる者は皆病気になるとあのようになるのです。」と言いました。
さらに別の日、次は西門から外へ出ます。次は死人が横たわっているのをシッダールタは見ました。ここでも同じく御者に尋ねると御者は「あれは死人です。生ける者はみな最後はあのようになるのです。」
東、南、西の3つの門で老・病・死を目の当たりにしたシッダールタは深く悩みこんでしまいました。
「生ける者は、みな老・病・死という苦しみを味わなければならないのだ・・・」
こうして、シッダールタは、老・病・死に加えて生きること自体が苦しみであることを知り、合わせて4つの苦しみについて知ることになりました。
四苦八苦の「四苦」
四文字熟語に「四苦八苦」という言葉があります。「苦労して」とか「苦しんで」という意味です。
実は、「四苦八苦」というのは本来仏教用語でその意味というのはもっと具体的な意味を持っていました。
世の中は苦しみだらけであり、その苦しみには生き物の根源的な4つの苦しみと社会生活における4つの苦しみの計八つの苦しみがあるとシッダールタは説きました。
そして、四苦八苦のうち「四苦」というのが、上の四門出遊でシッダールタが知った生・老・病・死なのです。
以上、四文字熟語「四苦八苦」の雑学でした。四苦八苦の詳しい話はまた別の機会に説明することになると思います!
北門からの外出で出家を決意
四門出遊と言いながら、3つの門しか登場していません。ブッダは最後に北門から外へ出ます。
その時出会ったのは出家し修行をしている者でした。
シッダールタはこの修行者に尋ねます。「あなたは何をしているのですか?」
すると修行者は答えます。「私は出家し、修行をしている者です。正しい修行を行い、人々に慈悲の行うをすべき存在でございます」
これを聞いたシッダールタは、感銘を受けます。出家修行者の生活こそが、別の3門で知った四苦(生・老・病・死)を克服するための理想の生活であると。
この修行者との出会いをきっかけに、シッダールタは王に内緒で城を抜け出し、長い長い修行生活を送ることになります。
四門出遊の意味とは
四門出遊の意味合いは次の2つにあります。
・シッダールタが出家するきっかけとなったエピソードである
・シッダールタが四苦八苦を知るきっかけになった
この2点の意味合いで重要なエピソードと言えます。特に「四苦八苦」というのは仏教における根源的な思想です。なぜって、世の中が苦しみだらけでないとしたら、そんなに頑張ってまで悟りを開く必要はないからです。「四苦八苦」の世の中だからこそ、修行し悟りを開いて、苦しみのない世界を目指すのです。
四門出遊のエピソードは実はなかった説も!?
ここまで話しといてあれですが、四門出遊のエピソードは実は存在しないという説もあります。正確には、存在しないというか別の人物のエピソードであるという説があります。ブッダ死後の間もないころの仏教では、別の人物のエピソードであったということがわかっているようです。
まとめ
以上、四門出遊とシッダールタ出家のお話でした。
ブッダの話をしていくと、今回の記事で言うところの「四苦八苦」みたいに普段何気なく使っている言葉の由来的なものがたくさんわかって面白いです。仏教の面白さというのはそんなところにもあるんですね。
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