仏と神はどっちが上?道鏡「天皇になりたい」称徳「だが断る」

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前回(誰でもわかる面白い藤原仲麻呂の乱【孝謙上皇と淳仁天皇】)は、孝謙上皇VS藤原仲麻呂の政治闘争に孝謙上皇が勝利したというお話をしました。

最大の邪魔者を排除し、自由に政治を行えるようになった称徳天皇。一体どんな政治を行ったのでしょうか?

道鏡(仏)称徳天皇(神)という宗教的な側面からその政治を見ていきます。

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悲劇の廃帝、淳仁天皇

淳仁天皇は、藤原仲麻呂の擁立により即した、いわゆる仲麻呂の傀儡(かいらい)でした。

そのため、仲麻呂と敵対する孝謙上皇とも良好な関係を築けず、非常に肩身の狭い思いをしていたのが淳仁天皇なのです。

【淳仁天皇と孝謙上皇の険悪な雰囲気を知りたい方はこちらの記事を参考にどうぞ】
道鏡と孝謙(称徳)の恋の予感!?水を差す淳仁天皇

藤原仲麻呂の死により、淳任天皇の立場は完璧に失墜します。

藤原仲麻呂の乱が起こったのと同じ年の764年、孝謙上皇は淳任天皇を廃帝とし、軍を派遣して淡路島へ島流しにしてしまいます。

忘れさられる淳仁天皇

称徳天皇は、よほど淳仁天皇が嫌いだったのか、淳仁天皇をそもそも最初から天皇として認めない方針をとりました。

称徳天皇は、淳仁を決して天皇と呼ぶことはせず「淡路廃帝」などの蔑称で呼ぶことを決めます。この方針は、称徳天皇死後も1000年以上も続けられ、ようやく明治時代の1870年になってようやく天皇として認められ「淳任天皇」という名を与えられたのです。

「淳仁天皇」という名はつい最近付けられた名前だったんですね。称徳天皇恐るべし・・・

道鏡、法王になる

称徳天皇は、淳仁天皇を淡路へ流してから2年後の766年、道鏡を法王に任じます。

法王とは、仏教界での最高権力者を言います。政治の最高権力者は天皇です。

出家した天皇は法王より偉いのか?

称徳天皇は、孝謙上皇だった時代、実は出家していました。

一方、法王は仏教界の最高権力者。天皇と言えども一度出家し仏教の世界に入ってしまえば、立場的には法王の方が天皇よりも上の立場になります。

日本ではあらゆる分野において、天皇以上の権力を持つ者は公式には存在しませんでした。

※あくまで「公式には」です。政治の世界には常に無言の圧力なるものが存在します。

しかし、天皇が出家し、道鏡が法王になったことで、仏教世界に関してのみ天皇よりも上位に立ちうる人物が現れたのです。

これは、日本の天皇主権を根底から覆しかねない画期的な出来事でした。

道鏡は天皇になろうとした?

道鏡は、この法王の立場を利用して自ら天皇になろうと企んだと考えられています。

しかも、道鏡と称徳天皇は後世、「熟年カップルじゃないか!?」と語り継がれるほど良好な関係でした。道鏡が天皇になろうと考えたとしても何ら不思議ではありません。

しかしながら、あくまで「考えられている」であって、真相は誰にもわかりません。ここでは、道鏡が天皇になろうとしていたと仮定して話を進めます。

道鏡「邪魔者は排除する」悲劇の不破内親王

道鏡は、称徳天皇からも同意を得た上で正式に天皇になろうと考えていましたが、やはり皇族以外の者が天皇となることに対して世間からの強い反発が予想されました。

そこで道鏡は考えました。

そうだ!天皇候補になりうる有力者を裏から排除しよう!

そして誰も有力者がいなくなった後、次に候補となりうるのは天皇と同等の力を持つ法王の私である。称徳天皇から寵愛を受けてる私が天皇となることも難しくはないだろう(ニヤッ

称徳天皇は、聖武天皇の娘です。実は、聖武天皇にはもう1人、称徳天皇とは母違いの娘がいました。それが不破内親王(ふわないしんのう)という人物です。

当時、次期天皇候補になりうる第一人者と言えば、聖武天皇の血を引く不破内親王の息子、氷上志計志麻呂(ひかみのしけしまろ)という人物でした。

実は、聖武天皇は男子に恵まれなかったため、聖武天皇直系の天皇候補は多くありません。氷上志計志麻呂さえ排除すれば、有力な天皇候補は消え去るわけです。

こうして、道鏡による陰湿なる謀略が実行に移されるのです。

道鏡「不破内親王と氷上志計志麻呂が称徳天皇を呪詛したよー。危ないやつらだから流罪にするわ(棒読み)」

道鏡が法王になってから3年後の679年、不破内親王と氷上志計志麻呂が称徳天皇を呪詛(呪うこと)し、氷上志計志麻呂が皇位簒奪を企てた事件が起こりました。

これにより氷上志計志麻呂は流罪に処され、立場は失墜します。

実は「続日本書紀」という平安時代に作られた国の公式の歴史書の中で、呪詛や皇位簒奪の企ての事実はなかったと、この事件がでっちあげであると明言しています。

そうです。この事件は、道鏡が氷上志計志麻呂を排除するためにでっちあげたデマだったと考えられています。

こうして、道鏡が天皇となる下地が整いました。遂に道鏡は、自ら天皇となるために行動を起こします。

宇佐八幡宮神託事件(うさはちまんぐうしんたくじけん)

臣下が天皇となることは前代未聞の出来事であり、多くの反発が予想されました。特に僧である道鏡が政治に深く介入することを快く思わない官僚たちもたくさんいました。

そこで道鏡は考えました。

そうだ。自分から天皇になろうとするときっとボコボコに叩かれるから、神様の神託のせいにして、『神託ならしょうがない。本当はなりたくないんだけど神託ならば天皇になりましょう』という展開にしたろ

こうして起こったのが宇佐八幡宮信託事件です。不破内親王たちが排除されたのと同じ679年の出来事でした。

※この事件の原因には諸説あります。上述のように道鏡が企んだという説が一般的ですが、このほかに、寵愛する道鏡を天皇にしたかった称徳天皇が神託に頼ろうとしたという説もあります。しかし、真相は闇の中です。ここでは、道鏡が企んだ説に基づいて話を進めます。

宇佐八幡宮の神託の内容とは?

宇佐八幡宮は、今でいう大分県にあります。その宇佐八幡宮で、次のような神託があったと道鏡と称徳天皇の下に報告が届きます。

道鏡が天皇となれば天下は太平になるであろう。

道鏡「つ、遂にきたか…!!」

( ゚д゚) ガタッ
/   ヾ
__L| / ̄ ̄ ̄/_
\/   /

称徳天皇は、この神託を授かるため、使者を九州へ派遣します。派遣されたのは和気清麻呂(わけのきよまろ)という人物でした。

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和気清麻呂が報告したその神託内容とは?

和気清麻呂が宇佐八幡宮から持ち帰ってきたその神託内容は、道鏡と称徳天皇が予想していたものと正反対の神託でした。

我が日本国では、建国以来、臣下の秩序は常に一定に定められている。臣下が天皇となることは前代未聞の出来事であるから、天皇には天皇家の血筋の者を即位させよ

称徳天皇は、和気清麻呂が嘘の神託を言っていると激怒。称徳天皇の逆鱗に触れた和気清麻呂は左遷させられ因幡(いなば。今でいう鳥取県らへん)へ飛ばされてしまいます。

しかし、なぜ和気清麻呂は当初とは全く違う神託を持ち帰ったのでしょうか。はっきりしたことはわかっておらず、道鏡・称徳天皇のただの勘違いという説や和気清麻呂が道鏡の天皇即位を阻止しようと嘘をついた説などなどいろいろな説があります。

和気清麻呂は、皇室を守った英雄とされることもあるそうです。

恋は盲目! 神託により目が覚めた称徳天皇

称徳天皇は、この宇佐八幡宮信託事件を受け、自分が道鏡に利用されていることに気が付きます。

称徳「私は道鏡を愛してた。そして道鏡も私を愛していると思っていた。でも実際は違った。道鏡は、自らが天皇となるために私を利用しているに過ぎなかったのね・・・
(´;ω;`)

宇佐八幡宮信託事件の後すぐに次のような詔(みことのり)を発します。

自ら天皇即位を願っても、神々にさだめられた人でなければ、天皇となってもすぐに身を亡ぼすだろう。そのような願いを持たず、心清らかにいれば、生きている間は官位を賜り、死んだあとは名を残すことができるだろう。

オブラートに包んだ表現ですが、明らかに天皇になろうとした道鏡をけん制した内容となっています。

こうして、道鏡をめぐる一大事件は、道鏡の敗北(?)により幕を閉じるのです。

仏と神はどちらが上か?

道鏡による宇佐八幡宮信託事件は、戦いが起こるわけでもなく後世の私たちが見ると非常に地味な事件ですが、実は日本の皇室を最大級の危機に陥れた一大事件です。

諸悪の根源は「法王」という天皇より高い位になれてしまう役職にありました。

この事件の後、「法王」の役職は廃止され、出家した天皇が「法皇」として仏教界でもトップに立つことが一般的となっていきます。

仏と神はどちらが上か?

この事件を通じて、神の方が仏よりも上であるということがわかります。

しかし、それは仏が神より劣るというわけでは決してありません。優劣というよりも、日本国の中心は仏ではなくやはり天照大神だった、という表現が正しいように思います。

日本では、神(天照大神)を頂点としながらも神と仏の融合が図られていきます。これを神仏習合(しんぶつしゅうごう)と言ったりします。

道鏡は天皇となることはできませんでした。しかし、まだ問題が終わったわけではありません。道鏡事件は、つまるところ皇位継承問題です。ですが次の天皇は誰なのかまだ決まっていません。

次回は、次期天皇をめぐるお話です。

次:日本人なら知っておけ!桓武天皇の偉業【なぜ平安京へ遷都したのか】

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