面白いほどわかる金本位制!簡単にわかりやすく徹底解説【メリット・デメリットと制度の歴史を確認しましょう】

この記事は約11分で読めます。

今回は、歴史や政治・経済の話で頻繁に登場する金本位制きんほんいせいについてわかりやすく丁寧に解説していきます。

この記事を読んでわかること
  • そもそも金本位制って何?
  • 金本位制はなぜ始まったの?
  • 金本位制の歴史を知りたい
  • 金本位制は、なぜ今は使われていないの?
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金本位制とは?〜お金の本質は「信用」です〜

金本位制とは、お金(通貨)の価値を金(ゴールド)で担保する仕組みのことです。

少し話は変わりますが、なぜお金を使うといろんな物が買えるのでしょうか?

それは、多くの人が「お金があればいろんな物が買える」と信じているからです。だからこそ、人々はお金を求めて経済活動(商売・貿易など)をしているのです。

しかし、これが信じられなくなったらどうでしょう。

  • 1ヶ月後には、お店でお金(日本円)が使えなくなりそうだったら?
  • 半年後に、100円で買えた物が10,000円になって(お金の価値が1/100に下がって)、欲しい物がお金(日本円)で買いにくくなると感じたら?

多くの人がこう考えるようになると、「100円でこのお菓子をください」とお店でお金を出しても

「いやいやww日本のお金なんて持っていても誰も使わないし欲しがらないからいらねーわ」

とか

「この100円のお菓子は半年後に10、000円になるかもしれないんだから、100円じゃ売らねーわww」

と断られて、お金でいろんな物が買えなくなってしまいます。(そして、商品が値上がりする前に必要なものを買おうと、スーパーには多くの人たちが殺到し、パニックになることでしょう。)

つまり、お金は「みんなが安心して使える」という信用がなければ機能しないのです。

ではどうやってお金に信用をもたせるべきか?

そこで登場するのが金本位制です。

国が、通貨を「通貨○円=金○g」って感じで金(ゴールド)と交換できるようにして、「何か不測の事態があっても、この通貨はゴールドと交換できるから安心だね!」と通貨の価値を金で担保することで、通貨に信用を持たせるようにしたのです。

通貨の価値を金で担保すれば、通貨そのものは紙切れ(紙幣)でもOKであり、「金と交換可能な紙幣」のことを兌換銀行券だかんぎんこうけんと言います。

金本位制の下では、通貨の価値は金という金属物質の信用の元に成り立っています。

金本位制を導入している国は通貨と金をいつでも交換出来るように準備が必要であり、発行した通貨の総額分の金を保管しなければなりません。

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なぜ金なのか?

お金の価値を担保するために金が選ばれたのは、金は希少な金属であり、世界中の人が価値があると考える物だったからです。

 さらに、金は見た目も美しく、おまけに腐食しにくいため錆びたり劣化することもありません。古来から金は世界各地で宝飾品の他、貴族の権威の象徴、宗教的な儀式に使われてきました。

金には、古今東西・世界中で培われてきた圧倒的なブランド力があるのです。だからこそ、通貨の価値を担保にするものとして、金が採用されたのです。

通貨が金と交換できるとなれば、通貨は金の圧倒的なブランド力の恩恵を受て、その信用度は爆上げするわけです。

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金(ゴールド)以外でもOKです

通貨の価値を担保するために必要な物というのは、結局のところ「通貨を使う人達が共通の価値を見出している何か」です。この「何か」にピッタリだったのがたまたま金(ゴールド)なだけで、この条件を満たせば他の物を使ってもOKです。

 ある地域で人々が、川辺の石に大きな価値を見いだすようなら、極論かもしれませんが石本位制というのも成立するかもしれません。

実際、江戸時代の日本ではお米を担保にした米本位制(石高制こくだかせい)を採用していました。

幕府は藩の規模・武士の給与・年貢、全てを米の量で表しました。これは日本がお米をとても神聖視していた事や、食べ物として価値があった事が背景にあります。

しかし、米本位制(石高制)には大きな問題がありました。それは、

・飢饉が起こるとお米の量が減る=通貨量が減る

・豊作でお米の量が増える=通貨量が増える

という感じで、通貨の価値を担保するお米の量が、自然現象(天運)によって大きく変動してしまうことです。これでは、通貨の価値を安定して担保することは難しいです。

しかし、金の量は大嵐が来ようが飢饉が来ようが変動することはありません。米本位制(石高制)と比べると、金本位制の方が圧倒的に安定していることがわかります。

日本では、明治時代から金本位制の導入準備が進められ、1897年から金本位制を採用するようになりました。

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金本位制はどうやって始まったの?

金本位制発祥の地はイギリスです。1816年に金本位制を世界で初めて導入しました。

イギリスが金本位制を導入したきっかけは、イギリスで起こった産業革命でした。

産業革命によって商品の大量生産が可能になると、イギリスはこんなことを考えました。

イギリス
イギリス

大量生産した商品を世界中に輸出して大儲けしてやろう!

しかし、輸出をしようとした時、イギリスは大きな問題に直面します。

イギリス
イギリス

輸出を増やしたらいろんな国の通貨を手に入れることができた。

でも、これってちゃんと使えんの?明日になったら通貨の価値がなくなってゴミになってるとかないよな・・・(汗

ここで最初にお話しした「お金が機能するには信用が必要」って話が登場します。

イギリスがこの悩みに対処するために発案したのが金本位制でした。

イギリス
イギリス

そうだ!通貨を金と交換できるようにして、通貨の信用度を上げよう。

そして、この仕組み(金本位制)を輸出先の国にも広めれば、手に入れた輸出先の通貨を安心して持つことができるぞ・・・!!

イギリスは自ら金本位制を採用し、輸出先の国にも同じ金本位制を採用することを求めました。

イギリスからの商品輸出を求める国もこれに応じて次々と金本位制に以降し、イギリスを中心に新しい国際経済の秩序が構築されるようになったのです。

産業革命・金本位制の導入と、イギリスは革新的な取り組みを次々と行っていったのですね。

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金本位制にはデメリットもある

ここまでは金本位制の良い話。

都合の良い話には必ず裏があるものです。金本位制もその例にもれず、デメリットも存在します。

デメリット1:国は金の保有量までしか通貨を持つことができない

金本位制を採用すると、国の経済規模が大きくなっても(通貨の流通量が増えても)、国内にある金保有量までしか通貨を持つことができません。

つまり、国内のインフラ整備や社会福祉等のために通貨を増やしたくても、簡単に増やすことができません。

しかも、国の持つ金保有量は貿易によって変動してしまうため、自国でコントロールすることが困難でした。

以下に貿易と金保有量の関係をまとめておきます。

輸出>輸入のケース

輸出が増えれば、他国から通貨をゲットできます。この相手の国が金本位制を採用していれば、その通貨は相手国が持つ金と交換可能なので、輸出でもうけた国は実質的に「輸出によって金を得た」ことになります。

つまり、輸出をすればするほど自国の金を増やせるわけです。

当時、大量の輸出を行っていたのはイギリスなどの大国でしたので、金本位制は強い国に有利な制度・・・とも言えるでしょう。

輸入>輸出のケース

これは上のケースの真逆です。

輸入が増えると他国に通貨が渡ってしまい、実質的に自国の金保有量が減少することになります。

通貨は自国の金保有量までしか持てないので、その一部が輸入によって他国に渡ると、自国で使える通貨が減り、経済活動が停滞してしまいます。

輸入が多い国は、国力の弱い国が多かったので、金本位制は弱い国に不利な制度・・・とも言えるかもしれません。

デメリット2:金はとても希少である

通貨の価値(信用)の担保に金が採用されたのは、すでにお話ししたように、金に希少価値があって世界中の人が欲する物だからです。

しかし、その希少性のせいで金本位制は、「全ての国が金本位制を導入するには金の絶対量が足りない」「経済規模が発展しても、金の量は増やせない」というジレンマを抱えることになります。

金本位制は、通貨の価値を安定させるという点ではとても優秀な制度ですが、経済発展には不向きな制度だったのです。

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戦争・世界恐慌によって金本位制は崩壊へ・・・

1914年に第一次世界大戦が起こると、ヨーロッパ各国は、金本位制を一時的にストップしました。

戦争に必要な莫大な戦費を賄うには、

1:貨幣を大量に発行して国内のお金を増やす。

2:武器を大量に輸入する。

の2択がありました。

・・・が、金本位制を採用していると、そのどちらも不可能だったのです。

金本位制では、金の保有量以上の通貨を持つことができないので、1番の政策は簡単に行えないし、

輸入を増やして、輸入>輸出となれば国内の金が流出して、国力低下を招いてしまうからです。

金本位制をストップしている間、通貨の価値は国が担保しました。

国が「俺(国)が絶対に通貨の価値を安定させてやるから安心して通貨を使いなさい」と国の威厳・信用を担保にして通貨の価値を維持しようとしたのです。

国の信用によって通貨の価値を担保することを管理通貨制度かんりつうかせいどと言います。

第一次世界大戦後、金本位制は復活しましたが、1929年に起こった世界恐慌により再び金本位制は中断。世界ではブロック経済という仕組みが流行りだしました。

この金本位制の中断は、第二次世界大戦が終わるまで続くことになります。

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金本位制復活!〜ブレトン=ウッズ会議〜

第二次世界大戦の終わりが見えてきた1944年、戦争を有利に進めていたアメリカ・イギリスなどの連合国は、戦後の世界経済について議論するための会議を開きます。(ブレトン=ウッズ会議

ブレトン=ウッズ会議の中で、金本位制の復活が決まります。

・・・が、1つ問題がありました。それは、2回の戦争を経た結果、世界の2/3の金をアメリカが保有するようになったことです。

アメリカは、第一次・第二次世界大戦による被害をほとんど受けず、戦争特需で大量の軍備を輸出した結果、終わってみればイギリスを抜いて世界ダントツの経済大国に成長していたのです。

上でも説明したように、世界で産出される金には限界があります。アメリカが世界の2/3の金を持っていては、他の国が必要な量の金を保有することができません。

そこで、「各国が自国に必要な金の量を保有する」という発想ではなく、「アメリカがドルを介して世界中の必要な金を保有する」という仕組みを採用することにしました。

金と交換できる通貨をドルのみに限定し、各国が自国通貨(日本円やポンドなど)を金に代えたいときは、日本円→ドル→金とドルを仲介することによって行います。

経済大国かつ戦争の勝者であるアメリカが、世界の通貨価値をコントロールしようとしたわけです。こうして、アメリカ主導の新しい金本位制が始まりました。

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金本位制の終焉(しゅうえん)

・・・が、この新しい金本位制は長くは続きません。

ヨーロッパや東南アジアが戦後復興を遂げて経済成長すると、これらの国からアメリカへの輸出が増え、アメリカの金が各国に流出。

世界経済をコントロールするはずだったアメリカの金保有量にも陰りが見えてきます。世界経済の成長にアメリカの金の量が追いつかなくなってしまったのです・・・。

さらに1960年代、アメリカのベトナム戦争への介入が新しい金本位制にとどめを刺しました。大量の物資・武器を輸入したせいで、アメリカの金が大量に流出。アメリカ財政も悪化し、アメリカは経済的に危険な状況に立たされます。

1971年8月、ついにアメリカがギブアップします。アメリカのニクソン大統領が、金本位制の一時停止を電撃発表したのです。(ニクソン=ショック

アメリカ
アメリカ

このままだと、金本位制が崩壊して世界が大パニックになるから、数ヶ月だけ時間をくれ。

その間に、対応策を考えるからさ!

1971年12月には世界各国の首脳が今後の世界通貨制度をめぐって話し合いを行い、スミソニアン協定という協定が結ばれて、金本位制はまた復活します。

しかし、戦争や世界経済の発展に対応できない金本位制への信頼は大きく低下し、一旦停止ではなく本格的に金本位制を廃止する国が続出。

1973年頃から金本位制を廃止する国が増え、1978年には公式に金本位制は終わりを告げることになります。

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金本位制から管理通貨制度へ

金本位制が廃止された時、各国の通貨は何を担保にすればよいのか?

実は、答えはすでにこの記事の中に登場しています。それは戦時中、金本位制を中断したときに多くの国で採用していた通貨管理制度でした。

通貨管理制度とは、各国が自国の信用に基づいて通貨の価値を維持することです。

通貨管理制度では、通貨の価値は基本的に需要と供給によって決められ、その価値は常に変化します。しかし、通貨の価値に異常が起こったときには、国が通貨政策(金利の調整など)によって自国の通貨価値を守り、通貨の価値を担保してくれる仕組みです。

ふだん意識することはまずありませんが、私たちが円を何気なく使えているのは「何かがあっても日本国が通貨の価値を守ってくれるから安心だね!」という信頼があるおかげです。

一方で、国の通貨政策が失敗すると大パニックに陥るリスクもあります。最近だと2015年に、スイスの通貨「フラン」の価値をスイス政府がコントロールできなくなり、一時、為替や世界株式が大パニックになったことがあります。(スイスフラン・ショック)

参考iFinance(スイスフランショック)

通貨管理制度は、現在もなお多くの国で採用されている制度で、日本も通貨管理制度を採用しています。

日本では、日本銀行が主体となって日本円に価値を守ってくれています。私たちが普段、当たり前にお金を使えるのは、先人たちの知恵と試行錯誤の賜物であり、日本という国がお金の価値を守ってくれているおかげだということを忘れてはいけません。

【大事なお知らせ】YouTube始めました!!

2024年2月、YouTubeチャンネル「もぐもーぐヒストリー」を開設しました。

まだ動画は少ないですが、学生や大人の学び直しに役立つ動画をたくさん増やしていくので、ぜひ下のアイコンからチャンネル登録、よろしくお願いいたします。

この記事を書いた人
もぐたろう

教育系歴史ブロガー。
WEBメディアを通じて教育の世界に一石を投じていきます。

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コメント

  1. 田中美絵 より:

    目から鱗でした
    長年の喉の支えが取れましたありがとうごさまいました