今回は、地獄(仏教)についてのお話。
最近、「地獄の経典」と言う本を読みました。「往生要集」を読んでいて、地獄の詳細が気になったのが本を手にとった理由です。
で、読んでいたら面白くなって、地獄行き診断サイトなるものを作ってしまいました。笑
というわけで、地獄について色々調べてみたのでこの記事で整理しておこうと思います。なお、ここで紹介する地獄は仏教上の地獄であり、その内容は主に「往生要集」「正法念処経」に基づいています。
そもそも地獄とは?
日常では当たり前のように使われる「地獄」という言葉ですが、「そもそも地獄ってな何?」という話からしていきます。
仏教では、世の中には6つの世界があって、人々は亡くなると、その6つの世界を無限ループすると考えられています。仏教用語で「六道輪廻(ろくどうりんね)」と言います。
六つの世界は・・・
と呼ばれ、私たちが生きている世界は人間道です。私たちが人間道で一生を終えると、人間道での行いに応じて6つの道のいずれかへ転生します。これが俗に言う「来世」ってやつです。
この6つの世界の違いは何か簡単に言ってしまうと「苦しみの多さ」です。上から順番に苦しみが少ない世界になっています。天道が苦しみの一番少ない世界、そして私たちの住む人間道は2番目に苦しみが少ない世界。そして、6つある世界の中でも最悪の転生先が地獄道、つまり「地獄」なのです。現世(人間道)で悪事を働いた者が落ちます。
ちなみに、この6つの世界以外に苦しみの一切ない特別な世界も存在しています。これが「浄土(じょうど)」です。浄土は、悟りの境地に達した者だけが到達できる世界。仏教の開祖であるブッダは悟りを開き浄土に行きました。仏教はこの苦しみのない浄土の世界を目指す宗教なのです。
こう考えると、仏教の世界において、地獄は最底辺に位置することになります。
地獄にはいろんな種類がある!
地獄は現世(人間道)で悪い行いをした人が向かう場所です。でも、「悪い行い」って具体的に何なんでしょうか。
実は地獄に落ちる条件となる悪事は一つだけでなく、多く存在します。そして地獄側も、悪事の種類に対応するため、8つの地獄に分かれています。
8つの地獄はその地獄度に応じて・・・
となります。
さらに、それぞれの地獄の周辺には小さな地獄がいくつも点在しています。こんな感じで一言に「地獄」と言っても、実に多様な世界がそこに広がっています。
というわけで、どんなことをした人が地獄へ落ちるのか下にまとめてみました。
周辺の小地獄はもう少しマニアックな条件が付きます。
意外にも殺生が一番罪が軽く、性行為や酒など今では当たり前の行為が地獄に落ちる条件になっています。嘘も地獄に落ちる条件になっており、実は地獄を免れるのは至難の業です。
最も過酷な無間地獄には五逆と言う条件があります。これは
の5つを指します。さすがにここに落ちる人は多くはありません。
次にそれぞれの地獄を簡単に見ていきます。最後まで読めば地獄マスター間違いなし!!
地獄レベル1:等活地獄
地獄の中では一番苦しみの少ない地獄が等活地獄です。
殺生をしたら落ちる地獄ですが、残念ながらほとんどの人はこの等活地獄に落ちます。虫一匹殺したことのない人なんていませんからね。
万が一、虫一匹殺したことのない人がいたとしても、肉を食べたことのある人は地獄行きです。等活地獄周辺の小地獄の1つである瓮熟処(おうじゅくしょ)は、毛のある動物の肉を食べたら落ちる地獄。毛のある動物ということで鳥・牛・豚はアウト。魚はOK。
というわけで、現代社会を普通に生きていると必ずこの等活地獄に落ちます。地獄行きを回避するには、現世で殺生の罪を上回るような善き行いが必要です。
等活地獄に落ちると、罪人同士での殺し合いを1250万年続けなければいけません。
等活地獄の周辺には以下の16つの小地獄が広がっています。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
1屎泥処(しでいしょ) | 弱い者イジメ |
2刀輪処(とうりんしょ) | 強盗傷害 |
3瓮熟処(おうじゅくしょ) | 有毛動物を食べる |
4多苦処(たくしょ) | 暴力を振るう |
5闇冥処(あんみょうしょ) | 宗教信仰により羊、亀を殺す |
6不喜処(ふきしょ) | 音で怯えさせて動物を殺す |
7極苦処(ごくくしょ) | 短気でキレて暴れる |
8〜16(省略) | 不明 |
8〜16の小地獄は名前はわかっていますが、詳細については記録が残されていません。
地獄レベル2:黒縄地獄
殺生に加えて、盗みを働いたものが落ちます。ここに落ちると鉄縄で体をズタボロに引き裂かれ、一億年拷問を受け続けます。
小地獄は以下のとおり。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
1等喚受苦処(とうかんじゅくしょ) | 働かずに物を盗む |
2旃荼処(せんだしょ) | 嘘をついて福祉を受ける |
3畏鷲処(いじゅうしょ) | 強盗殺人 |
4〜16(省略) | 不明 |
4〜16の小地獄は詳細が残されていません。
地獄レベル3:衆合地獄
殺生、盗みに加え性行為をした者が落ちます。厳しいですね。
ここに落ちると山々に挟まれ、時に天から山が降ってきて体を粉々にされ、最後はどう猛な鳥に体を食われます。この苦しみを8億年の間、味わい続けます。
小地獄は以下のとおり。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
大量受苦悩処(たいりょうじゅくのうしょ) | フェチプレイをする |
割刳処(かっこしょ、かちこしょ) | 口を使った性行為(女性限定) |
脈脈断処(みゃくみゃくだんしょ) | 男性を誘惑して性行為(女性限定) |
悪見処(あくけんしょ) | 子供に性的虐待 |
団処(だんしょ) | 牛や馬と性行為 |
多苦悩処(たくのうしょ) | 男性同士で性行為 |
忍苦処(にんくしょ) | 戦争で他人の妻を寝取り、他人に回す |
朱誅処(しゅちゅうしょ) | 羊やロバと性行為 |
何何奚処(かかけいしょ) | 兄弟、姉妹と性行為 |
涙火出処(るいかしゅっしょ) | 真面目な尼僧と性行為 |
一切根滅処(いっさいこんめつしょ) | 肛門を使ったプレイ |
無彼岸受苦処(むひがんじゅくしょ) | 既婚男性が人妻と不倫 |
鉢頭摩処(はちずましょ) | 修行僧なのに性行為 |
大鉢頭摩処(だいはちずましょ | 僧侶のふりをして女性を騙して性行為 |
火盆処(かぼんしょ) | 過去の贅沢、女性が忘れられない修行僧 |
鉄末火処(てつまっかしょ) | 美女の誘惑に負けて性行為をした修行僧 |
生々しくてツッコミどころも多いですが、ここでは字数の関係で多くは触れません(意味深)。一つ言えるのは、地獄に落ちる条件になるということは、そーゆーことをする人が結構いたということです。
地獄レベル4:叫喚地獄
殺生、盗み、性行為に加えてお酒を飲んだ人が落ちます。鬼にいろんな方法でリンチにされる拷問が64億年続きます。ここまでになると人間にとってはもはや永遠の時間に近いです。
小地獄は以下のとおり。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
大吼処(だいくしょ) | お酒を無理やり人に飲ませる |
普声処(ふしょうしょ) | 比丘に認められた修行僧に記念と称して酒を飲ませる |
髪火流処(はっかるしょ) | 戒律を破って酒を飲ませようとする |
火末虫処(かまつちゅうしょ) | 酒を薄めたりしてインチキ商売をする |
熱鉄火杵処(ねつてっかしょしょ) | 動物を酔わせて捕まえて売り飛ばす |
雨炎火石処(うえんかせきしょ) | 像に酒飲ませて暴れさせる |
殺殺処(せつせつしょ) | ガードの固い女性を泥酔させて行為する |
鉄林曠野処(てつりんこうやしょ) | 酒に不純物を混ぜ込む |
普闇処(ふあんしょ) | 安い酒を嘘をついて高く売りつける |
閻魔羅遮曠野処(えんまらこうやしょ) | 病人や妊婦に「元気になる薬」と嘘をついて酒を飲ませる |
剣林処(けんりんしょ) | 旅人に酒を飲ませて金品を盗む |
大剣林処(だいけんりんしょ) | 荒野の中、暴利で酒を売りつける |
芭蕉烟林処(ばしょうえんりんしょ) | ガードの固い女性に酒を飲ませて襲う |
煙火林処(えんかりんしょ) | 政治家や役人に酒を飲ませて賄賂をもらう |
火雲霧処(かうんむしょ) | 真面目に生きようとしている人に酒を飲ませて、馬鹿にする |
分別苦処(ふんべつくしょ) | 部下に酒を飲ませて暴れさせる |
お酒を飲むというよりも、人にお酒を飲ませると地獄に落ちるケースが多いです。お酒を他人に強要することは仏教でも許されることではありません。
地獄レベル5:大叫喚地獄
殺生、盗み、性行為、酒、に加えて嘘をついた人が落ちます。大叫喚地獄の管理人は、有名な閻魔大王(えんまだいおう)です。
「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」ということわざもあるように、嘘を司る地獄の番人です。
嘘を付かずに生きるのはほとんど不可能なので、この地獄も等活地獄と同じぐらい私たちにとって身近な地獄になっています。
小地獄は以下のとおり。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
吼々処(くくしょ) | 人間関係をぶち壊して恩を仇で返す |
受苦無有数量処(じゅくむうすうりょうしょ) | 妬んで人の悪口を言う |
受堅苦悩不可忍耐処(じゅけんくのうふかにんたいしょ) | 部下に責任をなすりつける上司 |
随意圧処(ずいいあつしょ) | 他人の山林、田畑を奪う |
一切闇処(いっさいあんしょ) | 人妻を襲ったくせに、「女から誘ってきた」と嘘をつく男 |
人闇煙処(じんあんえんしょ) | 「一緒に頑張ろう」と言い合った友人を裏切る |
如飛虫堕処(にょひちゅうだしょ) | 修行僧の持ち物を盗んで打ってしまう |
死活等処(しかつとうしょ) | 出家してないのに出家したと嘘をつく |
異々転処(いいてんしょ) | 嘘をついて他人の事業を失敗させる |
唐悕望処(とうきぼうしょ) | 病気や貧困で困っている人を無視する |
双逼悩処(そうひつのうしょ) | 集団の和を乱す |
迭相圧処(てっそうあつしょ) | 財産や遺産のことで親族と争う |
金剛嘴烏処(こんごうしうしょ) | 「病院に行かなくても大丈夫」と嘘をついて、必要な治療をさせない |
火鬘処(かまんしょ) | 罪を犯した公務員 |
受鋒苦処(じゅほうくしょ) | お布施をもらったのに文句を言う人 |
受無辺苦処(じゅむへんくしょ) | 人の上に立つ立場なのに、人を騙して良い思いをしようとする |
血髄食処(けつずいしょくしょ) | 民に重い税を課しながら、贅沢三昧をしている政治家や役人たち |
十一炎処(じゅういちえんしょ) | 賄賂を受け取った権力者 |
権力者関係の地獄が多いですね。とりあえず、毎年負担の増える社会保険料とか消費増税を決めている政治家らは血髄食処に落ちるのではないでしょうかね。
地獄レベル6:焦熱地獄
殺生、盗み、性行為、酒、嘘、に加えて邪見を広めた者が落ちる地獄。
邪見と言うのは「仏教から見た邪見」であり、仏教要素の強い地獄です。あまり私たちには馴染みはないかもしれません。
焦熱地獄周辺の小地獄は以下のとおり。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
大焼処(だいしょうしょ) | 殺生をすると救われると信じ、実行した人 |
分荼梨迦処(ぶんだりかしょ) | 絶食自殺を望む人 |
龍旋処(りゅうせんじょ) | 礼儀作法を知っているのに、だらしない振る舞いをする人 |
赤銅弥泥魚旋処(しゃくどうみでいぎょせんしょ) | 「世の中全部運命で決められてるし頑張っても意味ねーわ」と人に広めたことのある人 |
鉄钁処(てっかくしょ) | 修行僧を殺すことが救済につながると言いふらす人 |
血河漂処(けつがひょうしょ) | 自傷行為をすれば、罪が消えると考えてる人 |
饒骨髄虫処(にょうこつずいちゅうしょ) | 正論に耳を傾けず、妄言ばかり言う人 |
一切人熟処(いっさいにんじゅくしょ) | 放火魔 |
無終没入処(むしゅうぼつにゅうしょ) | 仏教の教えの基礎を全否定する人 |
大鉢特摩処(だいはちとくましょ) | 真面目な修行僧を殺した人 |
悪険岸処(あくけんがんしょ) | 入水自殺者 |
金剛骨処(こんごうこつしょ) | 「今が楽しければ他のことはどーでも良い」と人に教え広めた人 |
黒鉄縄剽刀解受苦処(こくてつじょうびょうとうかいじゅくしょ) | 五逆十悪と言う仏教でやってはダメなことを平然とする人 |
那迦虫柱悪火受苦処(なかちゅうちゅうあくかじゅくしょ) | 諸行無常、世は常に変化すると認められない人 |
闇火風処(あんかふうしょ) | 屁理屈ばかり言って、諸行無常を認めない人 |
金剛嘴蜂処(こんごうしほうしょ) | 「世の中には変わらないものもある」と諸行無常を否定する人 |
最後の諸行無常ラッシュは、諸行無常が仏教の重要な考え方の1つであることを意味しています。
地獄レベル7:大焦熱地獄
殺生、盗み、性行為、酒、嘘、邪見の流布、そして修行僧の邪魔をした人が落ちる地獄。現代風に言えば「信念のために一生懸命頑張っている人の邪魔をすると地獄に落ちる」ってことです。これの仏教版だから、対象が修行僧になっています。
大焦熱地獄周辺の小地獄は以下のとおり。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
一切方焦熱処(いっさいほうしょうねつしょ) | 仏法を信じ、真面目に生きている女性を誘って、その道を外させた者 |
大身悪吼可畏之処(だいしんあくくかいしょ) | 修行に邁進する女性の修行僧に性行為を迫る |
火髻処(かけいしょ) | 仏教の教えを極めつつある女性に、非道な行為をする |
雨沙火処(うしゃかしょ) | 他人の模範になるまで仏教の教えを極めた女性を、日常的に性行為を迫る |
内熱沸処(ないねつふっしょ) | 僧侶ではないけど、真面目に仏法の教えを学んでいる女性をそそのかして、仏法の道からそらす |
吒々々齊処(たたたざいしょ) | 真面目に頑張って生きる女性に手を出し、その姉妹、母にまで手を出す |
普受一切資生苦悩処(ふじゅいっさいしせいくのうしょ) | 真面目に頑張って生きる女性に酒を飲ませて行為に及ぶ |
鞞多羅尼処(びたらにしょ) | 真面目に頑張って生きる女性に媚薬を使って行為に及ぶ |
無間闇処(むけんあんしょ) | 欲を絶って修行している男に女性を近づけ、修行を邪魔する |
苦髻処(くかいしょ) | 真面目に修行する男を誘っておきながら、部が悪くなると「男から襲ってきた」と嘘をつく |
雨縷鬘抖擻処(うるまんとそうしょ) | 一生懸命修行に励み、正式に僧と認められた女性を襲う。 |
髪愧烏処(ほっきうしょ) | 酔った勢いで、姉妹と行為に及ぶ |
悲苦吼処(ひくくしょ) | 修行に励んでいたけど「女性が男を好きなるのはしょうがない」と説かれ、誘惑に負けて男に身を委ねた女性 |
大悲処(だいひしょ) | 恩師や教え子の妻に手を出す |
無非闇処(むひあんしょ) | 自分の息子の妻に手を出す |
木転処(もくてんしょ) | 恩人の妻に手を出す |
まぁ・・・、このレベルまでくると地獄に落ちて当たり前ですね。
地獄レベル8:無間地獄(阿鼻地獄)
殺生、盗み、性行為、酒、嘘、邪見の流布、修行妨害に加えて、「五逆の罪」を犯したものが落ちる最下層の地獄です。
五逆とは、「父殺し、母殺し、修行僧殺し、仏に傷をつける、寺院破壊」の5つを言います。
五逆を犯さなかった者も、以下の小地獄に落ちる可能性があります。
地獄の名前 | 落ちる条件 |
鳥口処(うこうしょ) | 修行僧を殺す |
一切向地処(いっさいこうちしょ) | 尼を襲う |
無彼岸常受苦脳処(むひがんじょじゅくのうしょ) | 欲に負けて修行をやめる |
野干吼処(やかんこうしょ) | 悟りの境地に至りそうな人を誹謗中傷する。 |
鉄野干食処(てつやかんじきしょ) | 寺を焼き、寺院も焼き尽くす |
黒肚処(こくとしょ) | 寺の財産やお布施を盗む |
身洋処(しんようしょ) | 寺の財産を盗み、他の仲間も巻き込む |
夢見畏処(むけんいしょ) | 修行僧の食べ物を盗む |
身洋受苦脳処(しんようじゅくのうしょ) | 貧しい善人を騙す |
雨山聚処(うさんじゅしょ) | 悟りの境地に至りそうな僧侶の食べ物を盗む |
閻婆叵度処(えんばはどしょ) | 有害物質を垂れ流し、環境汚染をする |
星鬘処(せいまんじょ) | 修行の身でありながら、盗みを働く |
一切苦旋処(いっさいくせんしょ) | 経典を焼き払い、修学の場を奪う |
臭気覆処(しゅうきふくしょ) | 田畑を焼く |
鉄鍱処(てっちょうしょ) | 真面目な修行僧をたぶらかす |
十一焔処(じゅういちえんしょ) | 寺院を破壊する |
比叡山を焼き討ちした織田信長や、南都を焼き尽くした平重衡はこの地獄に落ちている可能性があります。
織田信長は心の底から仏教を信仰していなかった節があるのでわかりませんが、仏教に深く帰依していた平重衡は死ぬまで地獄に怯えていたことでしょう。
まとめ
以上、地獄についてまとめてみました。地獄がこれほど多様なことに驚きですが、それよりもこれらを考えた人々の発想力に私はビックリしてしまいました。
あと、地獄のことを調べた勢いで「地獄診断サイト」なるものを作ってしまったので、暇な方は受けてみてください。必ず地獄に落ちる設計になっています。笑
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