恋に悩める女性に贈る和歌シリーズ後編です!
前回のテーマは、「肉食系女子」と「禁断の恋」
(前回は恋に悩める女性に贈る4つの和歌【万葉集(現代語訳)】1/2)
今回は、「浮気」と「失恋」です。うーむ、テーマがなんか昼ドラみたいだ。。。
3.浮気を許した妻。愛と悲しみの歌
【原文】
今は吾(あ)は 侘びそしにける 気(いき)の緒(お)に 思ひし君を ゆるさく思へば
【現代語訳】
私は今、とても辛くて悲しい気持ちです。一生愛すと思っていたあなたを許したことで、あなたが愛人のもとへ離れていってしまうことを想うと。
【歌手】
紀郎女(きのいらつめ)
浮気は当たり前?美人すぎる女たち
当時、食事や掃除など天皇の身の回りの世話をする采女(うねめ)という女性が朝廷の中にたくさんいました。
もちろん、美人ばかりを集めた精鋭隊です。そして、天皇に仕える美人集団采女が天皇以外の男と通じることはタブーとされていました。
紀郎女の夫は、この容姿端麗な采女と恋に落ちます。当時は、このような駆け落ちが多かったらしい。社内恋愛最高!って感じなのか?(汗
プライドの高い紀郎女
紀郎女は、大変教養があり、知的で、プライドの高い女性だったようです。
妻が完璧すぎると、夫としては窮屈だったんじゃないかと勝手に思ってます。男って完璧な女性よりも何かちょっと欠けてる女性の方に惹かれるもんです。うんうん。
采女という容姿端麗だけれども、身分の低い女性に惹かれる気持ち、なんとなくわかるような気もする・・・。
紀郎女は、旦那の浮気を知って、相当ショックを受けたようです。紀郎女は、旦那を深く愛していました。
しかし、紀郎女は旦那を問い詰めることもなく、旦那がこれからも采女のところへ通っていくのを許してしまいます。
紀郎女の心情はいかに・・・
さて、なぜ紀郎女は旦那の浮気を許したのでしょうか?
1つには、プライドが許さなかったというのがあると思います。
しかし、この和歌、詠んでみると和歌全体の悲しい静けさの中に旦那への憎しみがにじみ出ているような気がしてなりません。
男女の浮気問題、人間の永遠のテーマですね!(汗
余談ですが、和歌の静けさの中に愛と憎しみと悲しみが絶妙なバランスで調和していると思うと、紀郎女には申し訳ないですが、この和歌に芸術的センスを感じてしまいます。
4.失恋で傷ついた乙女の心の声
【原文】
相思(あいおも)はぬ 人を思ふは 大寺の 餓鬼の後(しりへ)に 額づくがごと
【現代語訳】
私のことなんかなんとも想っていない相手を想い焦がれるのは、お寺の餓鬼像を後ろからひれ伏して拝むぐらい無意味なことだわ・・・
【歌手】
笠郎女(かさのいらつめ)
想う相手は、当時のモテ男。その名は、大伴家持
笠郎女が想っていたのは、当時生粋のモテ男だった大伴家持(おおとものやかもち)という人物。(上の写真)
大伴家持は、他のたくさんの女性と交際関係を同時に持っていました。そんな状態の家持にとって、笠郎女は所詮たくさんいる女の1人にすぎません。
笠郎女も、最初は大伴家持にラブレターを送りまくってたのですが、全然返事が来ない。次第に、家持のチャラ男の本性を理解し始めました。
そして、笠郎女はどこにも吐き出すことのできない自分の心境を和歌に吐き出すことにしたのです。
「こんなチャラ男なんて想うだけでマジ時間の無駄。お寺の餓鬼像を拝むだけでも意味ないのに、その餓鬼像をわざわざ後ろからひれ伏して拝むぐらい無意味だ!あーマジむかつく・・・悲しい (´;
ちなみに、餓鬼っていうのは、こんなやつ(下図真ん中の腹出てるやつ)
餓鬼は、生前に悪いことをした亡者のこと。
笠郎女は、自分のことをどれだけぼろくそに言っているかわかりますね。
いつの時代も、モテる男は罪ですね・・・。
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