
今回は、1944年7月に開かれたブレトン=ウッズ会議・体制についてわかりやすく丁寧に解説します。
ブレトン=ウッズ会議の「ブレトン=ウッズ」って何?
「ブレトン=ウッズ」は会議が開かれた地名を意味しています。
1944年7月、アメリカのニューハンプシャー州ブレトン・ウッズで、第二次世界大戦後の通貨や金融の新たな枠組みを構築する国際会議が開催されました。
これを会議をブレトン=ウッズ会議と呼び、会議の中で構築された新たな国際金融・経済体制のことをブレトン=ウッズ体制と呼びます。
ブレトン=ウッズ会議が開かれた理由
ブレトン=ウッズ会議が開かれたきっかけは、戦前に世界各国で行われていたブロック経済という経済の仕組みが大きな問題となっていたからです。
ブロック経済は、自国と植民地を中心に経済を回して、自国が得をするケースを除いて他国との貿易をシャットアウトしてしまう仕組みのこと。
この仕組みは、資源と領土の少ない国には不利な仕組みであり、日本・ドイツ・イタリアなどの国は植民地の拡大を求めて侵略戦争を始め、これが第二次世界大戦へと繋がってしまいました。
悲惨な戦争を生んでしまったブロック経済をこのまま放っておくことはできない。世界の知恵を集めて、新しい国際貿易・金融のルールをつくろうではないか。
そんな戦争への反省と戦後の新しい世界経済を見据えて、ブレトン=ウッズ会議は開かれました。
ブレトン=ウッズ会議が開かれた1944年7月は、まだ第二次世界大戦の真っ最中。当時、日本はサイパン島を巡ってアメリカ軍と戦争中であり、ブレトン=ウッズ会議には呼ばれていません。(アメリカで開かれた会議なので、アメリカの敵である日本が呼ばれるわけがないのです。)

戦争中だったのに、もう戦後の話をしていたんだね。
確かに当時は第二次世界大戦の最中でした。しかし、アメリカを中心とした連合軍は勝利の確信を掴みつつあり、すでに勝利後の世界秩序について考える段階に入っていたのです。
このアメリカの余裕っぷりを知ると、日本がアメリカに勝てる見込みは最初からなかった事が分かりますね・・・。
ブレトン=ウッズ会議で決められたこと
ブレトン=ウッズ会議の目的は、ブロック経済に代わる新しい国際貿易・金融ルールを考えることです。
会議では、ドルを軸に為替相場を安定させる仕組みと、IMF・IBRDの設立協定がまとめられました。貿易分野のGATTは、会議後の別の交渉で成立します。時期を分けて整理すると、次のようになります。
この4つの項目について、それぞれ解説していきます。
金本位制の復活
金本位制とは金(gold)を通貨価値の基準とする制度です。
金本位制には、国の通貨価値に信用を持たせる目的がありました。お金の価値が金によって担保されているおかげで、人々は安心してお金を使って貿易をすることができるようになりました。
その代わりに、通貨を金と交換する約束を守るには、十分な金の準備が必要になります。金の保有量は、通貨を増やす際の制約になるのです。
金との交換を求められても応じられないと疑われれば、通貨への信用が揺らぎます。交換の要求が集中すると、金の準備がさらに減ってしまうのです。
金本位制は世界に広く普及した制度でしたが、1929年にアメリカを発端に起こった世界恐慌によって、多くの国が金本位制の採用をやめてしまいました。
世界恐慌から自国の経済を守るため、多くの国がブロック経済を採用すると、自国の有利になるよう通貨の価値・量をコントロールしようとしますが、ここで金本位制の「金との交換を守るため、通貨を自由に増やせない」というルールが邪魔になったのです。
多くの国が自国経済を優先し、金本位制によらない独自の通貨制度を模索し始めます。
こうした各国の通貨切り下げ競争や貿易制限が、国際経済の混乱を深めたことが反省されました。ブレトン=ウッズ会議では、戦前の金本位制をそのまま戻すのではなく、金とドルを軸に為替相場の安定を図る新しい仕組みが考えられたのです。
金本位制・ブロック経済がよくわからない方は、まずは以下の記事から読むのがオススメです。
新しい金本位制 〜ドルの時代〜
しかし、昔そのままの金本位制ではダメです。1929年の世界恐慌と似たようなことが起これば、また同じ結果になってしまいますからね。
そこで、ブレトン=ウッズ会議では、「ドルを金に結び付け、各国の通貨はドルとの交換比率を基本的に固定する」という仕組みがつくられました。
以前までの金本位制は、各国が通貨の価値を金と比べていました。
と言う具合です。新しい金本位制のルールでは、各国の通貨と金を直接比較せずに、間にドルを挟みます。
具体的には、金1トロイオンス=35ドルという公定価格が基準になりました。金に使う「トロイオンス」は質量の単位で、1トロイオンス=31.1034768gです。日用品などに使う約28gのオンスとは異なります。
1ドル当たりに換算すると、31.1034768g÷35=約0.889gです。この公定価格を軸に各国の為替相場が定められ、日本円は1949年に1ドル=360円となりました。
つまり、公定価格で計算すると360円=1ドル=金約0.889gという関係です。ただし、これは誰でも円やドルを金に交換できるという意味ではありません。金とドルの交換をアメリカに求められたのは、主に外国の中央銀行などの通貨当局でした。
さて、ここで1つの疑問が生まれます。

各国の通貨と金の交換のため、ドルが必要になったのはわかった。
でも、これに何の意味があるの?
各国が自国経済を優先して通貨価値を弄くり回した結果、金本位制の廃止に至り、それがブロック経済を助長した過去があります。
そこで、新しいルールでは、各国が自国だけの都合で通貨を切り下げることを抑えようとしました。アメリカは金1トロイオンス=35ドルという公定価格を維持し、各国はドルに対する為替相場を基本的に固定することで、安定を図る仕組みだったのです。
こうなると、それ以外の国はアメリカの舵取りに合わせるしかありませんよね。
アメリカがこの重要な役割を担ったのは、当時、アメリカが世界最強の経済大国だったからです。(これは現在まで続いています)
戦前まで、経済大国と言えば「イギリス」が代名詞でしたが、第二次世界大戦で世界のパワーバランスが大きく変わり、アメリカが台頭したのです。
今の通貨制度はブレトン=ウッズ体制の頃とは大きく異なります。しかし、「ドルが経済の中心にある」という点は、現在も変わっていません。
しかし、為替相場を固定していても、各国の貿易や資金の出入りまで同じように安定するわけではありません。輸入代金などの支払いに必要な外貨が不足する国も出てきます。
世界各国の中には、新しい金本位制の導入によって「財務情勢が思わしくない」「資金が足りない」などの問題が山積している国も多くありました。そんな国に対しフォローをする組織として設立されたのがIMFとIBRDと呼ばれる2つの機関です。
IMF(国際通貨基金)
IMFは、
International(国際)
Monetary(通貨)
Fund(基金)
の略称です。3つの英単語の頭文字をとってIMFです。
新しい金本位制を安定に保つため、各国には平価(日本だと1ドル=360円)の上下1%以内で為替相場を維持する事が求められました。
その支援をするのがIMFです。
国際収支上の問題によって、対外的な支払いに必要な外貨が不足した加盟国に、一時的に資金を融資して支援します。
どこかの国で大幅な為替変動が起こると、連動して多くの国にも影響を与えます。なので、特定の国を支援することが、そのまま国際経済の秩序を守ることに繋がるのです。
IMFは1944年7月のブレトン=ウッズ会議で設立協定がまとめられ、1945年12月に正式に設立されました。実際の金融業務の開始は1947年3月です。会議・設立・業務開始は、それぞれ別の段階として押さえましょう。
IBRD(国際復興開発銀行)
IBRDは
International(国際)
Bank(銀行)
for Reconstruction and Development(復興と開発のための)
の略です。4つの英単語の頭文字をとってIBRDです。
IBRDはその名のとおり、各国の経済的援助を目的に設立されました。
戦争によって多くを失った国の中には、戦後復興をしようにも、財政難によって復興がままならない国も多くありました。
そんな国の復興や開発を支えるために、IBRDはお金を貸し付けます。IBRDの融資は原則として返済と利払いが必要なもので、無償の援助ではありません。長期的な事業に必要な資金を調達する助けとなりました。
IBRDも1944年7月のブレトン=ウッズ会議で設立協定がまとめられ、1945年12月に正式に設立されました。業務を開始したのは1946年6月です。
IMFとIBRDはお金を出すという点が似ていて紛らわしいですが、両者の違いは以下のようにまとめられます。同じ資金融資でも、「貿易安定用」と「経済復興用」で財布をIMFとIBRDの2つに分けているわけです。
GATT(関税及び貿易に関する一般協定)
GATTとは、
General(一般)
Agreement(協定)
on Tariffs and Trade(関税と貿易に関する)
の略称です。4つの単語の頭文字をとってGATTです。
GATTはブレトン=ウッズ会議で直接つくられたものではなく、戦後の貿易交渉で成立しました。1947年10月30日にジュネーヴで署名され、1948年1月1日から暫定適用が始まりました。
GATTは、ブロック経済を防ぐために考えられた貿易に関する国際ルールのことです。
具体的には、「自由」「無差別」「多角性」の3つの原則が決められます。
不当な関税の引き上げをしないこと。
非関税障壁(輸入の数量を制限や検疫の手続きを厳しくして関税以外で不当な制限をかける事)をしないこと。
GATT加盟国はどこかの国を優遇したり差別せずに平等に扱うこと。
例えば加盟国内である特定の国だけ有利な貿易条件を与えず、他の国にもその条件を適用すること。
二国間で貿易上の問題が起きた時に、二国間同士で話し合わず第三国等も交えて話し合いをすること
ドルを中心とする金本位制・IMF・IBRD・GATT、これらの組織・ルールによって戦後の世界経済の秩序を守ろうとする体制のことをブレトン=ウッズ体制と言います。
ブレトン=ウッズ体制の問題点
ブレトン=ウッズ体制には大きな問題点がありました。
・・・それは、世界が必要とするドルを増やすほど、金との交換を守れるのか疑われやすくなる点です。
IBRDなどの支援もあって、荒廃したヨーロッパやアジアの国々が戦後復興を遂げると、世界全体の経済規模(お金が動く量)が大きくなります。
経済規模が大きくなれば、貿易や決済に使うドルもたくさん必要になります。・・・しかし、海外にあるドルがアメリカの金準備に比べて増え続けると、「全部を金に交換できるのだろうか?」という不安が強まります。
アメリカの国際収支の赤字によってドルが海外に積み上がり、外国の通貨当局がドルを金に交換すると、アメリカの金準備は減っていきます。こうして、金とドルの交換を約束したブレトン=ウッズ体制の維持が困難になったのです。
金準備の減少とドルへの不信が強まるなか、1971年8月15日、アメリカ大統領ニクソンは、外国の通貨当局に対するドルと金の交換停止を発表しました。
同時に輸入課徴金なども打ち出し、他国に対して為替相場の調整を迫りました。金とドルの交換を一方的に止める発表は、ドルを軸とする世界経済に大きな衝撃を与えます。このことをニクソンショックと言います。
このニクソンの宣言によってブレトン=ウッズ体制はその役目を終えることになります。
その後、1971年12月にドルの切り下げで合意し、金との交換を再開しないまま固定相場を立て直そうとしたのが、スミソニアン体制です。しかし、この試みも長続きせず、1973年には主要国が、通貨の価値が需要と供給によって動く変動為替相場制へ移行しました。
ブレトン=ウッズ体制と日本
ちなみに、日本はブレトン=ウッズ体制で大きな恩恵を受け、戦後日本の奇跡的な復興を後押ししてくれました。
日本は、ブロック経済の影響を受けて戦争に踏み切った代表的な国の1つです。
日本がブレトン=ウッズ体制の中で奇跡的な大復興を遂げたというのは、まさにブレトン=ウッズ体制の理念を象徴する成功事例の1つかもしれません。
NIST, Conversion Factors for Precious Metal Sales(2026年10月確認)
LBMA, The Troy Ounce(2026年10月確認)
Federal Reserve History, Creation of the Bretton Woods System(2026年10月確認)
World Bank Archives, Bretton Woods and the Birth of the World Bank(2026年10月確認)
World Bank Archives, World Bank Opens Doors in 1946(2026年10月確認)
財務省「IMFの概要」(2026年10月確認)
IMF, Measure to Measure(Finance & Development, September 2014)(2026年10月確認)
World Bank「International Bank for Reconstruction and Development」(2026年10月確認)
WTO, 50th anniversary of the General Agreement on Tariffs and Trade(2026年10月確認)
WTO, GATT 1947 and GATT 1994: what's the difference?(2026年10月確認)
米国務省歴史局, Nixon and the End of the Bretton Woods System, 1971–1973(2026年10月確認)
Federal Reserve History, The Smithsonian Agreement(2026年10月確認)
国立公文書館「日本円に対する単一為替レートが設定される」(2026年10月確認)
日本銀行「沿革 1900年~」(2026年10月確認)
財務省「国際復興開発銀行(IBRD)増資と日本の貢献」(2026年10月確認)
IMF, The IMF and the Silent Revolution(2026年10月確認)
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