石長比売(イワナガヒメ)の呪いと縁結びのご利益のエピソードをわかりやすく!【日本神話(古事記)】

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今回は、日本神話(古事記)に登場する石長比売(イワナガヒメ)にまつわるエピソードを紹介しようと思います。

 

 

 

石長比売(イワナガヒメ)のエピソードは、はっきり言って神話とは思えないような鬼畜エピソード。「これが神話で書く話なのか!?」と思うかもしれませんが、そんな神話らしくないところもまた、日本神話(古事記)の良さなのだと思う(ポジティブ)。

 

イワナガヒメは縁結びの神として祀られることがありますが、この記事を読んでいただければ、イワナガヒメが縁結びの神様となった理由も合わせてわかります!

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石長比売(イワナガヒメ)登場までの神話のあらすじ

日本神話と言っても結構長いので、石長比売(イワナガヒメ)のエピソードがどんなタイミングで始まるのか、ハイライトで確認しておきましょう!

国が生まれる
神が生まれる
神々の地上界を巡る数々のエピソード
天孫(名はニニギ)が地上界に降臨する。(今でいう宮崎県に降り立ったと言われる)
ニニギがブサイクな女性を無下にした罰により、神にも寿命が生じる。この寿命がある神の子孫こそが天皇であり、古事記(日本神話)は神々の話から天皇の話へと舞台を大きく変える。(石長比売はここで登場!!)
ニニギ3代目子孫のイワレビコが「地上を治めるのによう場所はないものか?」と宮崎県から東に今でいう奈良へ向かう。
イワレビコが日本初代天皇の神武天皇として即位
以下、推古天皇までの歴代天皇の話が続く
神が寿命を持つようになるという日本神話の中の超重要シーンでイワナガヒメは登場します。
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石長姫(イワナガヒメ)と邇邇芸命(ニニギノミコト)

さて、ある時、天界の神々は荒れた地上界を本格的に治めようと考えました。そこで地上界に派遣されたのが邇邇芸命(ニニギノミコト。以下「ニニギ」って言います!!)

 

 

地上に降りたニニギは、早速、美人な女性を見つけてナンパを始めます。地上治める気なくてワロタw

 

 

ニニギが見つけた美人は、木花之佐久夜毘売(コノハナノサクヤビメ。以下「サクヤ」って言います!)という女性です。

 

 

ニニギはサクヤに尋ねます。

 

ニニギ「あなたは誰の娘なんだい?」

 

サクヤ「私は、山の神様である大山津見神(オオヤマツミノカミ)の娘よ。姉に石長比売(イワナガヒメ)がいるわ。」

 

ニニギ「そうか、結婚しよう。いいかな!?」(超弩級ストレート)

 

サクヤ「私には判断できません。父に聞いてみます。」

 

 

地上に降りて早々、いきなりの超展開です。

 

 

父の大山津見神は喜びます。

 

大山津見神「天界からやってきたニニギと結婚!?それはめでたい。姉妹揃ってニニギに嫁ぎなさい!早速準備しよう」

 

 

こう言って、大山津見神はサクヤとイワナガヒメをニニギに嫁がせてしまいます。

 

 

※神話(古事記)が作られたのは700年前後だと言われていますが、当時は、一夫多妻制は当たり前。血縁関係を強くするために姉妹で男に嫁ぐことも普通にあったのです。

 

 

ここから石長比売(イワナガヒメ)の悲劇が始まります。

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ニニギ「イワナガヒメ?ブサイクはお断りなんだがw」

愛しのサクヤちゃんが嫁いでくれて、ウッキウキなニニギ。

 

 

しかし、サクヤの横に見るに耐えない醜い女性が立っていました。その女性こそが、この記事の主役である石長比売(イワナガヒメ)なのです。

 

 

ニニギはその醜い姿に恐れを感じ、なんと石長比売を追い返し、美人のサクヤちゃんとだけ楽しい一夜を過ごします。

 

 

 

石長比売(イワナガヒメ)は悲しみに暮れたことでしょう。戻ってきた娘を見た大山津見神はこれを大いに恥じ、こんなことを言います。

 

大山津見神「私がサクヤとイワナガヒメの2人をニニギに嫁がせたのにはちゃんと理由があるのだ。イワナガヒメがいれば、雪が降り風が吹いても常に石のように動かない、サクヤがいれば木の花が咲くように栄えることができる。そんな願いが込められているのだ。

 

 

しかし、ニニギは不変・不動の力を込めた石長比売を追い返してきた。ニニギの子孫はもはや、桜の花のように儚く散る存在となることだろう」

 

 

こうして、ニニギの子孫は寿命を持つようになり死という運命から免れることができなくなったのでした。サクヤもイワナガヒメも秘めた力を持つ女性であり、それにニニギは気付けなかったのです。

 

 

ニニギの子孫とはつまり天皇です。天皇が神の子であるにも関わらず、人間と同じように寿命があるのはこのニニギのクズエピソードが原因なのです。

 

 

まとめると、「ニニギが美人をナンパしたら、ブスも付いてきて、そのブスを突き放したら永遠の命が無くなってしまった」という感じでしょう。

 

 

「人を見た目で判断すると痛い目見るよ!」という教訓がこの神話エピソードには込められているような気がします。

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イワナガヒメ「私は、みんなを幸せにする縁結びの神様になるわ!!!」

そんなエピソードがある一方で、京都にある貴船神社ではイワナガヒメは縁結びの神様として祀られています。

 

 

実はこのエピソード以降、神話にはイワナガヒメは登場しません。しかし、貴船神社ではイワナガヒメのこのエピソードにはちょっとした続きがあると考えます。

 

 

ニニギの酷い仕打ちに自らを恥じたイワナガヒメは、「私はここ(貴船神社)で縁結びの神として人々のために頑張るわ!!」と人のために力を振るうことを決めたと言うのです。どんだけいいヤツなんだよイワナガヒメは。

 

 

「自分が幸せになれないのなら、せめて他の多くの人たちを幸せにしたい」そんな聖人のようなイワナガヒメの気持ちが垣間見えます。

 

 

さらに、イワナガヒメは永遠の象徴です。イワナガヒメの力を使えば、人と人を「永遠の愛で結ぶ」こともできるはず。そんなイメージからイワナガヒメは縁結びの神へと変貌することになったのです。

 

 

もし貴船神社に縁結びのお願いをすることがあるのなら、辛い経験をしたイワナガヒメを労い、感謝の気持ちを忘れないようにしましょうね。

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イワナガヒメまとめ

以上、イワナガヒメについてサクッと紹介してみました。

 

 

「美しいものは儚く、醜いものは永遠である」っていうのは時代・国を問わず世界共通の認識であるように思います。日本神話(古事記)でもまさにその通りなんですが、これはなぜでしょうか。

 

 

それは物事の真理として「秩序のあるものは美しく、無秩序なものは醜い」というのがあるからだと私は思っています。サクヤとイワナガヒメは花と石の対比であり、まさにその通りになっています。

 

 

高層マンションが規則正しく立ち並ぶ東京の街には秩序がありますが、荒廃したアフリカの砂漠には秩序がありません。しかし、同じ状態をどちらが長い時間維持できるかというと十中八九アフリカの荒廃した砂漠になります。東京の街は人々が手入れをしなければ、荒廃して姿形を変えてしまうからです。ほっといても変わらないアフリカの砂漠の方が不変であると言えるわけです。

 

※統計物理学の世界では「エントロピー(煩雑さ)」という概念があります。エントロピーが大きい(煩雑)なものは醜く、エントロピーが小さい(煩雑ではない)ものは美しいということ。そしてこの世の全ての物事・事象は放っておくと、時間の経過によりエントロピーが大きくなる。

 

 

美と醜。花と石。イワナガヒメのエピソードは、考えようによってはとても深遠なテーマが秘められているような気がしています。日本神話はクレイジーなお話も多いんですが、本当に良くできた物語だなと感心するばかりです。

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この記事を書いた人
もぐたろう

教育系歴史ブロガー。
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